25~28 「おと」
25「おと」
毎日、毎日、彼はヘッドフォンを付けている。
「何を聴いているの?」
そう思っても、言おうとしても、
何も訊く事が出来ない私。
眺めているだけの私。
私がいつものように、授業の準備をしていると。
頭に何かを付けられた。
耳に何かが触れる。
耳から音が聴こえてくる。
「それ、俺が好きな曲。」
振り向いたら、彼が微笑んでいた。
26「すれ違い」
仕事が忙しくて、
なかなか会えない。
顔が見たいのに、
声が聴きたいのに。
この関係は、いつまで続くのかな。
この思いは、変わらないままで、いられるのかな。
27「僕にとって」
君は絶望しか知らない僕にとって、
ひらひら舞って、捕まえることの出来ない、蝶のようだ。
君は闇の中にいる僕にとって、
あの夏の、儚く消えてしまう、花火の光のようだ。
君は黒しか分からない僕にとって、
眩しいとさえ思える、木漏れ日のようだ。
君は氷のように冷えきった僕にとって、
優しく暖めてくれる、蝋燭の灯火のようだ。
君は僕にとって、
とても、とても、大切な存在。
28「出会いから別れまで」
君との出会いは、偶然だった。
偶然に、出会った。
出会って、好きになった。
好きになって、一緒にいた。
一緒にいて、すれ違った。
すれ違って、心が冷めた。
心が冷めて、好きでいられなくなった。
好きでいられなくなって、一緒にいられなくなった。
一緒にいられなくなって、別れた。
別れは、必然だ。
必然的に、君と別れた。
恋って、何なんだろう。
本当に、偶然で必然だったのか。
好きって、何なんだろう。
それとも、偶然で必然だったのか。