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ゴーレムとの戦い



北の森に三人を探しに来ていたアルスは、森の奥が光ったのが見えた後、魔物の雄叫びが聞こえたので、急いでその方へと向かっていた。


さっきの光は、閃光石と呼ばれる魔獣や魔物に出会った時に、目を眩ませて逃げる為のものだ。だとすると、三人は襲われている可能性がある。


木々の間を抜け、茂みを飛び越えながらようやくたどり着いた場所は、木がなぎ倒されていたり何かが噛み付いた様な跡が広がっていた。


そこに居たのは、地面に倒れて動かないレーゲンと、へたり込んでお互いに手を握りあったシェンとカルム。

そして、二人の目の前には頭に花を咲かせた大きなゴーレムが、今にも二人を呑み込もうと口を大きく開けていた。


「【アイシクルフリーズ】!」


アルスの前に氷の塊が生成され、ゴーレムへと放たれる。


氷の塊はゴーレムの背中へと当たると、バキバキと音を立てて凍りつき、あっという間にゴーレムを氷像へと変えた。


ひんやりとした冷気が感じられ、二人がゆっくりと目を開けると、ゴーレムは口を大きく開けたまま氷漬けになっていた。


突然の出来事に二人は動けずにいたが、アルスの姿を見つけた途端に自分たちは助かったという安心から、今まで堪えていた物が一気に込み上げてしまい、ワッと泣き出した。


「私たぢ、生ぎてまずのおぉぉ!」


「ありがどうジロー!! 私、もう助がらないと思っだぁ! ぞれに、レーゲンがゴーレムの攻撃で動がなくて、死んじゃっだらどうしようぅぅぅ」


涙やら鼻水でぐしゃぐしゃの顔で、先にレーゲンを助けて欲しいと訴え、アルスは涙を拭う二人とともにレーゲンの元へと急ぐ。


呼吸はしているようだが、意識も無くぐったりとしている。回復魔法で傷は治せるが、意識が戻るかは分からない。

早く街に戻って医者に見せた方がいいな。


「【ヒーリング】」


光に包まれたレーゲンの表情は、先ほどよりもだいぶ良くなったように感じられる。

シェンもカルムもそれを見て安心していたが、後ろからビシビシと嫌な音が聞こえ振り返る。


見ると、ピシッ、ピシッとゴーレムの氷像に亀裂が入っていくのが分かり、二人は恐怖で震え上がった。


レーゲンだけなら背負って逃げ切る事が出来そうだが、二人を庇いながらとなると難しい。


かと言って、二人にレーゲンを運んでもらうのは無理そうだし、ゴーレムを倒した方が良さそうだな。


アルスは三人を結界で覆うと、ゴーレムへと歩み寄って行く。


それを見たシェンは、アルスを止めようと必死に声を上げながら結界を叩くも、アルスは止まらず、魔法で強化した剣を取り出すと、ゴーレムを勢いよく斬りつけた。


ゴーレムの身体は、口から横に真っ二つに斬られ、上半身がドシャッと地面に落ちると、下半身も同じように地面へと崩れ落ちた。


あまりの呆気なさとアルスの強さに、ぽかんとしていたシェンとカルムだったが、ゴーレムが真っ二つに斬られたのを見て、喜びの声を上げる。


しかし、倒れたゴーレムがガタガタと動き出しのを見て、そう簡単に倒せる相手ではない事を知る。


ゴーレムの上半身から、ツタの様なものが伸び始めると、ゴーレムの下半身へと引っ付き、元の姿へと戻ってしまった。


斬っても元に戻るんじゃきりがないが、大抵のモンスターは何処かに弱点がある。こいつも何処かに弱点があるはずだ。


石を投げて来るゴーレムの攻撃を避けながら今度は腕を斬り落としてみるが、先ほどと同じ様にまたツタが伸びて腕が再生する。


攻撃してきたら斬りつけ、また再生してを繰り返していると、ゴーレムに変化が見られた。


アルスが頭に咲いている花へと攻撃しようとした時だった。

頭の花への攻撃に驚いたゴーレムは、攻撃を途中で止めると慌てて頭の花を覆い隠し、アルスの攻撃を防いだのだ。


どうやら再生のからくりは頭の花にあるようだ。あの花がゴーレムの切り落とされた部位を繋ぐツタを作り出しているに違いない。


一気に攻めようとした時だった。突然花の真ん中がぱっくりと割れ、鋭い牙が現れたかと思うと、その中から紫色の煙を吐き出された。


初めは逃げる為の煙幕かと思っていたアルスだったが、身体が気怠くなったのを感じ、毒である事に気がつく。


【状態異常を感知、毒を浄化します】


一気に身体が軽くなりアルスが辺りを見回すと、辺りは毒の煙に包まれてしまい、ゴーレムの姿が見えなくなっていた。


毒の煙を吹き飛ばす為に【ブリーズ】と唱え風魔法で吹き飛ばすが、やはりゴーレムの姿が見えない。


どこに行ったんだ?まさかそのまま逃げてしまったのか?


そう思って油断していたアルスの足元が沈み、大きな口がガバッと広がると、逃げ遅れたアルスをそのまま飲み込んでしまった。


その光景を目の当たりにしたシェンとカルムが叫び声を上げる。


「シロっ!! やだ、駄目ですの! シロ、シロっ!」


「私たちのせいで、シロが・・・」


ゴーレムは満足気にゴオオオと声を出して、ついに仕留めたと身体を震わせると、今度こそお前たちの番だと三人へゆっくりと近づいていく。


そして振り上げた両腕を一気に振り下ろし結界へと叩きつけた。

ドガァンッ!と地面が揺れ、シェンとカルムの叫び声が響く。


しかし何度やっても結界はびくともせず、苛立ち始めたゴーレムは足で蹴り飛ばしたり噛み付いたりと、行動が激しくなっていく。


シェンとカルムは結界が壊れない事を必死に祈ることしか出来ず、ただゴーレムが諦めて帰るのを待つしかなかった。


すると、先ほどまで結界を壊そうとしていたゴーレムが、突然動きを止め苦しみ始めた。


シェンとカルムは訳が分からず苦しむゴーレムを見ていると、口から炎が吐き出される。

その炎の中から結界で覆われたアルスが勢いよく飛び出してきた。


二人は良かったと安堵の表情を浮かべるが、まだ戦いは続いている。


両腕を振り回しながら怒りに任せた攻撃を続けるゴーレムを、結界で弾き飛ばしたアルスは、素早くゴーレムの両腕を斬り落とす。


そして露わになった弱点の頭の花をめがけて飛び上がると、魔法で強化した剣を力一杯振り切った。


ブチブチッと頭から引き離された黄色い花が、ドサリと地面に落ちる。

斬り落とされてもウネウネと動く黄色い花は、ゴーレムへと戻ろうとするが、アルスの放った炎の魔法で燃やされ、跡形も無く消え去った。


ゴーレムはオオオオオンと声を上げると、目や口から泥を流し始め、ただの土の塊となってようやく動きを止めた。


「これで終わった、のね」


「良かった、です、の。またみんなで美味しいもの、食べに行く、ですの」


二人は緊張が解けたのか、レーゲンに折り重なるようにしてばたりと倒れて気絶してしまった。


「おいっ、お前たちが気絶したらレーゲンを運べなくなるぞ。せめて一人は歩いてもらわないと・・・」


しかし起きる気配もなく、気持ち良さそうに寝こける姿を見て、やれやれとため息を吐く。


ガルフは脅してやるつもりだったのだろうが、一歩間違えれば三人とも命を落としていた。


ガルフが直接手を下していれば、ギルドを解雇のうえ罰を受ける事になるが、今回はDランクにも関わらず三人がBランク以上の魔物に手を出したという扱いになり、ガルフにはお咎めなしという結果になるだろう。


そうなった時はーーーー


アルスが三人に近づこうとしたその時だった。茂みから何者かがアルスの頭めがけ矢を放つ。


詠唱している暇は無いと思ったアルスは、ローブを翻して矢を弾き飛ばした。


「ここで何をしているっ!」

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