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少女の扱いは難しい


「ここがドラゴンさんのお家?」


何もない暗い洞窟の中を見渡す少女。


雨風だけはしのぎたいのでここを選んだのだが、少女には過酷かもしれない。


少女を冷たく硬い地面に降ろすのは忍びないので、自分の大きな羽根を数枚抜いてその上に少女を降ろす。数枚だがこれで地面の冷たさは感じないはずだ。

そして洞窟の外から木の枝を集めると少女を驚かせないようにフッと優しく炎を吹き灯した。


その様子を何故か目を輝かせて嬉しそうに見つめる少女にアルスは戸惑う。


なぜ少女はこんな俺を信用し、信じてくれるのだろうか。

ハピュにはドラゴンを敬う宗教でもあるのだろうか。


「あ、名前まだだったね。わたしはレイナだよ、ドラゴンさんのお名前は?」


名前?名前って言われてもな・・・・。

とりあえず声を出してみるか。


「クルルッ」


驚かせないように甘えるような声で返事をしてみる。我ながら上手く鳴けたと思う。

当然レイナには何を話しているか分からないだろうが。


「うーん、分かんないや。えっと、身体が白いからシロね!」


犬かっ!でも、小さな子どもが付けた名前だし、うーん・・・。


「もしかして、嫌だった?」


アルスの反応を見てウルウルと涙を浮かべながら見上げるレイナ。


まずい、幼い少女を泣かせる訳にはいかない。


「ク、クルルルっ!」


き、気に入った!ほら、こんなに喜んでるよ、嬉しいなあ!


喜んでいるように甘え声と尻尾をフリフリと左右に揺らしてみる。恥ずかしいが泣かせるよりマシだ。


レイナはそれを見て嬉しそうにきゃっきゃと笑った。


さて、早くレイナの治療をしないとな。

傷を治すには二つの手段がある。薬草を使い自然治癒を待つ方法と、回復魔法を使うことだ。


自然治癒なんて時間が掛かることは出来る限りしたくはない。こんな殺風景でゆっくりと休むことも暖も取れない所に何日も居らせる訳にはいかないからな。


となると回復魔法だが、魔法は声に出して威力を発揮する。つまりグルルなどの声しか出せない俺は魔法が使えないのだ。

んー、街へ行こうにもこの姿だと無理だしな・・・・。


ふとラグシルドが話していた事を思い出す。


そうじゃな、時々人間の街へ行き、美味しいものを食べたりーーーー


どうやって街へ行っているんだ。もしかしたら街へ行く方法があるのか?


「クルル!」


鳴き声をあげて外に出る事を伝えるがレイナは急いでいるアルスを見てこう言った。


「シロ、トイレ?」


違う、違うけども今はそれでいいや。

すぐに戻って来るからな。


アルスは森の中へと駆けて行った。



急ぎに急いでラグシルドの元へとやって来たアルス。


『昨日ぶりじゃな。もう大丈夫なのかのぉ?』


『大丈夫とは言えないが昨日より身体の調子はいい。

それで昨日ラグシルドが街へ行くと言っていたのを思い出して来たんだ。街へ行くのにその姿で行ってはいないよな?』


『勿論姿を変えて行くが、なんじゃ街に行きたいのかのぉ?』


レイナの事をラグシルドに話すと、いきなり笑い転げだす。

面白い話をした覚えはないのだが。


ひとしきり笑った後涙を拭いてさっきの話の続きを話す。


『そうそう、人化したいんじゃったの。人化は自分の身体の魔力を人型にするといい。お主は元々人だったんじゃろ、簡単に想像することが出来るじゃろ』


早速やってみると、また感情の無い声が頭に響く。


【人化を行います。魔力が枯渇に近くなると強制的に人化から戻りますのでご注意下さい。なお、次回からこの音声は省略されます。】


身体の魔力の流れが変わり、みるみるうちに身体は小さくなっていく。本当に大丈夫なのかこれ?


『最初はそうじゃが、慣れると簡単に人化出来るようになる。慣れるまで我慢するんじゃのぉ。人型の時は魔法を枯渇させないよう注意するようにな。お、話している間に終わったのぉ』


ゆっくりと自分の手を見てみると、鋭い爪やふさふさの毛に覆われていない手を見てアルスは歓喜する。


『お主、人化しても変わらんのぉ』


神と同じ答えにイラっとするが、その後に続いた言葉は意外だった。


『白銀の髪に空を思わせる瞳の色は元々の物じゃったのか。いやー、綺麗じゃのぉ』


自分が思っていた答えとは違った事に驚く。

もしかしたら、神の答えもラグシルドと同じ綺麗だという意味だったのかも知れない。

いや、今はそんな事考えている暇はない、早くレイナを治療しなくては。


急ぐアルスを慌てて止めるラグシルドが下を見てみろと目配せする。


急いでいるんだが下?何も着ていな・・・・!?


見るとズボンは履いておらず、それどころか服を着ていない。全部丸見えになっていた。

慌てて近くの茂みへと隠れ、頭だけを出す。


「な、なんでは、裸!?俺の服はどこに!?」


ラグシルドはやれやれと頭を抱え、説明する。


『当たり前じゃ、ドラゴンの時は服を着ておらんじゃろうが全く』


これを着てみろと黒いフードの付いたローブと革のブーツを渡され、急いで着替える。

中には何も着ていないので変な感じだが、裸よりマシだ。


ドラゴンに戻る時はいちいち服を脱がなければならないのは面倒だな。それに服を持ち歩くのも手間になる。


いつもラグシルドはどうしているのか聞いてみると、空間魔法という便利な魔法があるらしい。


爪に魔力を乗せて目の前を切るとそこに切れ目が現れた。何でも入るが、入れすぎると出したい物を見つけるのに時間がかかるから注意するようにとラグシルドが教える。

ちなみに人の姿でも使えるそうだ。

俺の知らない魔法がまだあるんだなと関心してしまう。


『聞くが、お主その子を治してその後はどうするのかの?放って置くとは言わんじゃろうな』


『そんな無責任な事はしない。近くの街でハピュの少女の捜索願が出されていないか探してみる。もし捜索願がない場合は俺が送り届けようと思っている』


人化を手に入れた事でシュトラール王国にも行く事が出来るようになったし、街まで行けばシュトラール王国の情報も聞けるかも知れない。


『そうか、街はここから東の方じゃ。名前はラグシルと呼ばれててのぉ、わしの名前が由来なんじゃよフォフォフォ』


『そ、そうか・・・』


自慢げに語るラグシルドに苦笑いで答えたアルスはラグシルドに街を教えてもらったお礼を言ってその場を離れた。

明日投稿します。

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