99 探検者
「ボラン! 久しぶり!」
「おお! やはりナオヤか! おっ! また増えたな~。お嬢さんよろしく!」
声をかけるとボランがまくしたててきた。ああ、この感じ、思い出した。
と、モルティットが俺の腕を持ち離れた所まで引っ張てきた。
「な、なに? どうした?」
「あのさ、前に紹介するって言った人ってアレの事?」
凄い形相のモルティットが詰め寄ってきた。やべ! 合ってる! ご、誤魔化さないと!
「違うに決まってるだろ! 他の人だよ。その気になった?」
「なるわけないじゃん! あの人だったら、私をバカにしてると思っただけ!」
怒ってる…。もう気がついてるわ、これ。しかし、白を切るしかない!
「も、モルティットを馬鹿にするわけないよ。ね」
「ふぅん。ま、どっちにしてもナオだけだから!」
怖い笑顔で言ってきた。助けてマクレイ!
「おーい! どうした! 具合でも悪いのか~!」
ボランが大声で聞いてくる。
「ああ、大丈夫! 今行くよ!」
手を振って急いで仲間の元へ駆けて行く。後ろから膨れているモルティットもついてきた。
「どうした突然? おおっ!? わかったぞ! ワハハハ~! 若いなぁ~」
「全然、違うから! ボランもどうしたの?」
ボランが暴走しはじめたので否定した。後ろのモルティットの視線が痛い。
「そうだ! そこで落ち着いて話そう! 行くぞ!」
無理やりボランに連れられて、先ほど出た食堂へ再び舞い戻っていく。ため息をついて後からくるマクレイが見えた。
「よし! 久々の再開にカンバーイ!」
各々に飲み物が渡り、ボランが合図を取る。
「カンバーイ!」
あれ? 俺しか言ってない。皆は無言でカップを上げてる。
一口飲んだところでボランに聞いてみた。
「ところで、どうして地底都市へ来てるんだ?」
「ああ、それだがな。実は財宝が眠っている洞窟があると聞いてな。旅してた途中なんだよ。だが、俺も運がいい! やはり直観は正しいな!」
上機嫌なボランが答えてグビグビと喉を鳴らしてカップをあおっている。
「へー、洞窟かー」
「そうなんだ! なんでも竜の国にある洞窟には金銀財宝がザックザク! って噂があってな、それを確かめに来た」
「ブーーー」
吹いた。あれか? 竜王の宮殿の事? あそこなら確かに沢山あったけど。ボランが逆に聞いてきた。
「ん? どうした? 知ってるのか?」
「いや、詳しく知りたいんだけど、その洞窟って宮殿みたいな入り口の事?」
「む~違うな~。俺の情報だと竜の国に入る手前の山の洞窟らしい。なんでも昔、盗賊のアジトだったようだ」
顎に親指と人差し指をつけてボランが考えながら話した。ホッ、違った。
「そ、そう! 応援してるよボラン!」
そう言ってボランを見ると目が訴えている。めちゃくちゃ期待している…暑苦しい目が訴えている……。まるで蛇に睨まれたカエルのよう。視線を逸らすことができない。…もうダメ!
「……わかったよ! 同行すればいいんだろ!」
「おおっ! さっすが~! 話しが早くて助かるぞ! よし! では、宿を取って明日に備えるぞ!」
めちゃ笑顔のボランが急に立ち上がり、俺の腕を取って店を出て行く。
首を巡らし仲間を見るとマクレイが額に手を当てて、モルティットが苦笑いし、フィアが首を傾けていた。
勝手にボランが宿泊先を決め、何故か俺が料金を出し部屋に入った。
ポツンと一人、クルールと部屋に佇む。あれ?
ボランは一人部屋を取ったようで何故か納得がいかない。クルールにお願いして部屋にいてもらって、抗議しに宿屋の廊下に出ると偶然マクレイがいた。
「あ、ナオ」
「マクレイ! ボランは見た?」
「いや、見てないよ。たぶん部屋だね」
苦笑いして答えるマクレイを見て、ハッと気がついた。これはチャンスだ!
「マクレイ、ちょっといいかな?」
「なんだい?」
返事を聞かずにマクレイの手を取って宿屋から離れた人工の川辺に連れてきた。怪しんだマクレイが聞いてくる。
「ちょっと、こんな所までどうしたんだい?」
「その、さ、最近二人きりになれなかったから、い、いい機会かと思って…」
そう言うとマクレイの顔が真っ赤になった。
「ななな、なんだよ、てっきりモルティットにしたんじゃなかったのかい?」
「は? もう、ずーーーーっと言い続けてるけど俺はマクレイが好きなの! わかった?」
真っ赤なマクレイがコクコク頷く。ぎこちないマクレイを抱きしめると相手も背中に手を回してきた。
ドキドキするけど心地いい感じ。あー安心する。
「あ、アタシはモルティットみたいにはなれないよ……」
マクレイが囁いてきた。なんでそんな事を気にしてるんだ?
「俺は不器用なマクレイがいい」
「フフ。なんでだろうね?」
顔を上げると赤紫色の瞳が見つめてきた。
と、後頭部に何かがぶつかりマクレイの鼻に頭突きが炸裂する!
「痛て!」「ぶぎゅ!」
マクレイから変な声が出た!
慌てて後ろを振り向くと怒りのクルールがいた…。
『もーーー! ナオヤは遅ーーーい!』
ヤバいご立腹だ。すっかり忘れてた。マクレイを見ると鼻が真っ赤になっている。
「プッ」
「ああ! 今のはワザとかい?」
吹き出したら、怒りのマクレイに頭を掴まれた! 痛いって!
「ち、違うんだ! クルールがぶつかってきたんだよ!」
そう言ってクルールを指さす。マクレイもやっと気がついたようだ。
「あ、ホントだね。どうしたんだいクルール?」
クルールがマクレイに身振りで怒りを表現している。はたから見たら面白いけど、吹き出したら怒られるな、きっと。
とりあえずクルールについてマクレイに説明してから、二人でなだめた。
やっと機嫌が直ったクルールを肩に乗せ、マクレイと手をつないて宿屋に戻った。
今度はクルール対策をしっかりしようと心に誓って就寝した。
翌日、宿屋の前に集合し、ボランの先導で出発することになった。
「よし! 集まったな! では行くか!」
ボランが掛け声をかけて歩き始める。俺達はその後ろをゾロゾロついて行った。
地底都市を離れ、見慣れた竜の国の山脈を目指す。
どうもマクレイはモルティットに嘘がつけないようで、昨夜の事が筒抜けっぽい感じがする。
その考えが合っているかのように、さっきからモルティットが隣を歩いている。
「あれ? ロックに乗って行かないの?」
「たまには歩くのもいいよね?」
怖い笑顔で言ってきた。マクレイを見ると顔を逸らしてる。なんでそんなにモルティットに弱いんだ美人さん…。
助けを求めフィアを見ると、絶対見えてるはずなのに見えてない振りして歩いている。ズルい! 目の宝石みたいなレンズに俺が映ってるじゃん!
しばらく進んでいくとボランが疲れたのか、フィアより遅く歩いている。もう先導する気ないでしょ?
数日移動したところで、山が身近になってきた。
「よし! 目的地は近いぞ! ワハハハ!」
いきなり元気になったボランが力強く歩いて行く。知っている形の山々が見えてくると、遠くから黒い点が現れた気がした。
「ほラ! ドウェンさンが来ましタよ!」
フィアが上空を指をさした。ボランが立ち止まり片眉を上げながら聞いてくる。
「ドウェンとは誰だ?」
「ああ、竜の国のドラゴンだよ! ほら!」
だいぶ近くなってきた黒竜を見せる。
「おおう! あれが伝説のドラゴンか! なんとも壮大だな! ワハハ!」
ボランが楽しそうに言ってきた。このおっさんは変に肝がすわってるから凄いね。
ちらりとマクレイを見ると青ざめていた。たぶん今回は背中に乗らないから、大丈夫だよ。たぶん。




