帝国軍の三大将
「この霧のせいで隊がバラバラになって次々と消えてるんだよね。それに、そろそろ上にいい報告しないと僕の首が危ないからさ。でもまだ時間はあるし、少し僕と遊ばない?」
青年の顔が獲物を仕留める顔へと変わり、ドラゴンが灼熱の炎を吐く。
結界魔法で炎を防ぐが、さっきのドラゴンよりも炎の勢いが強く、結界に少しヒビが入る。
すると炎が途切れると同時に青年の剣が結界へと突き立てられ結界が砕け散るが、間一髪のところで空間魔法から剣を取り出したアルスは、青年の重い一撃を受け止めた。
「お前、剣なんて持ってたっけ?まぁいいか。いつまでその子を守って戦い続けられるかな」
青年の攻撃を受け止め、青年が飛び退くとドラゴンが火を吐くという攻撃が続けられ、その度に結界魔法で防ぐがきりがない。
こいつ、魔力切れを狙っている。このままイタチごっこを繰り返されたら間違いなく魔力が無くなってしまう。
【魔力が20%を切りました。人化を解く事をお勧めします】
こんな所で人化を解ける訳ないだろ。
俺がドラゴンだと知ったら、強いドラゴンを欲している帝国軍にとって格好の餌食だ。
ほかに何か案は無いのか?
【進化する事で力が増幅されます。また、少女を囮にする事で逃げられる可能性が上がります】
後に続けられた信じられない回答にアルスは怒りで殴り飛ばそうとしたが、実体が無いので殴る事も出来ず、八つ当たりするように青年へと攻撃を向ける。
先程よりも強い攻撃に青年は少し慌てたようだったが、ドラゴンとの連携は続きアルスの体力も魔力も限界に近づいて行く。
「【ブリーズ】!」
レイナは青年に向かって風の玉を飛ばすが、青年は剣を一振りし風魔法をかき消す。
ギロリと睨まれたレイナはアルスの後ろへと隠れる。
「ガキが。クレマディウス、ガキは要らないからお前にあげるよ。好物だろ?」
「ヴゥ、イタダきまス」
ドラゴンが大口を開けて飛びつこうとしたその時だった。
空から舞い降りてきたハピュの族長、ウォルタナがドラゴンの頭へ鋭い爪の一撃を食らわせる。
ドラゴンはその衝撃で口を閉じ、下顎を地面へと打ち付けた。
しかし、ドラゴンは瞬時に尻尾を動かし棘を飛ばし、ウォルタナへと攻撃を仕掛ける。
それを人へと姿を変えて避けたウォルタナはアルスとレイナの前へと降り立つ。
「二人とも無事か?森へ入ったと聞いて来てみれば、帝国軍の三大将の一人であるベレーノが来ていたとは」
「これはこれは、隠れる事しか能の無い鳥の長じゃないか。次はお前が僕の相手になってくれるの?」
「いや、今回は退かせてもらおう」
ウォルタナが腕を振り上げると、霧がベレーノとドラゴンを覆い尽くしていく。
「逃すなクレマディウス!」
尻尾を力強く横へと振ると、尻尾の棘が勢いよくレイナへと放たれる。
アルスはとっさにレイナを庇い、棘はアルスの左腕をかすり地面へと突き刺さった。
「こっちだ!」
ウォルタナを見失わないように急いでアルスとレイナは後を追う。
ベレーノが三人を追おうとしたが、周りの霧が薄くなり三人の姿は消えてしまっていた。
「せっかく見つけた獲物だったけどな。手応えはあった?」
「当たらナカった。デモ、かすっタのはミエタ。毒ハ効イテくるハズ」
グルルルと喉を鳴らしながらベレーノへと擦り寄るクレマディウスの頭を撫で、背へと飛び乗るベレーノ。
「この毒の解毒薬はネーベルフォレストでは手に入らない。さて、次の作戦に移ろう。この霧をどうにかする為に僕らが選ばれたんだからしっかりと働かないと」
ベレーノはほくそ笑みながらゆっくりと霧の中へと消えて行った。
「シロ大丈夫?」
先程からふらふらとおぼつかない足取りで歩いているアルスを見て心配する。
「多分魔力を使い過ぎたからだと思う。大丈夫だ、時間が経てば良くなる」
とは言ったものの、魔力は少しずつ戻っているが気怠さが治らないことに疑問を感じるアルス。
ウォルタナは足取りもおぼつかない状態のアルスを見てアルスへと近づき声をかける。
「シロ殿、やはり少し休んだ方が良い。あそこの木の下まで行こう」
ウォルタナがアルスの肩を持つと、体温が高い事に気がつく。息も荒く苦しそうに呼吸をしている。
「シーー殿、私ーー声、聞こえーー」
ウォルタナが何を言っているかよく分からない。それに、身体の力も入らなくなりアルスはその場に倒れ込んでしまった。
魔力切れじゃない。まさか、あの棘に毒が塗ってあったのか?
「ーー!ーーっ!」
レイナが慌てた様子で駆け寄って来るが、やはり声が聞こえず、視界もぼやけてきた。
「レイナよ、急いで村まで戻るぞ!」
ウォルタナは大きな鳥へと戻ると、アルスとレイナをゆっくりと足で持ち上げ急いで村へと戻るのだった。
一週間後くらいには投稿出来るようにします。




