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目覚めた場所は




水帝竜は久しぶりに海面へと姿を見せ大きく伸びをする。

真上には太陽が輝き、暖かい日差しで水帝竜を迎え入れた。


そして穏やかな海を眺め、今日も静かな日々を過ごせる事に感謝する。


少し散歩でもしようかと優雅に水面を泳いでいると、ボロボロの青年が木の板に掴まりながら浮いているのを見つけた。


エネルギーの異常な動きに気づいていた水帝竜。

この青年から微かに緑帝竜と炎帝竜がぶつかり合ったエネルギーを感じ、今回のぶつかり合いの原因はこの子だろうと考えた。


このままにしておくのは可哀想だと思い、青年を背中に乗せると、落ちないようにゆっくりと泳いでいった。


しばらくして砂浜へと到着した水帝竜は、ゆっくりと地面へと降ろすと、まだ意識が戻らない青年を見つめる。


『可哀想に、君も私みたいに水竜だったら静かに暮らせるのにね。

地上で何かが起きても水の中には誰も来れないから』


そう言って水帝竜は海の中へと静かに消えて行った。




気がつくと何故か砂浜に倒れており、いつの間にか人の姿に戻っていた。


ここは一体どこだろうか。

確か強制進化をして、それから暴走してジャファールの攻撃で崖下に落ちたのはうっすらと覚えている。


身体をよく見ると、あちこちに傷があり服もボロボロになっている。


これは酷いな、確か予備の服があったはずだ。それと身体の傷も治さないと。


ヒーリングを使い傷を治してから、空間魔法を使い服を着替え黒のローブを羽織る。


兜は海水に濡れてしまったのでもう使えないだろう。


フードを深く被り顔が見えないよう覆うと、アルスはこれからの事を考える。


さて、これからどうしたものか。

せっかく地図を見つけ、今どこに居るのかが分かっていたのに、また分からなくなってしまったな。

とりあえず人が居る街か村を探さないと。


歩き出そうとしたが、ふらふらとよろけてしまいその場に座り込んでしまった。


傷は治ったはずなんだが何故か身体に力が入らない。

仕方がない、しばらくここで休んで様子をみるか。


海を見ながらボーッとしていると、お腹に違和感を感じ、少し考えてからこれは空腹なのだという事が分かった。


空腹なんて久しぶりすぎて感覚さえ忘れていた。

しかし、食べなくても大丈夫なはずだが何故腹が減っているんだ?


空間魔法を使いパンを取り出す。

パンは固くもカビが生える事もなく買った時のままの状態で香ばしいいい匂いが漂っている。


その美味しそうな匂いに耐えきれず、そのままパンへとかぶり付く。


よほどお腹が空いていたのか、また一つ、また一つと食べていくうちに、あっという間にパンは無くなってしまった。


駄目だ、まだ空腹が治らない。

食べなくてもいいと思っていたので食料の蓄えはもうない。


辺りを見渡すが、目の前は水平線が広がっており、後は木々が生い茂った森。


海は流石に無理だな。

となると森だが、魔獣などの危険なモンスターが徘徊しているのであまり立ち入りたくない。


ドラゴンになって飛ぶ方が安全だし、この辺りの地形もよく見えるはずだ。


ドラゴンになろうとして、ふと頭にあの暴走した光景がよみがえる。


また暴走してしまう事があったら・・・・。

今回は運良く正気を取り戻しているが、次は戻れないかもしれない。


そう考えるとドラゴンになる事が出来ず、アルスはどうしたものかと考える。


しかし、考えれば考えるほどお腹が空いてしまい、ついにアルスはドラゴンになる事を諦め浜辺を歩いて道を探す事にした。


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