第2章 第8話
読んでくださる方に、とても感謝しています。
今日はもう一度更新しようと思います。
リーナは人けのない学舎に入ると、自分の教室の窓辺の棚に腰をおろし、足をぷらぷらさせながら、教室のそれぞれの机を眺めた。
机にあるいたずら書きに目を細めていると、チルニー先生が教室に入ってきた。
「玄関に年少組のケリー先生」
「階段の途中には年中組のボイド先生」
「それに廊下ね」
そういいながら、リーナはチルニー先生をみた。
リーナをみて、蕩けるような笑みを浮かべ、ちか寄ろうとしたとき、窓から学舎にこようとする、3人の男の姿がみられた。
チルニーは何もいわず踵をかえすと、そのまま玄関へと向かった。
「おはようございます。ご面倒をおかけして・・・」
そういいながら玄関で声をかけた男たちは、ドアをあけた、昨日紹介をうけた学舎の教師に笑顔で挨拶をしようとして、玄関の入り口にうつぶせで倒れている小柄な女性の姿をみて、思わず硬直した。
チルニーは、
「お仕事ご苦労さまです。」
「おやおや、ドアを開けるのに、ちょっとぶつかって邪魔でしたね。」
そういいながら、本当に申し訳なさそうに男たちをみた。
男たちは、近くの村の基点から、昨日の午後この町にやってきた調査団だった。
昨日は、町の代表家に挨拶し、そのまま学舎にきて、ここの職員を紹介された。
昼は学舎で、祭りでもあるというので、接待を受け、仕事は明日からということで、この地方の祭りを心いくまで楽しませてもらった。
今日は朝からチームを2~3人で分け、総勢3チームで動いていた。
省所管で働く同僚の一人のチームは、昨日そのまま学舎に残り、聞き込みと書類の点検をここでしていたはずだ。
もう一つのチームは町で聞き込みを続けているが、自分たちより一足先に戻っているはずだ。
一度ここに戻って情報の確認を全員でするはずだった。
そう、いつも通りのかわりばえしない仕事が続くはずだった。
辺境警備隊の二人の男が、すぐに気を取り直し、自分を後ろにどけると、腰の刀に手をかけ、今きた学舎の庭にあとずさって、間合いをとった。
それをみて、チルニーはふっと笑うと、別人のような鋭い目つきで、後ろ手に持っていた抜き身の刀を、とりだした。
たん、と足をならしてチルニーが駆け出した瞬間、若い二十歳そこそこの兵士の胴が薙ぎ払われ、それを助けようとしたベテランの兵士も、一撃、二激、そして三激めには、その刀を衝撃で取り落とされ、袈裟がけに一刀のもとに倒された。
腰をぬかす自分をみながら、学舎の教師は、血をその顔に浴び、ニイッと笑い、近づいてきた。