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守護獣との出会いは突然に

族長の家へ招かれ、食事をご馳走になったアルスは、何故かお風呂に入っていた。

食事を終えて帰ろうとしたが、疲れているだろうからとここに連れてこられたのだ。


断ろうと思ったが、今のうちに体力を回復させておくのも悪くないと思い、久しぶりの温かいお風呂に入らせてもらう事にした。


一応身体は拭いていたが、やはりお風呂に入る方が気持ちがいいし、疲れが取れるな。

それに城のお風呂と同じくらいの大きなお風呂だった事には驚いた。


アルスが気持ちよく浸かっていると、何かふわふわした何かが湯の上に浮いているのが見え、アルスは首を傾げる。


ちゃぷちゃぷと水に浮かんでいる何かが動いてるのが見えたので、正体がバレてはまずいとアルスはタオルを頭に巻いて顔を隠す。


ゆっくりとこちらに近づいて来たそれは、湯に気持ち良さそうにぷかぷかと浮いている梟だった。


ハピュ族?変身してお風呂に入っているのか、物好きな奴だな。しかし、俺以外入っていないと聞いていたが。


ぷかぷかと浮いていた梟はホウと一言鳴き頭を下げる。こちらもつられて頭を下げる。


すると湯気が次第に濃くなっていき、辺りが白い靄に覆われてしまい、梟も見えなくなってしまった。


湯気が急に濃くなった?お風呂の温度は変わっていないし、これは霧か?


浴槽の淵に背中をつけ、いつでも動けるように構えておく。

辺りを見回すが、霧が濃すぎてさっきまで居た場所ではないように見える。


「珍しいお客さんだこと。外からの人はいつぶりだったかしら」


後ろから女性の声が聞こえ、振り返る前にさわっと白く細い手がアルスの頬を触る。

すると、魔力が吸い取られると同時に身体が痺れ、動く事が出来なくなってしまった。


これは、魔力を取られている!?まずい、早く抜け出さないと人化が解けるっ!


しかし身体を動かす事が出来ず、声も少ししか出ない。これでは人を呼ぶ事も出来ない。

そうこうしているうちに巻いていたタオルをスッと取られてしまった。

隠していた白銀の髪を見て白い手の主は、アルスの髪を触りながら話す。


「あら、白銀の髪なんて珍しい。少し調べさせてもらうわね」


首筋にゆっくりと触れられ、ビクッと身体が動く。


「触る、なっ!」


白い手は止まらずゆっくりと胸へと手が伸び、金色の長い髪がアルスの肩へと垂れ下がる。


「細いのに筋肉がよく付いている。それにこの耳飾り・・・これを渡した子は貴方のことをとても良く思っているみたいね。他にはーーー」


下に向かって手を伸ばされそうになり、アルスは慌てて身体強化を使うと、女性の手を払い除けて振り返る。


そこにいたのは腰まで長い金色髪の女性。服は着ておらず、長い髪が際どいところを隠していた。 アルスは慌てて目を背ける。


「貴方にはこの姿は刺激が強すぎたかしら?」


「は!?な、何言ってーー」


女性が光に包まれると、人を乗せる事が出来そうなほど大きく美しい梟の姿へと変わっていた。


「私はここの守護獣。ここに入って来た時から貴方が安全かどうか確かめたかったの。ちょっと強引だったのは謝るわ」


「ちょっと?いやいや、強引すぎだ!

説明してくれればあんな事しなくてもこちらの正体を明かした」


「うふふ、意地悪だったかしらね。では私から改めて紹介しましょうか。

この森とハピュたちを守っている守護獣のシュエットよ。では貴方の正体を教えてくれる?」


「・・・シュトラール王国王子、アルステラ・エル・シュトラールと申します。

ここに来た理由はレイナを送りに来ただけで危害を加えるつもりはありません。すぐにここから出るつもりです」


「そんなに畏まる事ないわ。それに、もっと居てもいいのよ?それにあの子も寂しがるだろうし。貴方も狙われているみたいだし、ここなら安全じゃないかしら」


「だからこそ、ここに居てはいけない」


シュエットは残念だわと言ってため息をつくと、何かを感じたのか遠くを見るような仕草をする。


「さて、そろそろ戻ろうかしら。ご馳走様でした、うふふ」


ご馳走様?


魔力の事を言っているのかと思っていたが、湯から立ち上がっていたので丸見えになっていた事に気づく。


「ふぉっ!?」


慌てて湯の中に戻るアルスの反応を見て堪能した守護獣シュエットは満面の笑みで消えていった。


はぁ、勘弁してくれ・・・・


アルスはもう一度ゆっくりと身体を温めてから風呂場を後にした。


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