表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の花  作者: そら
第1章
14/78

第13話

続きです。

髪の毛を引っ張られる痛さに、いつのまにか床におろされて、顔をあげられている事を知った。


レイナがいぶかしげに、目の前の顔をみるのと同時に、男が、後ろを振り返り、手を振った。


それと同時に傭兵達の奇声があがり、今までの静けさが嘘のように、娼館である上の階に、我さきへと駆けていなくなった。


目の前の男は、相変わらず何も話さず、ギリギリとつかまれる髪の痛さにレイナはうめいた。


混乱するレイナの耳にそれが届いたのは、すぐだった。


物の倒れるような音、割れるような音。


男達の「そっちだ。」だの、「こっちだ」だのの声。


そして、合い間、合い間に聞こえる女達の絶叫。


絶叫?不思議に思い、ぼーっとする頭に活をいれ、いまだぼやけたように聞こえる、おのれの耳に集中する。


男達が上に向かったのは、女達を抱くためではないのか?


時々、金を稼ぐために、腕に覚えのあるよそ者のグループがこの砦に入りこみ、ついでとばかり娼館に乗り込み、金も払わないで、女達を抱こうとする事がある。


もちろん、ここはニルガの拠点であり、そんな馬鹿な輩は、すぐさまニルガの男達にやられて終わる。


レイナは、はじめ上に向かうそれをみて、相手はニルガだ、誰も止めない、みんな、ただ働きになるなあ、と頭の片隅でぼんやりと思ったのだが、聞こえる、その声は、色っぽいそれではなかった。


何がおきてるのかと、目の前の男をみるが、その瞬間、激しい痛みに襲われ目を見開いた。


男がいつ取り出したのかわからない、その細身のナイフは壁に、レイナの喉を貫いたまま刺さった。


何?なに?驚愕のまま痛みの元に、恐る恐る視線をやると、自分の喉に刺さるナイフに、思わず手をかけようとした。


その手を抑えられて、本能のまま暴れようとすると、男が声をだした。


「動くと、刃がずれてしんじゃうよ~。」


「おれってば、ちょう天才だからあ、血もまだでてないっしょ?」


「ねえ、喉ってやっかいなんだよお。」


「ちょいとずれたら、一発でぴゅっ~てなっちゃう。すんごい飛んで誰に一番かかるかって、ゲームしてもおもしろいかもだけど。」


「みんないっちゃってるから、それじゃあそべないし~、血がつまって死んじゃうのって、みてても楽しくないし~」


「そのまま、おとなしく動かないでてね~。」


そういいながら、食堂でひと塊りになっていた男達の元に向かう。


男達は逃げようにも、体がいうことを聞かなかった。


彼らとて、この砦に住む者たちだ。


人の一人二人殺したところで、ここでは、日常茶飯事であり、ある程度のタフさを自認もしていた。


昼近くにやってきた、この男達とは陽気に酒を酌み交わし、馬鹿話をしていたはずだった。


「ほんと、くら~い奴ばっかで、根暗って、あ~ゆ~のゆうんだよねえ。」

などと、この目の前の男が、今までいた傭兵の悪口を、それは、おもしろおかしく、あの時はこうだった、などと、いろいろなエピソードを聞かせてくれて、悪いとは思いつつ大笑いしていた。


それがどうしてこうなった、どこから狂った、あの馬鹿話をした陽気な男のかもしだす雰囲気に体は震え、声を出す間もなく、男の取り出した2本の短剣によって、あっという間に、自分の体が沈み込むのを、その鋭い痛みを最後に、男の意識はとだえた。


レイナは必死にピクリとも動かないように己の手に力を入れ、あふれる涙も、それがナイフにかかったらと思うと、恐ろしく、それはそれは必死だった。


食堂にいる者達を、あっという間に2本のナイフでほうり、目だけを血走しらせて、極限まで見開いたレイナの元にくると、男は笑った。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://ncode.syosetu.com/n4154o/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ