表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/116

82 ドワーフの町


 門付近には人通りもなく、門番が重苦しそうな雰囲気で出迎えていた。

 大きな門の横に通用口と思われる岩をくり抜いた入り口があり、その前に門番が立っていた。

「こんにちはー」

「……おぅ!」

 門番の一人に声をかけると小さな返事をもらった。もっと元気かと思ったらそうでもなかった。

 鎧で隠れているが、ひげもじゃの顔、ずんぐりむっくりな体。おおー! 本物のドワーフだ!


 と、門番が聞いてきた。

「ところでお前ら、この町に何の用だ?」

「えーと、観光です!」

 兜の下の目が(あき)れている…。あれ? あんまりいないの?

「珍しすぎだろ! 普通は(あきな)いで来る奴らばっかりだぞ!」

「えっ! そうなの?」

 毒気の無くなった門番は、髭をかいて仕事をしだした。

「ま、いいけどよ。そこのゴーレムの荷物はなんだ? いかがわしい物はないな?」

「荷物は食料と着替えと宿泊道具です。あ、後は武器とか?」

「そんなの見りゃわかるよ! その他って事!」

「ああ、ないっす」

 いぶかしげだが納得してようだった。

「不思議な一団だが問題ないようだ。くれぐれも騒ぎは起こすなよ!」

「ありがとう! それじゃ!」

 通してくれたんで、お礼を言って中に入って行く。



「おぉー! すげー! マクレイ、あそこ(すご)くない?」

「わかったから、はしゃぐな! ジロジロ見られるよ」

 町を見渡した感想を言うとマクレイに怒られた。フィアは何も言わずキラキラした目で見まわしている。マクレイの胸元にいるクルールも楽しそうだ。モルティットも楽しそうにロックと共に歩いている。

 ドワーフの町は岩をくり抜いて段々と住居を作っており、階段状のマンションのようになっていた。そここにある煙突からは煙がモウモウと立ち上り、鉄を打つ音が響いている。(ひげ)を生やしたドワーフが行き交い荷物を運んでいる。

 商店街らしき道を通ると武器や鉄器製品などが店先に並んでおり、さすが鍛冶の盛んな所と思わせた。(すご)いなぁー。


 とりあえず食堂へ行き休憩する。ロックはいつものように入口で待っている。

「おおぉー、ここも凄いね! マクレイあれ見てよ!」

「もう! 私にも聞いてよ!」

 感激してマクレイに言うと、モルティットが憤慨している。マクレイは苦笑いしているし。

「えーと、モルティットはどう?」

「なにそれ? 私の事好きじゃないの?」

「いや、マクレイが好きだって言ってんじゃん」

「はら! それ! 違うでしょ!」

 モルティットがワーワー言ってきた。もう、どうしたらいいの? 教えて神様! フィアに助けを求めて見たら、めちゃキョロキョロしていた。

 それからドワーフの店員に注文した。めちゃくちゃ店員をガン見してドワーフの体形を観察する。まるで樽だ、動く(ひげ)樽。いやー来てよかった。まるでテーマパークに来たみたい。


 きっと普通の食堂だろうけど、とても楽しく過ごした後は、久しぶりに冒険者ギルドへ行くことになった。

 今まで倒した魔物の牙とかがあるのでまとめて換金するようだ。

 道行くドワーフに聞きギルドへ向かう。

 目的の場所は三階層にあるようで、(せま)い階段を上がって行く。やがて看板が見えた。結構大きそうな感じだ。

 中に入るとドワーフの受付が待っていた。おおー、なんか感動する。なんだろう、魔人や獣人の時より興奮するな。

 マクレイが代表で受付に向かい、俺達は広間の壁に寄りかかって待っているとモルティットがニコニコと引っ付いてきた。


 しばらく待っていると、一人のドワーフが近づいてきた。

「おたくら冒険者か? こんなところにいて暇なのか?」

 なんか言ってきた。(ひげ)もじゃで他のドワーフと区別できない。しいて言うと背が少し高いくらい?

「いや、連れを待ってるんだ。何か用ですか?」

「そうか…。今、冒険者が不足してて探してるんだよ。どうだ? 話しだけでもいいかな?」

 ドワーフが説明してきたところにマクレイが戻ってきた。

「どうしたんだい?」

「ああ、この人が話しをしたいって」

 ドワーフを紹介すると、マクレイを見て縮みあがっていた。そんなに怖い?

 とりあえず、場所を移して話しを聞いた。


 テルバロと名乗ったドワーフは事情を説明した。

 なんでも今、鍛冶のコンクールが開催されているみたいだ。町中の鍛冶屋がこぞって参加しているようで、鉱山に入るための護衛として冒険者を雇っているため人材が不足しているらしい。そこで、暇そうな俺達に声をかけたとの事。ちなみにテルバロは山師をしていて、鉱物を採掘しているようだった。


「ふーん。いろいろ大変だねぇ」

 マクレイが感想を漏らした。他人事じゃないよ。

「ところでどうだ? 報酬は弾むよ!」

 必死なテルバロが言ってきた。小さいからかわいいな。年上だろうけど。

「俺は良いけど、皆は?」

 そう言って仲間を見ると無言が続いた…。良いってことにしちゃうよ?

「反対がないから手伝うよ!」

「そうか! いやー良かった! 焦ってたんだなぁ~。このままじゃ雇い主に怒られるからよ!」

 テルバロが握手を求めてきたので応じると嬉しそうに腕を振った。

 それから俺達も自己紹介してから雇い主の元へ行くことになった。


「おう! やっとか! 頼むぞ!」

 そう言ってきたのは鍛冶師のキッタムと紹介されたドワーフだ。若いらしいが外見は同じに見える。

「ああ、任せな! いい鉱石を持ってくるぜ! なあ? ナオヤさんよ?」

「え? ああ、がんばります!」

 テルバロが俺の肩を叩いてくるので返事をする。

 今はキッタムが所有する鍛冶の工房にいる。常に炭に火を入れているので暑い。ここで働くのも大変そうだ。

「それじゃ、行ってくるぜ!」

 そう言ってテルバロが道具を持って工房から出て行く。俺達もキッタムに挨拶してついて行った。

 広い路地を抜け町の外れにある一角にたどり着いた。そこには地下に続く坑道があるようだ。

 発掘道具を装備したテルバロが説明する。

「この先の地下が発掘場になる。地下には魔物がいるから注意してくれ。ま、そのためにお前らを雇ったんだけどよ! ハハハ!」

 笑いながらまた肩を叩かれた。それは、そういう事だよね。

 それからテルバロが先頭になり地下へ入って行った。


 坑道に入るのはこれで二度目だな。前回は素通りしたが今回はちゃんと発掘するためなので(おもむき)が異なる感じ。

 隊列はテルバロを先頭にマクレイ、俺、フィア、モルティット、ロックの順に並んで歩いていく。

 進み始めてしばらくするとテルバロが足を止めた。

「ここからはお前らが先導してくれ。俺が行先を指示するから。魔物が出たらよろしくな!」

 そう言うと俺とフィアの間に入ってきた。必然的にマクレイが先頭になる。

「はぁ。わかったよ。ナオ、感知をよろしく!」

 マクレイが面倒くさそうに言ってきたのでマクレイの肩を叩いて返事をした。


 しばらく歩みを進めると前方に軽い足音を感知した。

「マクレイ、前から何か軽いものが来る!」

「はいよ」

 警告したが、あまり緊張感が無さそうだ。

 すると前からうす汚れた骸骨が、こん棒を振り回しながらやって来た!

 マクレイは何でもないようにこん棒を奪い取って相手を粉砕していた…。えぇー! 剣すら抜かないの?

「おい! えれぇ強ぇな! 頼もしすぎだろ! 残り物には福があったな! ハハハハ!」

 テルバロが俺の背中をバンバン叩いて嬉しそうだ。良かったね。


 その後もマクレイが奪ったこん棒で近寄る魔物を退治していった。魔物はスケルトンなどが多く、テルバロの言うには今までこの坑道で死んでいった者達が魔物になってるそうだ。どれだけ亡くなっているの?

 テルバロの指示の元、坑道の奥まで進んでいく。地下に進むにつれ魔物の数も増えてきた。さすがにマクレイも剣を抜き、モルティットが魔法で援護していた。俺が手伝おうとすると怖い顔のマクレイが首を横に振って拒否してきた。なんで?

 やがて最下層と思われる坑道の内、ある道に進み行き止まりとなった。


 行き止まりの壁を調べているテルバロは道具で一部を崩し、中に何かを詰めている。

「俺は昔、ここに来て壁を調べた事があるんだ。で、ここを破壊すれば隠れた通路が出てきて、俺達には未知の鉱石が手に入るって寸法よ! どうだ? 悪くねぇだろ?」

 そう解説しながらテルバロが壁に向かって作業をしていく。

「よし! お前ら少し離れてろ! 爆発に巻き込まれるぞ!」

 そう言うとテルバロがこちらに全力で走ってきた! 俺達も慌てて後ろに後退する。


 ドォオオオオオン!

 坑道が揺れ激しい爆発音の後に大量の煙が来た! いやぁあああ、汚れるぅ! 鬼のマクレイに見つからないよう(ささや)いた。

「ベントゥス…」

 風が起こり大量の煙を()らした。バレてないか気になってマクレイを見ると(にら)まれていた…。ダメだバレてた。愛想笑いで誤魔化す。

「おお! 運がいいな! 煙が上手く逸れたぞ! よし、見に行こう!」

 テルバロは気がついていないのか、壁に向かって行った。俺達も後に続いていく。

 そこには壁が崩れ大きな穴が開いていて、その先に新たな坑道が見えていた。


 テルバロはそれを見てニヤッと笑うと、一言。

「言った通りだろ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ