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心の花  作者: そら
第2章
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第2賞 第13話

第2章いよいよ終わる気配です。

再会手前までです。

ランナの街は、この日息をひそめていた。


続々と馬に乗る集団が、みるからに武装して、この大きい街の辻のあちこちから現れては問答無用でかけぬけていく。


比較的大きな街であるランナの住人でさえ、砂煙をあげ走り去る、いかにもな雰囲気の男達の、この人馬の数はみたこともないし、昔のケルパラとの独立戦争を経験した食料品店のご隠居でさえ、度肝をぬかれて、それをみていた。


はじめの幾つかの集団が馬で通り過ぎた時は、なんだろな?という感じでみていた、街の人間達は、それが、続々と続くうち、その鬼気迫る集団たちに、いつしか言葉もでず、皆家の中や店の中に避難し、勇気あるものが好奇心で窓からそっと眺め、殆どのものは家の奥で皆で体をよせあい、何がおこるのかおびえていた。


この日、ランナの街は、1日中活動が停止していた。





続々各拠点から集まるニルガ傭兵団に、食事から馬の世話、仮眠所や野営地までの案内、その他こまごました作業をしたり、指示するナンの隊は、目の回る忙しさだったが、皆表情はあかるかった。


そして、隊長のナンに、夕刻までには、六割の団員が揃い、明日早朝の出発に問題はないことを報告した。


そのナンは、一番の関心ごとである、ラージス帝国軍の動きに注意を払い、慎重に慎重を重ね、リーナ合流のタイミングを計っていた。


ケルダスが極秘で、リーナ探索を始めたといっても、大国ラージスの目には自分たち同様入らないわけがないと確信する。


なぜ動きがないか?あの食えない宰相は何を考えている。


まあいい、例えラージス軍が今から動いたとしても、バンナ村までの利はこちらにある。


今動いてない、それで充分だ。


リーナ合流後は、これまでとは違う真のニルガ傭兵団の姿をみせてやろう、そう思いながらグレンの元に報告に向かった。






朝もやのなか、野営のテントも払い、拠点近くの草原に大集結した傭兵団は、それぞれの馬にまたがり、隊もちの部隊と団長であるグレンを待っていた。


やがて館からあらわれた隊もちが、その前に整列し、最後にルークと共に、団長のグレンがやってきた。


「いくぞ!」

そう一声かけると、真っ先に飛び出し、すぐにルークの隊が続き、みなも一斉にかけだす。


通りという通りを覆い尽くして、かけぬける人馬の通る轟音に、昨日から不安に過ごす街の人間を更に震えあがらせた。


その一本の道のようになる流れが、ある一か所から一か所で、なぜか距離があく。


みな意識してそうなったわけではないが、ギランの隊の前後だけ奇妙な空間が空いてしまう。


それを叱責され、一つの流れにもどそうとするのだが、誰も積極的に動こうとしないので、こうなってしまう。


ギランいわく・・・「狭いの嫌い。」

だそうで、それを知っている他の隊員は無意識に距離をとってしまうので、ナンもそれはあきらめて、今にいたる。


途中の町や村に、先触れで警戒にあたっていた集団も、その町や村で待ち構え、休憩や食事の世話をし、それが終わるや自分たちもそのまま合流していった。


数を増やしながら駆け抜けるニルガ傭兵団に疲れはみえず、その日の野営地では、軽く前祝いの酒もふるわられた。


見渡す限りの野営地で限りなくみえる焚き木の炎を眺めながら、ルークとグレンもまた、酒を酌み交わせていた。


あの九歳で別れたリーナの姿を思い浮かべながら、酒の味を数年ぶりで感じながら。


別の一角であがる悲鳴に、ルークは軽く眉をよせながら、なにを騒いでいるかとみてみると、ギランの隊なので、あそこは、と、考えるだけ無駄なので無視して、再びうまい酒を堪能した。


こうしてニルガは総員そろって、リーナの待つサナ辺境へとやってきた。


もうじき夕日も上がるころ、バンナの村についた一行は、ここでリーナが暮らした4年を思い、一度グレンと隊長組は馬を下り、リーナの住んだ家に上がった。


こじんまりとした家で、報告にあった2階のリーナの部屋に一人上がったグレンは、一人愛しい娘の気配の残りにうたれ、思わず胸がいっぱいになり動けなくなった。


窓辺により、そばの壁につく落書きに、思わず頬ずりし、目をつぶると、しばらくして下におり、一刻も早く出発すべく表にでた。


各家々に火をつけまわったナンの部隊が戻り、村長の家においてあった傭兵団への感謝の手紙を読み上げ、ろうそくのとけた残りをグレンに献上した。


グレンはそれを握りしめ、馬に鞭をいれ、隣の町で待つというリーナのもとにかけだした。


早く早く、一刻でも早く!


全員馬に鞭をいれ、柔らかい草原の草を馬の足で引きちぎり、大きな砂煙をあげ、小高い丘をめざして、一体となって傭兵団はかけぬけていく。


昨晩のろうそくの灯りは、野営地のあのかがり火のように、それはそれは幻想的で美しかったろうと思いながら。



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