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ある夏の朝

その日は朝から太陽の照りつける暑い1日だった。

中学2年生になる井川優奈ゆうなは、朝6時すぎに目を覚ました。

学校は1週間前から夏休みで、いつもなら9時すぎまで眠っているのだが今朝は違う。

1ヵ月前に彼氏になった1つ上の高梨慎也と休みに入って初めて会う日なのだ。

優奈が慎也に一目惚れをしたのは、1年の2学期だった。

その日、優奈は親友の千沙と菜月と一緒に、次の授業に備えて早く体育館に行った。

そしてそこでバスケをしている1人の男子生徒に目が釘づけになった。

次々と上手にシュートを決めていき、その度に最高の笑顔を見せる。

その日から優奈はその笑顔のとりこになった。

いつもはのんびり屋サンとか天然ボケなどとからかわれる優奈だったが、この時は必死に慎也に近づこうと努力した。

幸い、慎也はすぐに優奈に心を開いてくれた。

テスト中には勉強を教えてもらい、バレンタインにはチョコを渡した。

決して口数はおおくない慎也だったが、それでも校内で会うと声をかけてくれるまでになった。

そして今から約一ヵ月前、千沙や菜月、それに慎也の友達の協力があって無事、彼氏・彼女の中になったのだ。学年が違うこともあって、なかなか一緒に何かをするという機会には恵まれなかったが、それでも電話やメールなどを使って少しずつ恋を育ててきた。慎也は優奈にとって生まれて初めての彼氏だった。

優奈の通う桜庭中学校は同じ学区内の2つの小学校から生徒が集まっている。優奈の通っていた小学校と慎也の通っていた小学校は電車で10分ぐらいの距離で、同様に家もそれくらい離れている。慎也が優奈の地元で遊びたいといいだしたのは夏休みに入る前の日だった。

もちろん優奈は二つ折りで返事をし、今度は先輩の地元にも行かせてくださいねと約束も取り付けた。

毎晩寝る前にあと何日と指を折り、そして今日に至った。

慎也とは駅近くの公園で9時に待ち合わせをしている。

優奈は悩んだ末にやっと決めた水色のノースリーブのサマーニットにスリットの入った黒のミニスカートをはいて、9時10分前に公園に着いた。

日曜日の公園では親子連れが何組か楽しそうにバドミントンやキャッチボールをしている。

少し踵のある黒のミュールと爪に塗った薄いピンクのペディキュアの色を確認しながら、慎也を待つ。慎也が来たのは9時を少し過ぎたあとだった。黒のTシャツに赤と白のチェックのパーカー、それに少しダボッとしたクラッシュデニムのジーパン。身長172センチの慎也にはそれがとてもよく似合っていた。

「おはよ。ごめん、待った?」

目印の時計台の下に来た慎也がはぁはぁと息をしながら聞く。どうやら走ってきたらしい。額には汗が滲んでいた。優奈は首を振ると

「どこ行きましょうか?」

と聞いた。慎也は

「優奈ちゃんがちっちゃい頃に遊んでた場所。」

と答える。優奈は少し考えてから

「ちょっと歩くんですけど山があるんですよ。そこ、行きましょう。」

といった。

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