第4話
週末は茨城県のひたち海浜公園で、ほうき草の紅葉をみてきました。
常磐道はすいてて、ラッキーでした。
祭祀場では、主神ヤーン像に向かって神官長が祈りを捧げ、他の神官、6歳から18歳までの神官候補生が、それを復唱して、時に備えていた。
200名近くいる祭祀場は、その人数を感じさせないほど、静謐な空気に満たされていた。
このラクゼ神殿のファイス神官長は、着任して、わずか4か月しかたってないが、その人となりは、神官らしい神官で質素を旨とし、主神ヤーンの慈愛を、おもねく、この地域にと願い、前任の神官長のもとで、横行していた賄賂や、神官候補生たちの間で暗黙のうちに伝統的に行われていたヤーンの導きといわれた、いわゆる上から下の子らに行われるいじめも、即座に禁止された。
また、自警団には、神殿内の雑用や、農園の管理を命じ、彼らは戸惑いながらも、その仕事につきはじめていた。
はじめは様子を伺っていた神官や候補生たちは、やがて、それを喜びを持って受け入れ始めていた。
もともとの信仰ゆえ、神官としての現実との迷いをみな、大人も子供も大なり小なり抱えていたのだ。
ファイス神官長のもと、心からの感謝を主神ヤーナに彼らは捧げた。
賄賂を受け取っていたもの、いじめを率先していたもの、そんな彼らは、急な現状の変化とともに、つきものが落ちたように、顔を暗くしていった。
ある夕べの祈りの折に、神官長が皆に語りかける形で、
「私たちは、とても弱い。幼い心のうちは、簡単に何も考えなくても、当たり前のように、 他者を助 けることさえもできました。」
「しかし、心が育つにつれ、おそれというものを知る。心だけではなく、また、知恵を持てば持つほど
、その、おそれの範囲が広がるものです。」
「心あるものほど、知恵のあるものほど、惑い、苦しみ、自分の生きる一歩が、とても辛いもので す。」
「ですから、一度すべて主神ヤーナにお預けしましょう。自分が自分であったと信じるものを全て。」
「そして、これだけは、自分の中からは譲れない、それだけを持って、共に歩いていきましょう。」
「一人が倒れれば、二人で、二人で足りなければ三人で。それでもダメなときは、主神ヤーンがおわします。我々全員がもたれかかっても、ヤーンは笑って受け止めてくださいますでしょう。」
「みなで、ゆっくり、歩んでいけるように、本日の祈りを捧げましょう。」
そういってファイス神官長が笑ったとき、確かに、この地方神殿は生まれ変わった。