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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 8

海底のお掃除ダイビング。封印されし海神リヴァイアサンを『放置された巨大浮き輪』と勘違い

「いやー、波がないと海の中まで透き通ってよく見えるな」

 アイロンがけ(パーフェクト・シー・アイロン)によって鏡のようにツルツルになった海面。

 俺はホームセンターで買ったシュノーケルと水中メガネを装着し、ぷかぷかと海に浮かんでいた。

 特級海域デス・ゾーンの水質は、先ほどの『ゴミすくい網』のおかげで、もはやミネラルウォーターよりも綺麗になっている。

 しかし、俺の清掃員としての目はごまかせない。

「水面は綺麗になったけど、海底にはまだ色々と『沈殿したゴミ』が落ちてそうだな。よし、腹ごなしも兼ねて、海の底のお掃除ダイビングといきますか」

 俺は大きく息を吸い込み、エメラルドグリーンの海中へと潜っていった。

 スイスイと泳ぎながら、海底のサンゴ礁の間に落ちていた空き缶やら、錆びた剣(たぶん昔の探索者の遺物)やらを、持参したゴミ袋に拾い集めていく。

 さらに深く、深くへ。

 一般の探索者なら水圧と魔力濃度で即死するような深海(ダンジョン最深部)まで、俺は息継ぎもせずに潜り続けた。

 そして、水深数百メートルの海底――巨大な海溝の底に辿り着いた時。

「ん……? なんだあれ」

 俺の水中メガネの奥に、とんでもなく巨大な『黒と青の塊』が映った。

 全長数十メートルはあろうかという巨体。表面はゴムのように滑らかで、全体が丸くドーナツ状に丸まって、海底の岩場にすっぽりとハマっている。

 それは、この特級ダンジョン『ブルーホール・リゾート』の最終ボスであり、古の神話で世界を水没させたと語り継がれる伝説の魔獣――『海神リヴァイアサン』が、永き封印の眠りについている姿だった。

 本来なら、その姿を見ただけでSランク探索者ですら恐怖で発狂する、絶対的な神の威厳。

 だが、俺のオカン的思考回路は、その神話級のバケモノを見て、全く別の『あるモノ』を連想していた。

「……誰だ。こんなデカい『シャチの浮き輪』を、海に捨てて帰った奴は」

 そう。

 黒と青のツートンカラーで、ツルツルした巨体が丸まっているその姿は、俺の目には『空気が抜けかかって丸まった、特大サイズのシャチ型ビニール浮き輪』にしか見えなかったのだ。

「まったく、最近の観光客はマナーがなってない! こんなデカい粗大ゴミを海に沈めたら、生態系が壊れるだろうが! ちゃんと持ち帰って処分しろ!」

 俺は憤慨しながら、海神リヴァイアサンの元へと泳ぎ寄った。

『……スゥ……スゥ……(神の寝息)』

 リヴァイアサンは、近づいてきたのが「ただの清掃員」だと気づきもしないのか、それとも数千年の眠りが深すぎるのか、ピクリとも動かない。

「よいしょ、っと」

 俺は、リヴァイアサンの巨大な尻尾の先端――俺の目には『浮き輪の空気穴の結び目』に見えている部分――を、両手でガシッと掴んだ。

 対象:海底に不法投棄された『超特大のビニールゴミ(神話級海竜)』。

 処理:景観と環境を守るため、陸上へと強引にサルベージ(引き上げ)する。

「おらっ! 粗大ゴミは回収だァッ!!」

 俺は、リヴァイアサンの尻尾を掴んだまま、海底の岩盤を蹴り飛ばして、一気に海面へと急浮上した。

 ズバアァァァァァァァンッ!!!

 アイロンがけされた平らな海面を突き破り、とてつもない水柱が上がった。

 俺はシュノーケルからプハァッ!と息を吐き出しながら、右手一本で『数十メートルの神の海竜』をズルズルと引きずり、ビーチへと向かって泳ぎ始めた。

「おーい! 未緒ー! 海底にでっかい浮き輪が落ちてたぞー!」

 ◇

 一方、その頃のビーチ。

 パラソルの下でくつろいでいた未緒やSP軍団、そして全裸で正座していたSランク探索者たちは、海から上がってきた俺の姿を見て、全員の目がソフトボール大に飛び出していた。

「「「…………え?」」」

 俺が右手で引きずっているモノ。

 それは、世界中の教科書に『絶対に遭遇してはならない厄災』として描かれている、神話の海竜・リヴァイアサンそのものだった。

「ひ、ヒィィィィィィィィッ!!?」

 金髪大剣男が、喉が裂けんばかりの悲鳴を上げた。

「リ、リ、リヴァイアサンだァァァッ!! なんで!? なんで最深部の神が、あんな『釣ってきたカツオ』みたいな扱いで引きずられてるんだァァァッ!?」

「アカン……。俺たち、神の怒りに触れて、島ごと消し飛ばされる……!」

 Sランクの男たちが、あまりの恐怖に抱き合って失禁し始めた。

 SP軍団ですら、冷や汗を流して武器を構えている。

「Boss……。いくらなんでも、釣果がデカすぎますぜ……。アレが目覚めたら、流石の俺たちでもタダじゃ済まねえ……!」

「師匠、今すぐ絶対零度で海ごと凍結させますわ! 下がってください!」

 しかし、俺は彼らの緊迫した空気を全く読まず、ズルズルとリヴァイアサンを砂浜に引っ張り上げた。

「大げさだな。ただの捨てられてた浮き輪だぞ?」

 俺は、砂浜にドサッと置かれた(まだ寝ている)リヴァイアサンの巨体を、ペチペチと叩いた。

「でもこれ、だいぶ長いこと放置されてたみたいだな。表面は綺麗だけど……ほら、ちょっと空気が抜けて、シワシワになってるじゃないか」

「「「…………は?」」」

 俺の目には、神の海竜の荘厳な鱗の質感が、「空気が抜けて萎んだビニールのシワ」に見えていた。

「せっかく拾ったんだから、再利用リサイクルしないともったいないな。よし、今からこれにパンパンに『空気』を入れてやるか。そうすれば、未緒たち全員で乗れるデカいフロート(浮き輪)になるぞ!」

 俺はそう言うと、バッグの中から『自転車の空気入れ(手動)』を取り出した。

「な、何を言っているんだあの男は……!?」

「神に……リヴァイアサンに、自転車の空気入れを使う気か……!?」

 外野のSランク探索者たちが白目を剥いて見守る中、俺はリヴァイアサンの口(空気穴だと勘違いしている)をこじ開けようと、空気入れのノズルを構えた。

 神の尊厳が、今まさに「レジャー用品」へとダウングレードされようとしていた。

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