第7話 初心者が深層ボス挑戦――キングミスリルドラゴン討伐で同接10万突破
石扉が、ゆっくりと開いた。
ゴゴゴゴ……。
重い音が、広い空間に反響する。
中は、だだっ広い円形ホールだった。
体育館どころじゃない。ドームだ。
天井は暗闇に溶け、見えない。
中央に、巨大な魔法陣。
どう見ても。
「……ボス部屋だろこれ」
思わず本音が漏れる。
コメント欄。
『きたああああ』
『ボス確定演出』
『初心者帰れwww』
『でも見たい』
『シンゴ、マジで入るのか!?』
同接:4,900
「いや増えすぎだろ……」
ツッコミながら一歩踏み込む。
カツン。
足音。
その瞬間。
魔法陣が、カッと赤く光った。
ゴォォォォォォォォッ!!
爆風。
突風。
そして――
巨大な影が舞い降りる。
銀色の鱗。
長い首。
巨大な翼。
「……ドラゴン?」
キングミスリルドラゴン。
それが、ゆっくりと降り立った。
ドシンッ。
床が揺れる。
コメント欄、発狂。
『キングミスリルドラゴン!?!?!?』
『深層ボスだぞそれ!!』
『なんで浅草にいる!?』
『逃げろおおおおお』
『シンゴさん、帰ろ!?』
「え、そんなやばいの……?」
今さら言われても。
もう目の前だ。
ドラゴンが息を吸う。
「あ、これブレスだ」
次の瞬間。
ゴォォォォォッ!!
銀色の炎が一直線に吐き出される。
直撃。
「うおっ!?」
爆炎。
轟音。
視界が白く染まる。
……が。
「あれ?」
立っている。
無傷。
「……?」
胸当てに手を当てる。
(後で知ることになるが――この鎧はブレス軽減90%だった)
「……つよ」
素直な感想。
コメント欄。
『無傷!?!?!?』
『ブレス直撃だぞ!?』
『意味わからん』
『シンゴの鎧、何それ』
ドラゴンが苛立ったように地面を蹴る。
――あっこれ突進モーションだ!
一直線に突っ込んでくる。
「よっと」
冷静に横へ回避。
すれ違いざま――
カウンター。
顔面へ。
金属バットを叩き込む。
ドゴン!!
鈍い衝撃。
鱗に直撃。
……へこんだ。
「え」
へこんだ?
ドラゴンの頭がぐらりと揺れる。
コメント欄。
『ダメージ入ってる!?』
『バットで!?』
『攻撃力おかしい』
『シンゴ何者だよ……』
「……レベル上がってるからか?」
さっきの熱。
あれ、やっぱレベルアップか?
ゲーム的すぎるだろ。
「よし、いける」
ドラゴンが再び力を溜める。
「あ、これブレスだな」
炎が巻き上がる。
距離を取ってやり過ごす。
肩が動く。
「テイルアタックだ!」
昔何百回もやったゲームを思い出す。
タイミング、完璧。
寸前でかわす。
「てい!」
思い切り、しっぽの中程を叩く。
ぶちっ。
嫌な音。
しっぽが、半分から先、吹き飛んだ。
『おいおい!!』
『金属バットでドラゴンの尻尾切ったぞ!?』
『意味不明すぎるwww』
『シンゴ、物理が強すぎる』
「……切れるんだ」
俺が一番びっくりしてる。
ドラゴンが怯む。
今だ。
スコーン!スコーン!
また鼻歌が出た。
ドラゴン相手に何歌ってんだ俺。
「キャラメルスコーーーー」
“ン♪”
リズムに合わせて、フルスイング。
ドォォォンッ!!!
クリーンヒット。
顎に直撃。
ドラゴンの巨体がぐらりと傾き。
そのまま――
ドシィィィン!!!
地面に倒れ伏した。
光の粒になって、消える。
静寂。
「……倒した?」
コメント欄。
『うおおおおおお』
『討伐きたああああ』
『世界初だろこれ』
『伝説の瞬間』
『シンゴ、ほんとにやった……』
同接:100,000突破
「……10万?」
意味わからん。
その時。
ドラゴンが消えた場所。
青く光る物体。
「……魔石?」
さっきの数倍。
ほぼメロンサイズ。
『それ、絶対、億行くやつ!』
「え、こわ」
ひょいっとリュックへ。
その奥。
玉座がある。
「ボス部屋の装飾かな?」
色々調べる。
……特に何もない。
「まあ、飾りか」
振り返ろうとして。
ふと呟く。
「……昔、この位置にアイテム隠したりしたなぁ」
玉座の後ろ。
床を見る。
違和感。
「あれ?」
カタッ。
石がわずかにズレる。
「あ」
「これ、絶対……」
職業病が確信する。
「隠しアイテムあるやつだ」
俺は、ゆっくりと床に手をかけた。
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