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104 契約者

 

 下山し平原に出たところで、トリエステが足を止める。

「皆さん、私はここでお別れいたします」

「え? これからどうするの? どこか行く当ては?」

 するとトリエステは微笑んで、

「特にありませんが、ご一緒するには私は早いと思います」

「な、なら、この先を行った所にソルトレイって村があるけど、そこに行ってみたら?」

「なぜですか? その村には何が?」

 ビックリしているトリエステだが、説明を続けた。

「ああ、前にご厄介になったんだ。村長とは知り合いだから俺の名前を言えばなんとかなると思うよ」

「なるほど…。フフ、ありがとうございます。では、そのようにしてみます“契約者”様。皆さん、それでは!」

 トリエステは頭を下げると俺の紹介した方角へ歩き始めた。心なしか足取りは軽いような気がする。

 皆でその後ろ姿を見送った。



「ホント、お人好し!」

 しばらくするとモルティットが俺の腕に抱きついてきた。何故お節介をすると嬉しそうなのか?

 すると反対側をマクレイが手を握ってきた。あれ? いつもと対応が違うぞ!

 助けを求めてフィアを見ると、また例の見ていない振りをして歩いている。ヒドイ!

 そうやって騒がしく進んでいくと、ソイルが警告してきた。


「前方に誰かがいる!」

 声を出すと皆、警戒をし始める。

 さらに周囲を注意しつつ先へ進むと一人の男が立っていた。どうやら俺達を待っているような感じだ。ソイルの警告はあの男の事だろうか? 〈………〉


 相手の姿が見える頃、向こうから声をかけてきた。

「待ってたよ! お前は“契約者”だろ?」

 黒髪で全身黒ずくめの男のようだが、ここからだと詳しい姿がわからない。しかし……同じ“転移者”のような気がする。

「どういうことだい?」

 ピリピリした雰囲気にマクレイが声を上げた。男はニヤリとして、

「おい! おい! 美人に囲まれて自分じゃ声も出ないのか?」

「なんだと!」

 怒りの美人さんが声を荒げる。もう少し抑えて欲しい。

「待ってマクレイ。俺が話すよ」

 マクレイを制して後ろに下がらせる。


「はぁ、やっとか?」

 男はため息をついて頭をかいている。相手とは少し距離があるが口の端をつり上げ、ニヤけているのがわかる。

「で、なんの用だ?」

「それだよ! お前、精霊がいるだろ? それを俺によこしな!」

 俺に指をさし当然のように見下している。何言い始めてるんだ、この男は?

「無理だ。それに人に譲渡するやり方は知らない!」

「ハハハ! そんなの俺も知らねぇよ。だから、さ、考えたんだよ~、相手が死んだら俺の所にくるんじゃね? ってさ!」

 否定するとニヤニヤしながら言い放った。は? 頭がおかしいんじゃないか?

 と、黒服の男が叫んだ!

「光よ!!」


 とっさにマクレイが俺に抱きつき倒れる。光の束が音もなく黒服から伸びマクレイの足を貫いた!

「マクレイ!!」

「大丈夫さ、これぐらい! ヤバい相手だよ!」

 急いで立とうとすると相手が続ける。

「ハハハハハハハ! どうだい、凄いだろ! 光よ!」

 これは……レーザーだ!

 光の精霊主を使っているのか! なんてことだ!


 迫っている光を遮るように氷の壁が立ちふさがり視界を奪う。モルティットだ!

 が、まるで何もないように次々と光が壁に穴を空ける。しかし目標が見えなくなったことで狙いが逸れている。

 今はモルティットが助けてくれたが、ヤバい!

「モルティット! マクレイを連れて離れて! ロックは後ろに回って! フィアは遠くから援護を!」

 叫びながらマクレイを置いて横に走り出す。

「ソイル! アウルム!」

 壁を出現させ仲間を守る。さすがの光も貫くのに時間がかかるようだ。

「ハハハ~! そうこなくっちゃ! 簡単にはいかないなぁ! 光を強く!」

 男は笑いながら続ける。すると壁に穴が空き始め、光線が地面を穿(うが)つ。

 これはヤバい! 考えろ、俺!

「ソイル足止めを!」〈駄目です。あの者は結界を張っています!〉マジで!?

 くそっ! 余りやりたくなかったが……。


 仲間から離れ相手を見ながら、

「ベントゥス! ニクス!」

 風と氷の刃が無数、黒服の男を襲う! が、


「ハハハハハハ! 雷だ~~~!」

 バチバチバチ──

 電撃のカーテンが俺の攻撃を防ぐ。あんなの有り?

「もう手詰まりか? ハハハハハハ! 光を!」

 ああ! ヤバい!


 パキン──

 と、後方から金属音がして黒服の男の右足の膝下が吹っ飛ばされた!

 フィアの援護だ!


「うぁああああああ! 足がぁ~~! 俺の足が~~~!! ひぃああああーーー!」


 男は叫びながら倒れ、のたうち回っている。今の内になんとかしないと! さらに叫んできた。

「あぁあああああ、お前ら全員死ね~~! 雷で~!!」


「アクア! カエルム! シルワ! 皆を守ってくれ!」

 上空から電撃が至る所に降り始める。だが、ツタのドームが現れ雷の電流を地面に逃がし仲間を守っている。


「アーテル! 奴の周りを包んで!」

 男の周りが闇に染まった。中で何か叫んでいるようだが聞こえない。

 と、暗闇のあちこちからレーザーが照射される! 丁度、男の後ろに回っていたロックに無数の穴が空いた!


「ローーックーー!!」

 そのままロックは後ろに倒れた! ああ! ロック!

 仲間を見ると皆伏せている。モルティットはマクレイの治療をしているようだ。フィアは様子を伺っている。


「アウルム! 鏡だ!」

 照射される位置に鏡を置くと一瞬反射するが、向こうの出力が強くて穴が空いた。どうすれば?

 今度は電撃とレーザーが乱射される。あちこちに穴を開け、雷が襲う。無茶苦茶な攻撃だ!

 左足の太ももがチクリとする。

 よく見ると穴が空いていた……。痛ってえええええ! 後から来た!


 地面に崩れ落ちると、向こう側でフィアも倒れていた。ま、まさか…。くそ、早く終わらなせないと!

 ソイルとアウルムに壁を作ってもらい、仲間を守ってもらう。

「アーテル、解除して!」

 すると、半狂乱に暴れている黒服の男が伏せている姿が現れた。無理やり立ち上がって相対する。

 相手も気づいたようで、凶器の眼差しを向けて膝立ちで起き上がってきた。


「あぁあああああ! 見つけた~~~! 死ねぇええええ! 雷でぇええええええええ!!」

「ムーシカ、カエルム! 奴、限定で! アウルム守って!」

 雷の束が襲うがアウルムが防ぐ! それと同時にムーシカが男をカエルムによって増幅した圧縮音波にさらす!

 黒服の男は全身が何重もブレ始め、顔中から血を噴き出し倒れた……。


 ……ソイルに確認してもらったが鼓動は止まっているようだ。

 奧で倒れていたロックがむくりと起き上がり、俺を見た。ああ、大丈夫じゃん! ホッ、良かった!


 急いで足を引きずりながらフィアの元まで行くとすでにマクレイ達が来ていた。

「フィアは?」

 聞くとマクレイが泣いて首を振っている。モルティットも涙顔だ。マクレイの胸元にいたクルールも泣いている。マジか…。

 フィアの横に座り様子を見てみると、ちょうど胸の辺りに穴が空いていた……。うそだろ…。

 顔を見ると宝石のようなガラスがいつものように上を見つめるだけだった。


 フィアの手を取ると力がなくオモチャみたいにフニャフニャだ。どうしょうもなく涙が出てくる……。

「フィ、フィア? どうしたらいいんだ? わかんないよ?」

 語りかけるが返事は、無い。



「ま、まだ見てないぞ、せ、世界を、さ……フィア…だ、ダメだ! まだ駄目だ!!」

 フィアの手を両手で強く握る。


「い…生きるんだ! 生きてくれーーーーー!!」

 どうしょうもなくなり天に向かって叫ぶ!


 すると胸のあたりが暖かく光ってきた! な、なんだこれ?

 胸のネックレスを取り出すと“妖精の羽”が明るくなっていた……。


 握るとさらに輝きだす!

 輝きが増すにつれ目の前に淡い光の玉が出現した。なんだこれは…?


 握っている輝きが薄くなってくる…。なぜか消してはいけない気がする。

 だ、ダメだ! 消えては! 何とかしなくては!

 あっ! “生命の石”!? フレイマンごめん、自分の為に使うよ──。


 懐から白い石を取り出して、フィアの胸に空いた穴に差し込む。

 すると、つられるように淡い光の玉がフィアの体の中にスッと入っていく……。

 突然、フィアの体が眩く輝き出す!


 直視できない!

 思わず目をつぶる。



 …………



 ……目を開けるとそこには銀色で整った顔立ちの女の子が寝ていた。


 は? 誰?

 服はフィアが着ている物と同じだ。え?



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