気になる素顔
「す、すごいです。こんなに早く討伐してしまうなんて・・・」
日が沈みかけた頃、ギルドのカウンターには巨大な牙と鱗に包まれた尻尾がドンと並べられていた。
驚くシーラに牙と尻尾を渡して報酬を受け取る。
ギルドに帰る前に残りの素材を売って服や食料、剣を買っておいた。これで明日にはここを出る事が出来るだろう。後は今日泊まる宿屋に行くだけだ。
レイナの様子を見ようとギルドの中を見渡すがレイナの姿が見当たらない。
シーラに聞くと、疲れたようでギルドのベッドでぐっすりと眠っているらしい。
食事もご馳走になったようだ。
食事代を渡そうとしたが、シーラはフォレストサーペントの討伐で十分ですと笑顔で応える。
すると、奥の扉から淡い光を放つ狼がのっそりと現れ、クゥーンと鼻を鳴らして擦り寄り尻尾を左右に揺らす。
「よしよし、守ってくれてありがとうな」
こくりと頷くと、狼は光の粒になって消えて行った。
「お、無事に帰ってきたみたいだね〜。まぁAランクの魔物なんて簡単だったか〜」
「お迎えは有り難いがフードを引っ張らないでくれないか」
ミネリアがフードを掴みぎゅうぎゅうと引っ張るのに対し、アルスはフードが脱げないように必死に押さえる。
それにしても酒臭いな、もしかして酔っているのか?
「またそんなに飲んで・・・」
カウンターから呆れ顔で見ていたシーラを気にする事なく、ミネリアは手に持っている酒をゴクゴクと飲み干す。
「隠されると気になるんだよ〜、そんなの被ってたら暑いし見え辛いだろ〜?」
確かに暑いし見え辛いが、これしか方法がないので仕方がない。
一応フードが脱げた時の為に対策はしてあるがミネリアが食い下がるか心配だ。
「少しだけ! 」
「断る」
「チラッと!」
「無理だ」
「も〜、そんなんだと女の子に嫌われるよ〜」
「諦めが悪い方が嫌われるぞ」
そうこうしているうちにミネリアの引っ張る強さが少しずつ強くなり、ミシミシと嫌な音が聞こえ始める。
「ちょっ、ミシミシいってーー」
「スキあり!」
アルスが破れるのを心配して力を緩めた隙にガバッと一気にフードを脱がせるミネリア。
ギルドの人たちの好奇心や怖いもの見たさの眼差しが一気にアルスへと向けられる。
「正体を見破ったり〜ってあれ?」
しかし、現れたのは頭と目元を隠せる兜を被ったアルスの姿だった。
(フードの下に何被ってるんだよ!?)
ギルドの人たちは心の中でツッコミを入れながら、顔が見れると期待していた分落胆した表情を見せる。その中で一番落胆しているのはミネリアだろう。
「もういい、寝る〜」
ミネリアはようやく諦めたようで、おぼつかない足取りでギルドの奥へふらふらと歩いていった。
スドに勝った時に悔しそうな顔をしていたので念の為にと対策しておいて良かった。まさかあれ程諦めが悪いなんて思わなかった。
「ミネリア様がお騒がせしました。お酒を飲むといつもあんな感じで、私たちも手を焼くんですよ」
「毎回大変だな。
さて、ギルドマスターさんが酔って寝ているうちにここを出るか。また来られたら面倒だしな」
アルスはレイナを起こさないようにゆっくりと背負い、シーラに挨拶を交わして宿屋へと向かうのだった。
宿屋へと到着したアルスはレイナをベッドへ降ろして一息つくと、自分も隣のベッドへと座り込む。
やはり固い地面よりも断然いい。レイナもあんな所よりもぐっすりと眠る事が出来るはずだ。
気持ち良さそうに寝ているレイナに布団を掛け直すと部屋の明かりを消してベッドへと寝転ぶ。
手持ちのお金は3万ジール。もし途中で無くなったとしても、ギルドのある街へ行けばまた稼ぐ事が出来るし何とかなるだろう。
父上、時間はかかるが必ず戻る。それまでどうか無事でいてくれ。
拳を握りしめてアルスはゆっくりと目を閉じた。
書き溜めが無くなったので更新ペースが遅くなります。すみません。




