第12話
時間がないので、短いです。
今日、もう一度投稿する予定です。
「何をしている。」
食堂の扉を開けて、入ってきた副長のルースが声をかけた。
ギランとつるされている女を見る目つきには、何の感情も伺えない。
必死に、ギランの手を外そうと、あがいていたレイナは、苦しくなる一方の喉の奥から、
「助けて」とかすれた声をあげて、新たな闖入者の方に視線を向けた。
ルースの脇に、グレンの姿をみたレイナは、その目に希望を見出し、自分はここにいる、と、必死に足をばたつかせて、より大きな声をだし、その名を呼んだ。
グレンは、中に愛しい娘の姿を確認すると、テーブルまでより娘を抱き上げ、
「ご機嫌は直ったかな?お姫様。」
とリーナに目線をあわせ、リーナがクスッと笑うのをみて、目を細めた。
リーナを抱いて歩きだそうとする間も、食堂は静まりかえったままで、レイナの助けを求める声が、思いのほか響いていた。
足元の血だまりに倒れているライナをチラッとみて、すぐ父の胸に頬をすりつけて、ひとこと、
「つまらない。」とリーナはいった。
それを聞いたグレンは、ひょいと眉をあげ、リーナをギュッと抱きしめると、すぐさま屋敷へと戻るべく、踵を返した。
グレンは、ここに自分たち以外の他の人間などいないように、悠然とリーナを抱いて、常夜館を出て行った。
その後ろにルークは続き、去り際に会合があることを告げて出ていった。
レイナは、ずっとグレンを目で追い、出ていく瞬間まで可能な限り助けを求め続けた。
こちらをみようともせず、出ていく男に、ああ、そうだ、自分の顔に血があるから、自分だとわからなかったに違いないと思い、早く顔を拭いて、それから、と、苦しい息の下で、現実逃避のとりとめのない考えにふけっていった。