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【寄居町都市伝説】ハグレの家  作者: kkkkkkkkkkkkeeeiiiii
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最初の出来事

自分が小学3~4年くらいのときだから、今からもう何十年も前の話。


遠足とかの時期になると、決まって噂になる話題があった。

それは、秩父線の寄居~波久礼駅の間に一瞬だけ見えるという、ある家の噂。

地名からなんとなく「ハグレの家」って呼ばれてた。


自分らの学区の遠足は、大体、風布のみかん山って決まってたから、そのとき必ず、其処、通るんだよね。


噂の内容はこうだ……

その家は、秩父線の下り線で、進路方向から右手に見える。

外見は普通の家なんだけど、ある一点だけおかしい、不自然なところがある。

その家にはさ、窓ガラスがないんだよ。

窓は、ある。

でもガラスだけがない。割れているとかそういうんじゃなく、キレイさっぱりない。

いくら新しいガラスを入れても割れちゃうんだってさ。

それも普通の割れ方じゃなく、内から外に向かって割れる。

サッシには欠片も残らない。

窓だけじゃなくて、ガラスのものは全部ダメ。

コップとかビンとかのガラス製品も割れる。

気持ち悪いのは、鏡。

まあ、鏡もガラスで出来ているから、ルールとしては合っているんだろうけど、割れ方が気持ち悪い。

窓と同じ割れ方をするんだって。

つまり、内から外に向かって割れる。

台っていうの?台側から、見る側に向かって割れるんだって。

すげぇ不自然だよな。

だからその家には、手鏡とか、壁掛鏡、鏡台なんかもあるらしいんだけど、鏡面は全部ない。

殺人事件があったとかで、その呪いなんだって。


『ハグレの家』の噂は、風布の遠足時期になると必ず出回った。

小学生にとって、まさにタイムリーな話題だったんだろうな。

そしてそういう歳なもんだから、興味本位で食いついてくるヤツと、怖がっちゃうヤツに分かれるんだけど、オレはどちらかというと前者だった。


遠足当日、すげぇワクワクしながら電車に乗ったのを今も覚えてる。

でも、行きのときは見えなかった。分からなかった。

寄居~波久礼間は、大体せいぜい4、5km。時間にして5分程度で着いてしまう。

オレの他にも、興味あるヤツは窓に張り付いて見てたんだけど、みんなダメ。

後で起こったことを考慮すれば、多分、そのときは誰も発見出来なかったんだと思う。

お調子者が「見えた見えた!超怖ぇ!」なんていってたけど、明らかに法螺って判ったし。

まあ、曰くつきな内容だから、内心ちょっとホッとしてた。

現地に着いたらすっかり忘れて遠足を楽しんだんだ。


で、帰り道。

遠足道中に、改めて噂が話題になったみたいで、駅では行きよりも盛り上がってたみたい。

何だか、今度こそは!みたいな流れになった。

今度は上り線になるから、行きと逆……進路方向からみて左側は「見たいヤツら」、

右側は「恐がってる、あるいは興味ないヤツら」って座り方に分かれた。


駅を出て、電車は段々加速していく。

波久礼の駅周辺って、結構過疎ってるんだけど、それでも家はある。

それがポツポツと疎らになり少なくなっていく。

やがて家がなくなって、空地ばかりになったとき……

ひとつだけポツンと家が建っていた。

周りには何もない。

ただ、家だけがポツンと。

間違いない……『あの家』だ。

行きには全然、誰一人気付かなかったのに、今度はこれでもかってくらい、ひと目で『ハグレの家』って分かる。

噂通り、何の変哲もない平屋の家。

でも、遠目からでもすぐに気づく異常……窓にガラスがない。

上手く説明できないが、不気味な感じ?異質さ、気持ち悪さみたいなものが込み上げた。

多分、左側で見てたヤツらは全員分かったみたい。

みんな大騒ぎした。

引率の先生は、静かにするよう大声を出したが、もうお祭り騒ぎ。

お化けだ、幽霊だって止まらない。

オレは小学生ながら、

(それをいうなら、お化け屋敷とか幽霊屋敷じゃないのか?)

なんて思ってたけど、まあ、そんなことはどうでもいいくらい、それはもう、大迷惑な喧しさだった。


で、そんなとき、ふいに逆方向からからどよめきが起こった。

左側の窓と反対側、 恐がってる、あるいは興味ないヤツら が座ってる側からだ。

オレからは、ちょうど斜向かいの座席だったんで、よくは見えなかったんだが、どうやら女子が吐いたらしい。その子は仮にAとしておく。

すぐに異臭が立ち込め、窓を開けるヤツ、逃げ出すヤツ、ギャーギャー騒ぎ出すヤツと、それまでとは違う大騒ぎになった。

電車に酔ったんだろうか?

Aと仲がよかったB子は、そんな様子に何か泣きながら叫んでたみたいだけど、そんな騒ぎの中だし、紛れて何を言っているかは分からなかった。


そんなこんなで、やがて駅についた。

色々なことが起きたせいか、行きの何倍もの時間がかかったような気がする。

電車はしばらく停まっていた。

吐瀉物の清掃だとか、色々あったんだろう。ずいぶん待たされた。

それがクールダウンになったんだろうな。水差された感じで、あれだけ大騒ぎしてた連中も静かになった。

遠足は駅集合駅解散なので、その後みんな散り散りになっていった。

Aは、救急車で運ばれたと、あとで聞いた。

そしてAは、一週間くらい学校を休んだ。



ここまでが当時の思い出。

その後、みんなで集まるまで、このときのことは、ちょっとしたハプニングつきの遠足の思い出くらいにしか認識してなかったんだ。


(つづく)

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