第5話
週1くらいのペースが基本で更新していきます。
ギランが、扉を勢いよく開け放ち、中に足を踏み入れると、神官達は一斉にこちらをみた。
神官候補生達を守るように、神官達は扉に向かって、最前列に集まっていた。
ギランが、「お待たせ~。」と軽く手を挙げると、神官たちは、その軽い口調と、その後ろに控える大柄な血にまみれた男達との、ギャップに一瞬戸惑い、もう一度気を取り直したかのように、侵入者達を睨み据えた。
その中を、ファイス神官長が、静かに前に出て、
「私が、このラクゼ地方神殿を預かるファイスです。」
「ご覧の通り、我々は抵抗いたしません。このような暴挙の訳も問いません。」
「候補生だけでも、このまま、ここから出して・・・っ!。」
そうファイスが、言いいかけた途中で、ギランは、ナイフで、その喉を掻き切った。
それと同時に、
「さあ、みんな、おやつに間に合わなかったら、わかってるよね!すぐ終わりにしてよ~。」
と声をかけ、神官達へと、その足を速めた。
ファイスが崩れた姿をみて、斃れたファイスにかけよろうするものや、
「なんてことを!ヤーナよ!!」
「街の者達は何をしている!」
「子供たちを逃がせ!」
「我らが何をしたというのだ!」
などと、大声で叫びだすものもいたが、そこからは、すぐに違う叫びへと、聞くに堪えない断末魔の叫び声へとかわっていった。
反対に、候補生の子供達は、目の前の惨劇が、あまりの衝撃で、ただ立っていたり、年の近い者達で、抱き合って震えていたり、やがて、鋭い刀で自らの命を落とすまで、泣くすべさえ忘れてしまったように静かに逝った。
わずかな時間で事をなし終えて、最後に祭祀場の扉を閉めるさい、ギランは、そのおびただしい死体をみて、肩をすくめた。
「ほんと、神さまと生きるなんて言って言ってるだけあって、ちっ~とも、手ごたえないよねえ。」
「人間と生きなきゃだね!ひとさまを馬鹿にしちゃいけませんって、誰か教えてあげりゃあいいのに」
「あっ、でも、そんときは、また俺が殺したげるね~。」
などと、ぶつぶつ呟いていたが、
「うわっ!シーガちゃ~ん、俺まだいるよ!それ投げる気?それ投げる気満々だよね!」
「ダメでしょ、ここは爆破いらんでしょ!いらないよねえ!」
「ちょ、ちょ!!死ぬから、俺死ぬから、どわっ~・・・。」
大急ぎで壁を蹴り、反動で大きく飛び退り植え込みに体を丸め、そのまま頭を抱えるギランの耳に、任務の終了を告げる大きな爆音が響いた。