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霧の中の戦い

着替え終わり部屋を出ると何やら村中が騒がしい。すると、ハピュ族の女性が慌てた様子で走って来る。


「あ、シロさん!レイナちゃんを見ませんでしたか!?お父さんもお母さんも帰って来てないって飛び出してしまって・・・・」


もし両親を捜して森へ入ったら、帝国軍と鉢合わせる可能性が高い。早く見つけないとレイナが危険だ。


「俺は森の中を捜してみます。村の中をお願い出来ますか」


「でも、シロさんを危険な目に合わせるわけにはっ」


「腕には自信がありますので大丈夫です。それに危険だと判断したら戻って来ますので」


「・・・ありがとうございます。

その耳飾りがあればここへ戻って来れますので、どうかお気をつけて」


ハピュの女性に見送られ、アルスは霧の深い森の中へと入っていった。




レイナは両親を捜して霧の深い森の中を歩いていたが、歩き疲れ一休みする為に近くの岩へと寄りかかる。


「お父さん、お母さん・・・」


その場に座り込み涙を拭く。

すると、寄りかかっていた岩が急に無くなり、レイナは倒れ込んでしまった。

何が起きたか分からず、ふと見上げたそこには、ぎょろりと見開かれた目があった。


「あ・・・」


岩ではないと気付いた時には、ドラゴンの大きく開いた口が目の前に迫っていた。


もう駄目だと目を閉じた時、ガギィッ!と何かがぶつかり合うような音が聞こえ、ドラゴンの鳴き声が聞こえた。

恐る恐るゆっくりと目を開けると、そこにいたのは黒いローブにフードを被った見覚えのある後ろ姿だった。


「シロっ!」


「間に合って良かった。怪我は無さそうだな」


獲物にありつけなかったドラゴンはギッとアルスを睨みつけ、よだれをダラダラと垂らす。


帝国軍の下級ドラゴンか。この霧で獲物が捕れず腹を空かしているみたいだな。

レイナを抱えてこの霧の中を抜けるのは厳しい。

それにドラゴンも空腹でようやく見つけた獲物を簡単には逃さないはずだ。


「【リフレクション】」


広範囲で結界魔法を使う場合は長い詠唱が必要だが、レイナだけを守るので短く詠唱する。


【魔力の残量が40%です。10%を切ると強制的に人化が解けますので注意して下さい】


感情のない声が魔力の残量をアルスに伝えると、アルスは顔をしかめ舌打ちする。


まずいな。この霧の中、魔法無しでドラゴンとやり合うのは無理だ。魔力が残るように調整して戦わないと。


ドラゴンが咆哮しアルス目掛けて突進してきたので右へと避け、アースニードルと唱える。

ドラゴンの足元から尖った岩が次々と飛び出し貫こうとするが、鎧と硬い鱗に阻まれバキィッと岩が割れてしまった。


思ったよりも硬い。ライトグングニールを使うか?いや、シュトラール王家だけが使えるこの魔法は確かに強力だが、この霧とはいえ誰が見ているかわからない。

正体がバレる危険がある魔法はなるべく控えた方が良さそうだ。


ドラゴンは噛みつこうと鋭い牙をアルスへ突き立てようとするが、結界魔法で防ぎ弾き飛ばす。

次に爪を使って引き裂こうとするが、やはり結界はびくともせず、ドラゴンは苛立ち始めガチガチと歯を鳴らす。


牙も爪も駄目ならと、ドラゴンは翼を広げて一飛びし、息を大きく吸い込みアルスとレイナに向けて灼熱の炎を吐き出そうとする。


やはり主人のいない下級ドラゴンは頭が悪く、噛みつきや爪、炎を吐くなどのを決まった攻撃しか出来ないようだ。

こんな所で炎を吐けば森がどうなるかなど考えてもいないだろう。


「凍てつけ【アイシクルフリーズ】」


先の尖った大きな氷の塊がドラゴン目掛けて放たれ、溶けることなく炎の中を突き進む。

それを見て慌てて逃げようとしたドラゴンの鎧と鱗を突き破り、氷の塊が身体へと突き刺さると、パキパキと音を立ててドラゴンが凍りついていく。


「ガ、ア、」


全てが凍りつき、そのまま地面へと墜落してきたのはドラゴンの氷像だった。


【残りの魔力量は30%です】


30%か。人化している間、どれ程の魔力が消費されているか分からないし気をつけておかないとな。


結界魔法を解くと、アルスの元へ駆け寄ってきたレイナはぎゅっとアルスを抱きしめる。


「嘘をついていてすまない。両親を助けられなかったが、あのハンターは二度とレイナの前には現れないから大丈夫だ」


「・・・うん」


レイナはアルスに抱きしめたまま消えそうな声で呟く。


「さて、みんなレイナを捜して心配しているはずだ。早くハピュ族の村へ戻って安心させてあげないとな」


すると耳飾りが光り出し、白くふわふわと浮遊する光りの玉が現れると、二人を導くように霧の中を進んで行く。


アルスはレイナの手を取り、その光りを追ってゆっくりと歩き始めた時だった。

何かが勢いよく二人を目掛けて飛んで来たのを慌ててレイナを抱えて飛び退く。


「あれ、この僕の攻撃が避けられた?お前中々やるなぁ、楽しめそうで僕は嬉しいよ」


二人の目の前に現れたのは、鎧を身に付けたドラゴンと、その背に乗っている笑顔を絶やさない好青年だった。


魔力が残り少ない最悪の状況での竜騎士との遭遇に、アルスは自分の運の無さを呪った。



次の投稿は一週間後くらいになります。

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