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心の花  作者: そら
第2章
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第2章 第3話

PVアクセス8888記念での続けて更新です。

傭兵団視点です。

グレンは燃え上がり、断末魔をあげるラージス帝国の兵士たちの声を、心地よく聞いていた。


隣にいるルークも、珍しく口を開いた。


「本当にいい声で哭いてますね。そこらへんの女の声をきくより、くる。」


そういいながら、その背の大剣をかかえ、逃げ惑う混乱の只中に躍り出ていく。


そうだ!もっと、もっとだ、もっと哭け!


お前達が哭けば哭くほど、かわいい、愛しい、私の全てといっていいリーナが、この腕に戻る日が近くなる。


もう4年近く会ってない。


ごはんはどうやって食べているのだろう?いつも自分か誰かが食べさせていた。


夜寝るときはどうしているのだろう?いつも自分か誰かが添い寝していた。


どうしてる、どうしてると考えれば考えるほど、心配をすればするほど、グレンの頭の中は煮えたぎって、目の前が真っ赤になり、やがてそれは蓄積され、凍えた炎になる。


そして、自分もまた、哭き声をあげさせるために、戦闘の真っただ中に飛び出していく。


グレンの周囲にいる敵は、ことごとく葬り去られ、血と肉をまき散らしたそこは戦いの場であっても、異質なほどに、より破壊にまみれていた。


ゆえに、敵からは死神グレン、魔人グレンと呼ばれ、恐れられていた。


ルークもしかり、ギランもしかり、傭兵団の男たちは、ひたすら殺し続け、更に殺し続けた。


参謀のナンは、殺せる方法を考え、より殺せる方法を考えた。


特化の連中は、ラージスに潜り込んでは、無差別に兵士詰め所や砦などを爆破続けた。


もっと血を、もっと兵士の屍を!


それを合言葉に、機動性をいかし小規模なグループで、ある時は集団でラージス帝国を襲い、万の軍に数千の男達は戦い続けた。


その先に愛しいあの子につながるから、と。





ギランは、その赤銅色の髪を手でつかむと、


「ちょっと伸びすぎだなあ~。」と一言いい、目の前で震える男をみた。


目の前の男は、ケルダス領のラージスとの国境沿いの小さな町アケネの町の代表家の長で、ダムという男の下男をしていた。


随分と昔にグレン一行が、このダムの家に2~3日逗留したことがあった。


幼いリーナが足を痛め、大事をとったグレンが滞在したのだ。


長のダムの脳裏には傭兵団のリーダーと、その傭兵達の幼い娘への溺愛ぶりが鮮烈に記憶に残り、先年出戻った末の娘が連れた孫が、あの溺愛された娘と同じ年頃だと、ふと思い、同じ黒髪ということもあり、町の会合で、めんと向かっていわないものの、出戻った娘への嘲笑があると思い込んでいたダムは、つい言ってしまった。

出戻ってきた娘の連れている孫の父親は、ニルガ傭兵団のリーダーで、ここに娘たちは避難していると。

酔った勢いもありそう口をすべらせた。


その噂があっという間に広がり、隣の町の代表家から始まり、大きな町の代表家からなど、沢山の贈り物や、ダムへのパーティーへの招待など、一気に周りが騒がしくなった。


初めは大それた嘘を、と怒っていた娘も贈り物や賛美の数々に、いつしか喜ぶようになり、誰に似たのか見栄っぱりな孫まで、その気になった。


そんなある日、ケルダス王家からの使者と名乗る男が現れ、ラージス帝国からの身柄引き渡しの要求があると話された。

ケルダス王国の臣民を渡すわけにはいかないので、身柄を保護する、という話に、たいそれた事になったと顔を青くし、小さな町とはいえ、代表家の長であるダムは、国同士のかけひきの道具にされる事を悟り、守ってくれるという国に、全てを使者に白状した。


傭兵団の幹部クラスの名前やリーダーであるグレンの名前は皆、吟遊詩人や立札にある諸事通信にて、知ってはいるものの、そのプライベートまでは知らないし、拠点にしていた町や砦の人間も誰も話すことはなかった。


あのケルパ砦の人間でさえ、知らぬ存ぜぬを通してきた。


そんな中での今回の噂にケルダスもラージスも飛びついた。


ケルダス側は、ラージスに対して、今回のことはただの噂にすぎぬ事を重ねて説明し、ダム一家の虚飾を満たすための、嘘であることを説明して、お引き取りを願った。


ケルダスとしても、はじめのてニルガ傭兵団の貴重な情報を、ただでラージスにくれてやるつもりがなかった。


黒髪の今では12くらいになる娘は、昔と違い、ラージスと死闘を繰り広げている現在、傭兵団と共にあれば、目立つはずだ。


少なくとも、だれかが目撃しているはずだ。


それがないという事は、すでに亡くなったか、それとも、どこかに隠されているか。


その話に聞く溺愛ぶりが本当なら、娘を手に入れれば、ニルガにも、ラージスにも対抗しうる駒になる。


ケルダス王国にチャンスが回ってきた。


そう考えたケルダス国は、静かにだか確実に一つ一つの村や町を丹念に、調べはじめた。


それと同時に、情報源であるダムの一家は一族郎党、深夜の火災で全員亡くなった。


話す口は一つでいいということだった。


ただ一人この里帰り中の下男を除いて。


ギランは場末の酒場で耳に入った傭兵団のリーダーの娘が焼け死んだという噂に、一瞬で狂い、その場のものを皆殺しにしたあと、


「あれ?そんなわけないか・・・?ごめんね~殺しちゃったあ。でも、嘘をついた罰だよね~」

そういいながら、すぐさま噂を確かめはじめ、ここ2か月の間そういう噂が持ち上がり、そして、その噂の一家が1週間前に焼け死んだことを知った。


すぐさま諜報に連絡をとり、グレンに報告、そして、2日目に、この下男までたどりつき、ドアをあけた下男の宿り先である農婦の腹を、そのままかっさばき、腰をぬかして震える男の前にいた。


震える男から、話を聞いたギランは目を輝かせると、男に飛びつき

「愛してるよ~」

そういいながら抱きつき男の背中から心臓を一突きした。


「こんなに楽にやってあげたのは、俺からの心からのありがとだよ~。」


早く早くナンつかまえて、会議、会議。


もう隠れる意味なくなってるじゃん。


ラージス、馬鹿じゃなきゃ動き出すし~。


「む、む、迎えにいこう♪♪ルン・ルン・ルン」と歌いだし、スキップしながらギランは歩きだし、やがてかけだした。
















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