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心の花  作者: そら
第5章
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第5章 第9話

おはようございます。

今日も1日良い日になりますように。

ルークは、はじめあの主従にラージスから従って来た人間たちを、直接それぞれの隊にローテーションを組んで5、60の人数ごとに、お互いを知る必要もあり組み込んでみた。


実力だけはある、訓練所などいく必要がないくらいには・・・。


だが、いかんせん「違う」のだ。


彼らは、良いようにいえば傭兵流の、一般的にいえば適当な好きな時に起きて、食べ、遊び、時々は訓練?、まあこれは隊ごとのケンカだったり、隊対隊のケンカだったりが殆どだが、まずそれができなかった。


俺も起きた時、部屋の外に、びしっと並んで待っていられた時は思わず天井を見上げて先が思いやられた。


別にその姿勢が悪いとは言わないが、ある意味こいつらは、肝心の時つかえないかもしれない、と危惧を覚えた。


傭兵は基本、個で考え動く。


それに戦略がついてくる、俺たちのニルガは誰が何を言わずとも、一人でもやれるような人間ばかりだ。


自然、自分で鍛錬を怠らないし、それができぬ者は、そもそもこのニルガにはいない。


こいつらは確かに腕はいい、頭もきれる。


しかし、群れで動き群れで考え、群れで死ぬものだと思っている。


この間の会議で、あいつらのつかえる場所は限られるかもな、と俺がいうとナンが何やら黒い笑みを浮かべ、シーガは誰がだいの大人を甘やかすか!と、犬猿の仲になりつつあるハジムをにらみつけていた。


それを聞いたハジムは堂々とグレン様に向かって、


「使えぬものは、どうぞご自由に処分くださいませ。」


と頭を慇懃に下げ、にらみつけるシーガに、


「しつけの行き届いた血統のものばかりなものでして。ですが・・・使えるものばかりであると自負しております。」


そう言って口調だけは丁寧だが、目はシーガをとことん馬鹿にしていた。


入ってすぐシーガの隊の何人かと、新参のラージス兵とのいさかいがあり、まあシーガのとこのが、ちょっかいをかけたらしいが、シーガの方の奴らがこてんぱんにされた事があった。


それを暗に示すハジムに俺たちは、こいつもまだ甘い、と腹で笑った。


シーガの隊は確かに剣やこぶしでは、俺たちの隊には劣る。


だが本来の武器である爆薬を持たせれば、風や地理、建物いろいろな条件を一人一人が的確に判断し、俺たちの誰よりも軽やかに動き、殺していく。


俺が危惧するのは、ハジムの言う、まさしくその行儀の良いしつけのなされたあいつらが、俺たちの実戦とは色が違いすぎるという事だ。


あいつらは、まともすぎる。


まとも、という事はニルガに限っていえば褒め言葉ではない。


早く死ぬということでもある。


うちの人間は、話を聞くなんて芸当はできず、捕虜になりそうな金づるもすぐ殺してしまう。


まあ、そこをこいつらで調整して捕虜をとれるようになればいいか、そうプラスに考える事にした。


だが、午後も遅く起きて、飯でもとろうかと降りてきて、目の前の光景を見て、げんなりした。


くるっと踵を返して、食堂を出ようとするルークに、すかさず新参の兵たちが立ち上がり、それもそれぞれがリーダー格のものたちばかりだが、優雅に礼をしてくる。


彼らにしてみればラージス帝国を切り回していたルークは扱いが違うらしく、当たり前のように恭しく接してくる。


それにジェイムスが、


「ちょうど皆でお茶を楽しんでいた所です、ルーク殿もいかがですか?」


と声をかけてくる。


ごにょごにょと自分でもわけのわからぬ事を言って腰がひけたまま逃げ出してきた。


皆、同じように起きだしてきた頃合いだろう、どこに逃げた?


ギランの部屋を勝手に開けて入ると、ナンやシーガなども床に直接座りながら、すでに食事という酒盛りをしていた。


食いもんと酒はここにはたらふくあるので、自分も遠慮なく勝手に取り出し仲間に入る。


「見たか?」


「見た・・・」


目を3人合わせてどんよりする。


あの傷だらけの血の跡も生々しい、ほとんどギランの作ったものだが、その幹部達も共に住む主舎の食堂が、同じものだとは思えない雰囲気に覆われていた。


ピラピラひらひらした高価そうなシャツとパンツ、その手にする繊細な茶器を持ち、そこだけ何かキラキラとライトをあてているかのようなあの空気。


ため息をついて、すきっ腹に酒をあおる。


「誰だ、あの男を新しい隊長に昨日任命したのは。」


そう言うシーガにナンがルークを目で指す。


ルークは、ナンに


「あいつらだけの館を至急調達しろ。頼むから。」


そう、しみじみ遠い目をして言った。


「まだここに移って1日目だぞ・・・。他の館に逃げ込むか?」


そうナンがため息をつきながら言う。


こちらが聞きたい事を先回りして教えてくれた。


「グレン様とリーナは、部屋にこもったままだ。」


それを聞いて安堵した。


しかし何とか希望を探す二人を見て、ルークはすまなそうにいった。


「他の館にも、あれのミニチュアが均等にいる・・・。」


「「・・・・・・。」」


俺たちの平安は、ひとえにナンがどれだけ早くあいつら専用の館を用意できるかにかかっている。


俺はナンの肩をたたいて、シーガはナンにギラン秘蔵の酒を注ぐ。


どうりでこの所、部下の傭兵の顔色が悪いはずだ、3人はあいつらをまじかで見ていた部下たちの不憫さに、うまい酒でもふるまってやろうと思った。


ちょうどギランのうまい酒がこんなに隠しこんでるのもわかったことだしな、とナンが黒く笑った。


そこにバーン!という勢いでドアをあけ、部屋の主であるギランが部屋に戻ってきた。


「どこにいってた?邪魔してるぞ。」


と声をかけた面々は、思わず腰の刀に手をやって、目を据わらせた。


ギランもまた、ピラピラヒラヒラを着ていた、それも食堂連中より、もっとピラピラがついているシャツというおまけつきだ。


「なんでみんないるのお~?ま、いいか!どお~、テヘっ、今リーナにみせてきたんだあ~。」


「でもねえ、ボスはそっぽ向くし、リーナはみんなのとこ行って褒めてもらえってさあ。ちょうどよかった。」


「どお、似合う?似合う?」


そう言うギランに、皆は部屋を力づくで追い出すことで答えた。






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