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心の花  作者: そら
第2章
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第2章 第7話

今日も更新できそうです。

今日は、町の中も、さすがに昨日までの華やかさはなく、露店などは昨夜のうちに撤収しているので、風に飛ばされる、その名残のごみくずが散乱しているだけだった。


男手などは天幕の片付けなどに精をだし、夕刻に行われる祈りのために、ここから2時間ほどかけて、地方神殿のある大きな町までいかなければならないため、昼までに終わらせるよう総出で片付けていた。


昼になればここは、一気にゴーストタウンと化す。


リーナは町の入口に佇み、そっと周りを見渡した。


なかなか足を踏み出さないリーナに、ハンナが何かいいかけるが、ウォーカーがそれを手で制した。


リーナは、一度村の方角に目をやって、伏し目がちに、何事かを呟いたが、それはあまりにかすかな声だったので、風にさえぎられて、まわりの者には聞こえなかった。


やがて、しっかりと前をみすえると、町の中に入っていった。


入口でハンナたちといったん別れ、一人学舎に向かう道すがら、リーナの耳には風の音に混じってアンナ達の笑い声がまた聞こえてきた。


はじめてだ、これほど何かに引きずられるのは。


この感情が何かは知らない、けれど、私はこれが皆がいう「悪い事」だと思わない。


10才の記念にみなで埋めた、あの箱は帰りに絶対取りに行こう、サナの森の木に毎年しるしをした、皆の名前と、その横に書いた背の高さのしるしは、まだ今年はやってなかった、なぜ今年は遅れたんだっけ?


ああ、そうだ、ゾーイさんとこに赤ちゃんが生まれるので、みんなやきもきして遅くなったんだ。


いつもゾーイさんのとこは私たち子供を大事にしてくれるから、やっと生まれるその子が元気に生まれるのを願かけして、その時一番の楽しみをとっておいたんだっけ。


それと、それと・・・。






昨夜は外で何がおこるか知ってはいた。


しかし、時間がたてばたつほど、ひどい喪失感と悲しみがリーナを襲った。


人の死ぬのは見慣れていたし、幼い時からそれこそ飽きるほどみてきた。


やっとできた友達を殺されるのは、自分が約束を破ったせいだったから、悲しみより先に唇をかみしめて、2度と、2度とと、決意して心を固めてきた。


それと今回がどう違うのかは13のリーナにはわからなかった。


ナンが考えた万一のリーナの避難場所、あそこにリーナがいかなければならなかった、その原因。


大好きな父と、ルーク達、あのギランの何かいたずらを考えているような目を思い浮かべた。


私から彼らを遠ざけた原因。


それは何?


それに思いいたったリーナは父譲りのその瞳に、深い憎悪を湛え、本当に心からはじめて、ラージス帝国に、その目を向けた。


そう、私はただの甘やかされた子供だわ。


けれど、そう、けれど。


この子供には、わがままをかなえる力があるわ。


たくさんのダダをこねても、喜んでかなえてくれる強い男たちがいる。


たくさんのおねだりをしよう、たくさんの、たくさんの。


一つの命、二つの命、いくつも命をおねだりしよう。


あのろうそくの灯りよりもっともっとたくさん。


ああ、早く早く!


にっこり笑うとリーナは学舎への道を軽やかに急いだ。












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