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106 夢

 

 目が覚めるとそこは白い空間だった……。え? どこ?

 立ち上がり回りを見るが何もない。白一色で遠く、果てのない感じだ。


 おかしい。仲間と寝たはずなのに…。

 すると、背後から声が聞こえる。

『ナオヤ……ここには私が呼びしました』

 振り向くとにこやかなソイルが立っていた。

「ソイル…。ここはどこ?」

『ここはあなたの中。私達、精霊の領域になります』

 マジか!? こんなのが俺の中にあるの? 四次〇ポケットもビックリだよ!

 ソイルは微笑んで続ける。

『ナオヤに話したい事があります。皆、待っていますのでこちらへ』

 そう言うとソイルは先に歩き出した。慌てて追うと、白い空間から草原のような場所へ景色が移り変わった。


 追いついて横を歩いていく先に白い建物が見えてきた。俺の疑問を感じ取ったのかソイルが説明する。

『あの建物は集会場です。私達はいつもは別の場所に暮らしてますよ』

「へー、不思議な感じだね。ソイル達の日常を見てみたい気もするよ」

 するとソイルは少し顔を赤らめ、嬉しそうに向き直った。

『フフ。私達はあなたをいつも見守っています。あなたの見た世界、経験が私達に新鮮な驚きを与え、考えるきっかけになります』

 マジか……。俺の狭い範囲であまり判断されても怖い気がする。それに最近は色恋沙汰ばっかりな気がしてきた。

 ハッと気がついてソイルを見ると、あからさまに目を逸らされた…。イグニスだけじゃないのか…ヤバい、恥ずかしい…。顔が赤くなってきた。


 白い建物の丸いアーチをくぐり中へ入ると広い中庭があり、そこにある大きな丸いテーブルには既に精霊主達が着席していた。

 二つ空いている椅子にソイルが座り、残った席に俺が着く。

『ようこそおいでくださいました、ナオヤさん』

 アクアが代表で挨拶する。総勢十二柱の精霊主達を見ると圧巻だ。右みても左みても神話級の美人しかいない。なんかドキドキしてきた。

『フフフ。そんなに緊張しなくても大丈夫です。皆、あなたの事は良く知ってますから』

 ベントゥスが微笑む。いや、それが恥ずかしいんです……。

 そして隣のソイルが静かに聞いてきた。

『それでは、話しをしてよろしいですか? ナオヤ』

「あ、ああ、お願いします…」

 返事をすると、かしこまったソイルが口を開いた。


『幾千の時を超え、この世界の精霊は再び一つになりました。これもナオヤの献身的な行動のおかげです』

 ソイルはその透き通った目で見つめてくる。他の精霊主達も同じだ。ああ、目のやり場に困る…。

 そっと、ソイルが手を重ねてきた。

『ありがとう』

 微笑んで言われる。なんか泣きそう。そしてアクアが語りかける。

『でも、私達の目的はまだ達成されておりません。それにはこの世界に精霊を満たす必要があるのです』


 ベントゥスが後を続けた。

『幾千の時が過ぎるうちに、この世界の精霊の数が減少してしまいました。それはこの世界にも良くはありません』


 シルワが悲し気に引き継ぐ。

数多(あまた)の“契約者”が達成できなかったためです。ある者は私利私欲に溺れ、ある者は志半ばで倒れ、ある者は適正がありませんでした。私達が世界に散っているのは理由があっての事です。ですが、それも終わりました』


 アーテルが嬉しそうに語る。

『ナオヤさんはこれから“世界の頂”へ行き、精霊を解放して欲しいのです!』


 アウルムも微笑んで続ける。

『そうすれば精霊が世界に満ち、再び活力が戻るでしょう』


 カエルムは静かに目を閉じて話す。

『そしてまた幾千の時が栄え安定します』


 イグニスが微笑み、ムーシカは嬉しそうだ。そして、ニクスは慈しむように俺を見つめ、アルブムとトニトルスは優しい笑顔を向けていた。

『ナオヤには申し訳ありませんが、もうひと働きをお願いしますね』

 ソイルが重ねた手を握ってきた。優しい気持ちが伝わってくる。頷きで皆に応える。


「あの、なんでここに招待したんだ?」

 質問するとソイルが少し困った顔をして答えた。

『本来は“人”はこの場所に立てません。あなたは異世界から来たからか分かりませんが、皆に認められました。いえ、あなたがこの世界の人間であっても認められたでしょう』

 全然意味がわからない。何のこと?


 すると、アーテルが微笑んで付け加えた。

『私達はあなたが好きなんですよ、ナオヤさん』

 は? ああ、家族的な、ね。ああ、焦った。ビックリして汗が出てきた。

「そ、それは光栄です…」

『フフ、それで今はいいでしょう』

 ソイルがそう言うと続けた。

『それではまたお会いしましょう。私達の望みを叶えてくれるようお願いします……』

 その言葉を最後に部屋が白く染まり、俺の記憶も薄らいでいった……。



 ハッ! 目が覚めた!

 目の前に銀色の顔がある! 驚いて起き上がると、フィアが一緒に寝ていた…。

 あー、そういえば、昨日一緒に寝たんだっけ。姿が変わっていた事をつい忘れてた。

 周りを見るとマクレイ達は起きているようで、朝食の支度を始めていた。立ち上がって焚き火の方へ向かう。


 挨拶をして身支度を整えたが、フィアはまだ寝ているようだ。

「なんか、すっかり人間っぽいね?」

「そうだねぇ。もうナオとは寝させないよ」

 マクレイに聞くと警戒して答えられた。

「ふふっ。ホントに変わったね」

 モルティットが嬉しそうにフィアの寝顔を見ている。

 クルールはフィアの頬をペチペチ叩いていた。起こしてるのかな?


 先に朝食を取っているとフィアが慌てて起きてきた。

「みなサん。すみまセん! 起きまシた!」

「落ち着いてフィア。ゆっくりすればいいよ」

 マクレイが優しく言ってきたが、フィアは慌てている。

「こんな事、初めてデす! 制御や各機能が見れませんでシた!」

「それは、あれじゃないか? “人”になったってやつ?」

 焦ったフィアの言葉に俺が答えた。

「ち、ちょっとコッチ来てフィアちゃん」

 何故か慌てたモルティットがフィアを呼ぶ。フィアがモルティットの所へ行くと背を向けて二人で話しながら何かしている。

「なんだろ?」

「ははぁ。確認してんだね」

 疑問にピンときたマクレイが答えた。興味があるのかクルールも飛んで見に行っている。


 しばらくしてモルティットとフィアが戻って来た。なぜかフィアの顔が赤い。

 モルティットが俺を見て笑顔で言ってきた。

「フィアちゃんはもう機械じゃないよ。これからは女性として扱ってね、ナオ?」

「え? そうなの? いつも通りでしょ?」

 すると(にら)まれた。えぇー。

 それから朝食を済ませると、皆に集まってもらった。もちろんロックも。



 火の消えた薪を囲んで座っている。

 皆を見渡してから口を開く。

「実はもう“導き”は無くなった」

「ほ、ホントかい!?」

 驚いたマクレイが聞いてくる。

「ああ、でも続きがあるんだ。夢で精霊主達と会って話しを聞いたんだ……」

 それから夢の出来事を語った。話しの途中からだんだんマクレイの顔が険しくなってくる。なぜ?


 話しが終わるとモルティットが聞いてきた。

「じゃあ、この世界の精霊主様は全てナオの中にいるのね?」

「そう。自分でも信じられないけど」

 そう答えると、困ったようにマクレイが聞いてくる。

「そ、その精霊を解放したらどうなるんだい?」

「世界に精霊が満たされるって事だろ」

 焦ったマクレイが身を乗り出す。

「ち、違うよ! ナオはどうなるんだって聞いてるの!」

「え? あ、うーん。わからない…」

 そう答えるとマクレイが悲壮な顔をしてきた。何が悲しいの?

「ふふっ。心配なんだよね?」

 モルティットがマクレイに言うと、真っ赤になったマクレイが立ち上がって外に出て行った…。


「ちょ、ちょっとマクレイ!」

 追いかけようと立ち上がると、モルティットに止められた。

「一人にしときなよ。その内わかるよ」

「なんでそう二人は正反対なんだ?」

 モルティットに聞くとウインクして答えられた。

「私の方が楽観的なの。マクレイディアはすぐ悪い方に考えるんだよ」

 ああ、わかった。だったらなおさらだ!

「ちょっと待ってて!」

 そう言うと俺も外へマクレイを追いかけた。


 よく考えたらわかってた事だったのに…俺ってダメだな。



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