第4章 第19話
・・・連休中には、この章終わるはず・・・です。
いつもありがとうございます。
ハジムはそれはそれは機嫌よく、その肩からの触手を気持ちよさげに、風にそよそよとなびかせていた。
それを見て、何で俺がこのくそ忙しい中、こいつの相手をしなきゃいけねーんだと、本日何度目かになるため息と、こいつの主人である帝王ジェイムスを傭兵流ににらみつけた。
はあ、知ってるさ!全然毛ほども感じちゃいねえ・・・。
少なくとも、これでも重要な隊をまかされている俺のにらみを、スルーする奴は・・・いたな、こいつらと、こいつの部屋にいりびたる駄犬が・・・!
穏やかなテラスからの風に、俺も風に乗ってこんなとこから、とんずらしてえ、切実にナンは思った。
「ええ、それでですね、ぜひともナン殿のご協力をお願いしたいんですよ。ええ、ぜひとも。」
こ、こいつ繰り返しやがった、こちとらが断れねえの知っていやがる癖に・・・。
また、思わず心底にらみつけてやったが、はあっ、相変わらずの反応にまた風に乗って飛んでいきたいと思うナンだった。
慌ただしくラージス帝国に一度帰ったハジムは、また急ぎこのケルダスに帰ってきた。
もはやこの国の王宮は、カールとこのラージス帝王ジェイムスと、どちらが主かわからないありさまだ。
「そうか、さすが我がラージス帝国はそんなに短い間では食い尽くせそうもないか?」
そうジェイムスがハジムを見て行った。
「はい、このまま全力で子飼い全てで事に当たっても最低5年はかかりそうです。」
「ほう、この私に5年もあの玉座に座らせる気か?」
そうハジムを見るジェイムスの怒りを押し殺す様子に、
「まさか、あなたが二番煎じをしたいからと言ってるのに、この私が、ましてお茶系統は私の得意とするところ、今もしっかり私の子飼いがラージスを食い尽くそうと、ガジガジせっせとかじり始めていますよ。」
でね、とハジムがジェイムスを黒い笑み満開でちらっとみる。
「おいおい、最近厚い化けの皮が簡単にはげてるぞ。」
そう言いこちらも、負けず劣らずの笑みを浮かべた。
「それでですね、ここはてっとり早く、害虫中のこれぞ、害虫!の皆様に、ガジガジやってもらおうかと・・・。」
「ほお、ガジガジか。」
「はい、ガジガジと。」
「さすが私や子飼いとはいえ、品は隠せるものではありませんのでね、つい食べ方も上品さを抜け出せないものですからね。」
「それで、本職の方々に食い尽くして頂きたいと思いまして。」
「さもあらん、我々では、な。」
そう二人優雅な微笑みを浮かべ、綺麗に皮をかぶっていることをお互い確認し、目を見交わした。
これが後日ナンを呼び出したいきさつだった。
ナンは改めて言った。
「ありえねえ、おめえさん、仮にも由緒正しい帝王様だろ!あんたもだ!大貴族の癖に、俺らならずものを脅しやがって、しめえにはてめえらの国に同行して、財源食いつぶせだあ!ありえねえ!ほんと、ありえねえ!」
「それも、いつのまにやら、いろいろやばいもの手に入れやがって、それで脅すたあ、・・・俺か?俺が悪いのかあ?」
髪をかきむしって目を血ばしらせながら、あきらめてナンは手を出した。
それにハジムはラージス帝国の財源やら宝物やらの、急ぎ作成したリストを渡す。
「人聞きの悪い、私はあのケルダス前王のために皆さまが一生懸命なさった事を、それ以上の規模でぜひ我がジェイムス様の為にもお願いできませんか?と、こうやってお頼みしているのですよ。」
そう言って、さも驚いたとのような顔をした。
「ふん、やめた、やめた。おめえの肩から生えるそれは、やる気満々にこちとら脅してるぜ!まったく厄介な人間が、また厄介なもの体に生やしやがって!」
しばらくナンは静かにその書類をめくりはじめ、さすが仕事モードに入ったナンは冷静に分析しはじめた。
ひと段落すると、やがてぽつりと言った。
「あの、うさころといい、お前らといい、とんでもないのが、うちにくるなあ。・・・元王様に元帝王様だぞ。おい・・・冗談はやめてくれよなあ。」
肩を落とすナンに、王族としての最高の笑みを浮かべたジェイムスだが、なおさら顔を真っ青にするナンに、
「失礼な!」
と言った。
それにハジムが、
「ガジガジですから。」
と答えた。
「ま、ガジガジだしな。」
ガジガジ?そう言うジェイムスたちを不思議そうにナンは見た。
後で害虫扱いされた事を知ったナンが特化隊隊長のシーガと共に、この王宮の一室を爆破するのは、この2日後の事になる。




