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心の花  作者: そら
第5章
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第5章 第10話

「何か意味あるの、あれ?」


リーナは父の傍に控えるルークに、窓の外で繰り広げられる光景に、とりあえずは、と聞いてみた。


「さあ?」


ルークは興味ないとばかりに肩をすくめ、父と仕事の話に入っていった。


窓の外の先の遠く見える草原で広がるのは、揃いの甲冑を陽光にキラキラ反射させ、人馬と徒組の隊が4つに分かれて訓練している、ここ最近このハリウスでみられる光景だった。


綺麗は綺麗だけど・・・、誰か意味ないって教えてあげればいいのに・・・。


うん、私もあえて近づきたくないもの、みんなも同じよね、しょうがないか。


でも、あのキラキラしい浮き具合は、さすがにいらつくわね。


地に足をつけさせる錘が欲しいわ・・・、私には邪魔だわ。


私が部屋を殆どでないせいで、ペットズも自然この部屋に入り浸り状態だ。


椅子に座る私の爪の手入れをしてくれているチルニーを見る。


うん、ダメね、結構チルニーはオーソドックスだから、戦い方も殺し方も、鬼畜だけど・・・。


私に寄りかかり本を読むジュールを見る。


見るだけなら、めっきり筋肉もつき、背も高くなり、こうして憂いを帯びた眼差しで本を読むジュールはどうみても貴公子ばりなのだが、いかんせん彼が好んで読むのは、


「楽に殺せる毒草百科」


「いかに油断させ寝首をかくか・実践編」


「あなたにもできる女に貢がせる方法」


などなど。


ジュールにまかせたら、横道つっきったやり方になるからダメだわ。


続けてルーク、これはマジ半端なくなりそうだから却下。


ナンも・・・あれだけの館を作ったあとだもの、呼び出すのはかわいそう。


けれど草原よりの端にできた館群はさすがナイスだわ、あれだけの突貫工事で、それなのに主館への方角には堀まで作って簡単にこちらにこれなくして、完璧な仕事したんだもの、ないわね。


シーガは、うん、最初から無理、さすが私も鬼じゃないわ。


父がでれば、みんな出てくるし・・・。


と、なると、はあ、ギランか・・・。


床に寝そべってゴロゴロしている、そう、こうして静かにしていれば極上の男に見えるギランを、チルニーが指の爪を磨いているので、足で蹴って呼ぼうとしたのだけど、少したりなかった。


そこで履いてるサンダルをポイッと、「ギラン」と声をかけて放りなげた。


ギランは嬉しそうに、ゴロゴロしていたのが嘘のように、俊敏に飛び上がり私のサンダルをキャッチして、私の元にきた。


私にサンダルを履かせてくれるギランにお願いをした。


「ねえ、草原で彼らは訓練しているみたいだけど、あれじゃつまらないと思うの。」


「ギランの隊で相手してあげて。」


そう言うと、聞こえたようで、話をやめてルークが笑うのが聞こえた。


チルニーは私の爪に息を吹きかけながら、あくどい色気にあふれる笑みを向けてきた。


ジュールは私をみたあと、肩をすくめてみせた。


肝心のギランと言えば、


「何人まで、ね、何人ぐらいならいい?み~んないい?」


と、とても嬉しそうに私に聞く。


「殺しちゃだめ、せっかくナンが作った館が無駄になっちゃうでしょ。」


「でもね、傭兵流っていうの教えてあげなきゃ。」


「下にいるウネウネ達が好きにしろ、って言ったって、まだ新人だしね。今回は殺しちゃダメ。」


え~、そう言ってつまらないと言うギランに、死んじゃうギリギリを見極めるゲームよ、と乗り気にさせ送り出した。


皆の面白がるような視線に、そうよ、私はわがままなの!と目で答え、行きたくないけど、下の階におりる。


降りた途端、触手に抱き上げられ、そのままエロエロ大魔王の膝の上まで運ばれた。


こ、こいつ最近開き直ってる。


それをハジムが、嬉しそうにこちらを好々爺の如く見つめている。


が、我慢よ、リーナ、とりあえず話をするために降りてきたんだもの、ここは膝の上なんかじゃないのよ。


そう、椅子、柔らかいけど、抱きしめるというより、触手でくるまれてるけど・・・、ここは椅子、椅子なのよ。


そう思ってジェイムスを見上げると、そのまま顔中に口づけが降ってきて体がぐるぐる巻きで動けないのをいいことに、顔中べたべたになる。


もう無理、やっぱ会話さえできない人外だわ!声を上げて父さまを呼ぼうとしたら、すかさずむさぼるように舌が入ってきた。


ルークいわく、少しは接触しないと、本性むき出しでくるぞ!と言ってたけど、会いたくないもん、仕方ないじゃない。


階段から降りた途端に、一言もしゃべらないでこれだもの、ぴりっとした痛みを伴うキスマークをあちこちにつけられたリーナが助け出されたのは、10分後だったが、最早気力も何もかも消え去ったリーナだった。


首筋や腕などむきだしになっていた部分は、普通の肌がみえなくなるほどのキスマークの嵐だった。


そして父の機嫌も、ペットズの機嫌も最早これ以上ないくらい最悪な中、ギランの隊が旧ラージスのエリート兵の訓練になだれ込み、群れで行う攻撃の弱さをその体に身を以て教え込んだ。


ラージスから来た兵のうめき声が風に乗って聞こえる中、リーナはジェイムスが父の手により自分から離された時みせた、絶望的な顔を思い浮かべ、何故か自分が後ろめたいような気持ちになるのが不思議だった。


だって、あんな顔、死んでいく人間にだって見たことないもの、ハジムのすがるような顔も。


あの二人が、真っ黒黒な癖にあんな顔するからだわ、なぜかぎゅっと手を握るリーナだった。


グレンはリーナの体をみずからの内に閉じ込め、目をつぶった。


静かな静かなその部屋のドアがバ~ンと開けられ、


「俺いっちば~ん。」


とギランが飛び込んできた。


いつもはあきれる面々も今回ばかりは、重い空気が消えていくのに、ふっと笑みをこぼした。







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