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心の花  作者: そら
第3章
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第3章 第1話

ルークさん、登場。

ルークは、ラージス帝国の誇る地方軍と、本格的な戦闘に入っていた。


今まで何年も奇襲作戦ばかりで、ラージス帝国とやりあってきた。


実際これまでニルガ傭兵団に持ち込まれる仕事の多くが、それぞれの隊の1つ、2つで足りるものばかりであったので、効率的に、それを行うため、それぞれの拠点地域に持ち込まれるものは、そこにいるもので処理する体制をとっていた。


その延長のような戦術を対ラージス帝国と行ってきた。


ラージス帝国の預かり知らぬ事ではあるが、ニルガ傭兵団は、リーナが生まれるとわかってから、傭兵団あげて、子育て期間に入っていた。


それまで国同士の戦争にも傭兵団丸ごとで介入したものだが、リーナが生まれることで、のんびり何でも屋にと方針をかえた。


何せ、みな次代のリーダーの傍から離れる気がなかったから。


ニルガ傭兵団は、生い立ちそのものが特殊であった。


もともと3代前までは、今では滅んだ小国の近衛軍であった。


その軍を指揮していた男が、軍を丸ごと傭兵団と化して、今に至るという特殊さがある。


実際、各隊の隊長の殆どが、世襲している。


もちろん、甘い組織ではない。


世襲といえど、実力のないものは、子供でさえ、ここでは生き残れない。


この自分にも、父には他に5人の子供がいたが、10歳になるのを合図に熾烈な後継争いに参加し、こうして生き残って、このニルガ傭兵団の第1の部隊の隊長の座を勝ち取った。


生粋に傭兵団生まれの者は、団長への忠誠と、それ以外は殺すことで生きてきたといっていい。


あのギランでさえ、子供の頃は何度も生死の境をいったりきたりしていた。


ギランは、双子の片割れを己のへその尾でくびり殺して生まれてきた。


それをみたギランの父親は大層喜んだというのは有名な話しで、母親は、そんな我が子を気味悪がり抱こうともしなかったし、他の異母兄弟たちは、10歳になるのを待とうとはせず、殺そうとした。


それを3歳になるかならぬかで、最初の兄弟殺しをしてのけたギランも相当なものだ。


まあ、あいつはいい。


いつかは俺の前から消えるはずだ。


いや、俺が消してやる。


なぜあいつを自分が思い出しているかといえば、現在進行形で、戦闘中だからだ。


最初の大規模戦闘ということで、遊撃隊でさえ、この戦闘に参加しているのに、肝心のその隊の隊長であるギランがここにはいない。


「絶対ヤダ!」


「絶対ムリ!」


そう言ってあの馬鹿は、リーナの傍から、少しも離れようとはせず、グレンがしばらく放っとけ、といったのもあり、ここにはいない。


今回はあいつの出番で、俺が今頃リーナの傍にいるはずだった。


そう、すっかり少女めいたリーナと今頃お茶を楽しんで、このリーナがいなかった空白のむなしい時間の隙間を埋めるはずだった。


それを、あの馬鹿が!


ルークは自分の目が据わるのを感じ、後ろの部下たちが自分を腫れ物のように遠目でうかがっているのに、声をかけた。


「さあ、俺の八つ当たりにつきあってもらうぞ!」


そう大声をだし、目の前に広がるラージス帝国三軍3000に向かって、鬨の声をあげた。


特化の数十の爆薬がその声に答え、自らも大刀を持って馬で切り込んでいく。


中央を特化と遊撃隊率いる300、崩れる右翼からルーク隊率いる500の精鋭。


それを覆うように残りの1000。


数では不利なはずのニルガ傭兵団だが、一騎当千の猛者ばかりな上に、たくさんの命をくれという、かわいいかわいいリーナのおねだりに、皆が皆燃え上がっている状態の今、狂える自分たちのテンションに、お貴族中心の正規軍では相手にならなかった。


血を、血を!いくつものそれを求めて、初めてのラージス帝国との、大規模な戦闘はニルガ傭兵団による圧倒的な勝利で終わりつつあった。


「ルーク隊長!」


声をかけるそれに目をやれば、ラージス地方軍第3隊の隊旗をもった5名ほどの男が、白旗をもってこちらに静かに向かってくるのが見えた。


それをみたルークは静かなそれでいて凄惨な笑みをその顔に乗せ、軍にのっとった投降をしようというラージス軍に向かって、


「皆殺しだ!」


そう指示をだし、かたわらのシーガ隊の男から爆薬を受け取り、それを投げて答えとした。


たった1日で終わりそうな戦闘に、ルークは帰りに何をリーナに買っていこうか、と真剣に悩みだし、それでも5日はかかる帰途を思い、改めてギランへの怒りに震えた。






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