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爆音が鼓膜を突き抜ける。
灰色の空からは瓦礫が落ち、まるで終末のような光景があたりに広がっていた。
三島和歌は空をみた。
白い翼の生えた癖毛の金髪碧眼の少年と、対称の黒い翼をもつ黒髪紅目の青年が戦っている。
金髪の少年は剣を構え、最後の一撃を繰り出そうとしていた。
黒髪の青年は手に青い炎を燃やし、同じくこの戦いを終わらせるつもりだ。
和歌の拳に力が入る。
何を勝手なことをしているのだ。人の気も知らないで私闘をし、周りに迷惑をかけるなんて!
和歌の限界値に達した。
「私闘は校則違反ですー!!!!!!!」
高校の入学式が終わった日、和歌は少しの期待と不安、これからの高校生活に胸を躍らせながらベッドに入った。
うとうととし、興奮も程よく熱が冷めてしばしの静けさを味わおうとした時だった。
和歌は白に包まれた世界に1人自分がいる夢を見た。
どうすることもできず、ただ立ち尽くしていると低く威厳のある、でも不思議と落ち着く声が聞こえた。
「三島和歌さん、こんにちは。」
声の聞こえた方へ振り向くと、大人の男ほどある人影のような光の発光体がいる。
「私は神と君たちの世界で言われているものです。今回は、お願いがあってきました。」
えっ、と声が出そうな和歌であったが声は出てこなかった。何かに阻害されている感覚。
そうか、これは夢だから声が出ないのか。と和歌は理解した。
夢ならば、神だという発光体が出てきても何らおかしくはない。
「あなたには、天使と悪魔の闘いの審判をしていただきたいのです。」
今回の夢は随分とおもしろいことを言うものだと和歌は自分の脳みその見せる世界に身を預けた。
発光体は足元に視線を落とし、話を続ける。
「長く、天使と悪魔は戦争をおこなってきました。それでも決着はつかず労力を消費し、溝は深まるばかり。私は何とかできないものかと考えていたのです。
そして、ジャパニーズマンガを見ていて閃きました。
『学校を作ろう』と…!!」
うんうんと腕を組み聞いていた和歌は目が点になった。ツッコミ所が多くて処理できない。
「マンガでは、仲の悪かった者達も学校の中で数々の行事をこなし、授業を一緒に受けることで絆ができ、和解する。これぞ、今の天界には必要なことなのです!!!!
しかし!!」
発光体は和歌の手を取り、顔らしきものを近づけてきた。
和歌は眩しさに目を細める。
「悪魔と天使だけでは今までと変わらなくなってしまう、そこで、和歌さん!あなたには闘いの審判と緩和材をやっていただきたいのです!やっていただけますか?!!!!」
あまりの剣幕と眩しさに、話を早く終わらせてほしくて和歌は首を高速で振った。
「ありがとう!和歌さん!!無事に闘争が終わったら君には一つ願いを何でもかなえる約束をしましょう!本当にありがとう!!」
発光体はそれだけ言うとふわっと消えてしまった。
やっとこれで眠れると穏やかな時間を堪能し休んだ和歌が学校に行く準備をして玄関扉をあけると、
灰色と青に二分された空の下にそびえ立つ学校らしき建物と
白のブレザーに青のネクタイに翼のある美少年少女。
黒のブレザーに赤のネクタイをした異形の生き物で溢れていた。
「夢じゃ…なかったんだ…。」
和歌の夢壊れた高校生活が始まった瞬間だった。