表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/64

EP 2

遊泳禁止デス・ゾーン」の看板? ゴミの不法投棄のことだな。特級海域を『プライベートビーチ』に

「よし、この辺でいいか。未緒、レジャーシート敷いてくれ」

「はーい、お兄ちゃん」

 『遊泳禁止デス・ゾーン』という禍々しい立て札を通り過ぎた俺たちは、誰もいない真っ白な砂浜に、ホームセンターで買った千円のパラソルを突き立てた。

「ふむ、さすがはBossの選んだ地。他の有象無象ゴミがおらず、我らが羽を伸ばすには最適なプライベートビーチですな」

「本当に。波の音と、この禍々しい……いえ、心地よい海風が最高ですわ」

 アロハシャツ姿のジャンがパラソルの下で優雅にフルーツを剥き、ビキニ姿のカレンが日焼け止めを塗りながら微笑む。

 ジャックは波打ち際で「マッスル・サンシャイン!」と叫びながらポーズを決め、アーニャは砂に半分埋まりながら周囲の警戒(ただの砂遊び)をしている。

 しかし、そんな俺たちののどかなバカンス風景を、遠く離れた『安全地帯(一般ビーチ)』から、先ほどの金髪大剣男(Sランク)と取り巻きたちが、双眼鏡を片手に血の気を引かせて見つめていた。

「あ、あいつら……正気か!? あのパラソルを立てた場所は、凶悪な魔物が砂の中に潜む『処刑の砂浜』だぞ!?」

「それに、あの目の前の海は……近づくだけで特級の海棲魔物に引きずり込まれる、生存率0%の『魔の海域』……! 集団自殺する気なの!?」

 ギャーギャーと騒ぐ外野の声など、波の音にかき消されて俺には届かない。

「んー! 準備体操終わり! いっちょ泳いでくるか!」

 俺は屈伸とアキレス腱伸ばし(ラジオ体操第一)を完璧にこなし、海へと歩き出した。

 だが、波打ち際に近づくにつれ、俺は眉をひそめた。

「……なんだこの海。近くで見ると、めちゃくちゃ汚いじゃないか」

 遠目にはエメラルドグリーンに見えた海だが、足元にはドス黒いヘドロのようなものが漂い、沖合には巨大な流木や、トゲトゲした不気味な海藻のようなものが大量にうねっている。

 これでは、未緒やアーニャたちを安心して泳がせることはできない。

「なるほどな。だから『遊泳禁止』なんだ。不法投棄されたゴミと、大量の海藻で足をすくわれたら危ないからな」

 俺のオカン的解釈アンジャッシュが、特級海域の恐ろしさを「ただの管理不足の市民プール」レベルへと引き下げた。

「しょうがない。泳ぐ前に、パパッと掃除(ゴミ拾い)しとくか」

 俺は、背負ってきた荷物の中から、柄が伸縮する『プール用のゴミすくい網』を取り出した。

「お兄ちゃーん! 気をつけてねー!」

「おう! すぐ綺麗にするから、お前らは水着に着替えて待ってろ!」

 俺がズカズカと膝下まで海に入った、その瞬間だった。

 ――ボッッッパァァァァァァンッ!!

「……!」

 海面が突如として爆発したように盛り上がり、俺の周囲を取り囲むように、巨大な水柱が何十本も立ち上がった。

 現れたのは、鋭い牙を剥き出しにした全長10メートルを超える『ブラッド・シーサーペント(Aランク)』の群れと、四本の腕に凶悪な槍を持った『マーダー・サハギン(Aランク)』の大軍勢だった。

『ギシャァァァァァァッ!!』

『人間ダ! 久シブリノ生肉ダァァッ!!』

 血に飢えた海の魔物たちが、一斉に俺に向かって襲いかかってくる。

 遠くで見ている金髪男たちは「ヒィィッ! 終わった! 一瞬でミンチにされるぞ!」と悲鳴を上げて目を背けた。

 だが。俺の目に映っていたのは、魔物ではなかった。

「……うわぁ、なんだこれ。めちゃくちゃ生臭い『浮きゴミ』と、トゲトゲの『巨大昆布』が大量に流れてきたぞ」

 俺は鼻をつまみ、ウンザリした顔ですくい網を構えた。

「こんな尖ったゴミや昆布が足に絡まったら、溺れちゃうだろうが!!」

 俺は、襲いかかってくるシーサーペント(巨大昆布)とサハギン(生臭いゴミ)の群れに向かって、プールの落ち葉をすくうような軽快な動作で、網を大きく振り抜いた。

 対象:海面および海中に漂う『不衛生な浮遊物(特級魔物)』および『水質汚染物質』。

 処理:網の目を通過する瞬間に、不純物を分子レベルで濾過・解体し、綺麗な海水のみを残す。

「海水浴場のマナーを守れェェッ!! ――『解体サーフェス・スキミング』!!」

 ザシュゥゥゥゥゥゥッ!!

 俺の振るった網が、海面を撫でた。

 その直後。

 俺に牙を剥いていた数十匹のシーサーペントやサハギンの大群が、網に触れた端から「ポンッ!」という間の抜けた音を立てて、一瞬にして消滅したのだ。

『……ギ、ゲェェェェッ!?(解せぬッ!?)』

 魔物たちは断末魔を上げる暇すらなく、文字通り「網ですくわれたゴミ」として空間から濾過され、完全に解体されてしまった。

 シュワァァァァ……。

 そして、魔物たちが消滅したと同時に、彼らが撒き散らしていたドス黒い瘴気ヘドロもすべて浄化され……。

 俺の目の前に広がっていた禍々しい死の海域は、ハワイのパンフレットに載っているような、底の真っ白な砂粒まで透けて見える『超極上のクリスタル・オーシャン』へと劇的な変化を遂げたのである。

「よしよし、これで水質検査もバッチリだな」

 俺は網の先をポンポンと払い、透明度100%になった海面を見て満足げに頷いた。

「「「…………」」」

 遠くの安全地帯から双眼鏡で覗いていた金髪男と取り巻きたちは、立ったまま完全に石化していた。

 Aランクの魔物の大群が、ただの『ゴミすくい網』で一撫でされただけで消滅し、あまつさえ特級ダンジョンの環境そのものが「ただの綺麗な海」に書き換えられてしまったのだ。

「……あ、ありえねえ。あいつ、一体何者なんだ……!? 神か……? 海の神の化身なのか……!?」

 金髪男は震える膝から崩れ落ち、俺の後ろ姿に向かって、無意識のうちに祈りのポーズをとっていた。

「おーい! みんなー! ゴミ拾い終わったぞー! こっちは水も綺麗だし波も穏やかだ、安心して泳いでいいぞー!」

 俺がビーチに向かって大きく手を振ると、水着に着替えた未緒やアーニャたちが「わーい!」「さすがBoss!」と歓声を上げながら、浮き輪を持って駆け寄ってきた。

「ルン♪ ルーン♪」

 魔王ルンバも、俺の足元でピチャピチャと水を跳ねて喜んでいる。

 こうして、世界中のSランク探索者が恐れ、決して近づかなかった『死の海域デス・ゾーン』は、一人の清掃員の「プールの掃除」によって、九条家専用の最高級プライベートビーチへと生まれ変わったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ