表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の花  作者: そら
第2章
28/78

第2章 第11話

続きです。

チルニーは愛しい少女との戯れの時間を、大事に大事に味わっていた。


時々、あっちにいけとばかりに、軽く蹴られてわずかながら離されるが、自分にそれで、意識を向けてくれているのがわかり、また至福の思いにとらわれる、という事を繰り返していた。


自分の後ろに、おかしな気配がし、リーナが自分をけるたびに、それが強くなるのを感じるが、チルニーは、ちっとも気にしていなかった。


自分が、学舎の庭で一仕事をしていた時、最初の兵士を切り捨てた時に、一瞬あふれ、そして消えた気配だった。


その気配が自分の邪魔さえしなければ、いつまでそこにいようとかまわなかった。


これほど澄み切って、全てを取り払った自分は、不思議なことに騎士団にいたあの時より、誰にも負ける気はしなかった。


ここに尊敬する団長や長年の友人、剣の師匠、自分の身内がきたとしても、今の自分なら一刀の元に殺せると思う。


そのくらい全て取り払って、綺麗に狂える自分に、綺麗に殺せる自分に喜びのみを持った。


あの背後の気配が、並の人間ではないことはわかっているが、今の自分の相手ではないだろう。


そのくらい、今の自分は鋭敏で峻烈だと、うぬぼれでもなく確信していた。


それが人としての境界を超えることで、愛しい少女と離れないための手段の一つになれればいいと思う。


リーナが学舎でみせた反応は、たずね人の少女であるならば、不思議でもなんでもなく、わざわざ自分で自傷して、辻褄をあわせるなど全然必要のないことだった。


もし、彼女のために必要なら、この町の全てを破壊しようと、リーナをニコニコみつめながら思う。






リーナは、弁当を食べ終わると、綺麗に片づけて、ドアの方をみた。


ドアにもたれて手を組みながらこちらをみるジルスは、みるからに不機嫌そうだった。


「おなかでもすいてるの?」


そう声をかけると、ジルスは肩をすくめ、自分を通り越してジルスをみるリーナに、しゅんと眉を下げ、自分も後ろをみて、若い、その長髪をひもでくくって、こちらをみている男をにらんだ。


ジルスもにらんでくるチルニーに、再び剣呑な眼差しを送り、手にもつ刀に力をいれた。


チルニーも脇においた自分の刀に手をかけ、


「大刀ですか?いいでしょう。その大きさを選んだ自分の愚かさを、ご自身の体で教えてさしあげます。」


そういうやいなや、今まで座っていたと思えない身軽さで、ドアの方に向かってかけだしていく。


その速さのまま、あっというまに居合いを切り、その常人離れしたスピードで切りかかっていく。


上へ下へと縦横無尽に繰り出される刀は、そのスピードを、より、あげながらジルスを正確においつめていく。


狭い教室のなかから、廊下に飛び出すことによって、ジルスは体勢を整えた。


ジルスは初めの数太刀こそ、鞘を半分ほどしか抜けずに、その鞘で剣戟を受けたが、大刀の自分の苦手とする素早い攻撃に対して徐々に合わせはじめ、大刀を扱っているとは思えない身軽さで、反撃しだした。


カンカンという互いに合わせる剣の音がまだんなく続き、息遣いでさえもシンクロしはじめたかと錯覚しはじめる頃、


「いくわ。」


そういって、二人の横を綺麗に駆け抜け、通り過ぎようとするリーナに、二人は同時に


「「一緒にいく!」」と叫び、お互い目をあわせるのに、リーナがくすくす笑い、


「おいで!わんちゃん。」


そういって後ろ手に手をひらひらさせた。


「さあ、二人とも、遊んでないで!」


と声をかけ玄関に向かった。


二人はまたも目を合わせ、お互いの刀をしまうと、


「俺は正式な任務だ!邪魔だ、どけ。」


と駆け出すのを、同じく駆け出しながら、


「ふん、団の活動のいきっぱぐれが何をいうかと思ったら、やれやれです。」


そういい、また一触即発の雰囲気になるが、リーナの大きな笑い声に、二人はまなじりを下げ、今は一刻も早く、隣の男よりリーナの元に赴くべく、その足を速めた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://ncode.syosetu.com/n4154o/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ