EP 8
「さっきワックス塗ったばっかりだぞ!」激怒のオカン、テロリストを全裸(解体)にする
「死ねェェェッ! 清掃員のゴミ風情がァァァッ!!」
魔王軍の残党であるテロリストたちが、一斉にアサルトライフルの引き金を引いた。
さらに後衛の魔術師たちが杖を振り上げ、灼熱の火炎球と漆黒の風の刃を放つ。
ダダダダダダダッ!!
ゴォォォォォォォッ!!
鼓膜を破るような銃声と、空間を焼き尽くす魔法の爆音。
エリート生徒たちや保護者は「ヒィィッ!」と悲鳴を上げて頭を抱えた。
常人なら一瞬で原型をとどめない肉片に変わる、文字通りの『死の弾幕』。
だが。
俺の目に映っていたのは、そんな恐ろしい光景ではなかった。
「……お前ら。廊下に『金属片(薬莢)』を散らかすな! 魔法の『スス』で天井を焦がすな!!」
俺はモップを構え、飛んでくる何百発もの銃弾と魔法の豪雨に向かって、真正面から突っ込んだ。
「掃除の邪魔だァァァッ!!」
バシィィィィィィィンッ!!!
俺がモップの柄で虚空を薙ぎ払った瞬間。
飛来していた銃弾が、まるで『チリ』を払われるかのように、モップが触れた端からシュンッ!と音を立てて消滅(解体)していった。
さらに、迫り来る灼熱の火炎球も、モップの濡れた先端で「キュッ」と拭き取られ、ただの水蒸気となってあっけなく霧散する。
「な、なんだとォォォッ!?」
テロリストのリーダーが、信じられないものを見たように目を剥いた。
「バ、バカな! 俺たちの銃弾が、魔法が……! ただのモップで『拭き取られた』だと!?」
「ありえねえ! どんなチート級の防御結界なんだ!?」
パニックに陥るテロリストたち。
しかし、俺の怒りはそんな弾幕を消した程度では全く収まっていなかった。
「結界じゃない! ただの『拭き掃除』だ! ……次はお前らだ。その泥だらけの汚いブーツと服、俺が直接『洗濯』してやる!!」
俺は床を蹴り、一瞬にしてテロリスト軍団のど真ん中へと跳躍した。
「ヒィッ!? く、来るなバケモノォォッ!」
「撃て! 撃ち殺せ!」
「お前らが一番汚いんだよ!!」
俺は、モップを大回転させながら、テロリストたちを次々と「拭き」始めた。
対象:テロリストの『泥汚れ』『不衛生な武装』および『薄汚れた殺意』。
処理:完全なる泥落とし(ドライクリーニング)と、武装の強制解除。
「――『解体』!!」
シュバババババババババッ!!!
俺のモップが、テロリストたちの身体を高速で撫でていく。
その直後。
「あ、あわわわわ……!?」
リーダーの大男が持っていたアサルトライフルが、サラサラと音を立てて砂のように崩れ去った。
それだけではない。
彼らが着ていた重厚な防弾チョッキも、泥だらけの戦闘服も、そして大罪の元凶である『泥靴』も。
モップに触れた瞬間、すべての汚れと共に「衣類という概念」ごと完全に解体(洗濯)されてしまったのだ。
ポンッ。
スッポンポン。
「「「…………え?」」」
数秒後。
学園の中央廊下には、銃声も魔法の炎も消え失せ、奇妙な静寂が訪れていた。
人質になっていたエリート生徒たちが、恐る恐る顔を上げる。
彼らの目に飛び込んできたのは。
つい先程まで「世界連合への復讐だ!」と息巻いていた凶悪なテロリスト数十人が、武器も服もすべて消え失せ、生まれたままの姿(全裸)で、真っ青な顔をして突っ立っているという、あまりにもシュールな光景だった。
「……ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」
リーダーの大男が、股間を両手で隠しながら、ガチガチと歯を鳴らしてその場にへたり込んだ。
「な、なんだこれ!? 俺の服は!? 俺の銃は!?」
「さ、寒い! バケモノだ! こいつ、人間の形をした悪魔だァァァッ!」
全裸の屈強な男たちが、大理石の床の上で泣き叫びながら抱き合っている。
だが、悪魔(俺)の追及はまだ終わらない。
「おら、服の泥は全部落としてやったぞ。……で?」
俺はモップを肩に担ぎ、全裸のテロリストたちを冷たい目で見下ろした。
「この床の泥汚れ、誰が掃除するんだ?」
「「「ひっ……!!」」」
俺の背後から立ち昇る、怒髪天を突く『オカンのオーラ(般若の顔)』。
それに気づいた瞬間、テロリストたちは本能で「これ以上逆らえば、次は肉体ごと掃除(解体)される」と悟った。
ズザザザザザァァァッ!!
数十人の全裸の男たちが、一糸乱れぬ動きで、俺の足元(ピカピカの床)に平伏した。
完璧な土下座である。
「「「す、土足で上がって、本当にすんませんでしたぁぁぁぁぁっ!!!」」」
「「「ワックスがけしたばかりの床を汚して、申し訳ありませんでしたぁぁぁっ!!」」」
全裸の大男たちが、涙と鼻水を流しながら、額を大理石に擦り付けて謝罪の言葉を叫ぶ。
世界を恐怖に陥れた魔王軍の残党が、たった一人の清掃員の前で、完全に屈服した瞬間だった。
「わかればいいんだよ。ほら、雑巾貸してやるから、隅から隅まで拭き直せ」
「「「ハ、ハイィィィィッ!! ピカピカに磨かせていただきますゥゥゥッ!!」」」
俺が投げ渡した大量の雑巾を受け取り、全裸のテロリストたちは「イチ!ニ!イチ!ニ!」と掛け声をかけながら、一斉に廊下の拭き掃除を始めた。
「……」
「……」
人質の生徒たちや、各国のVIPたちは、ポカンと口を開けたまま、全裸の男たちが一生懸命に雑巾がけをしている謎の光景をただ見つめている。
「……対象、制圧完了。さすがはBossだ」
「あら、少しやりすぎじゃありませんこと? 目が腐りそうですわ」
「我の出番が……」
物陰から顔を出したSP軍団が、呆れたようにため息をついていた。
こうして、学園を揺るがす未曾有のテロ事件は、『清掃員のオカン的逆鱗』によって、死傷者ゼロ(ただし尊厳はマイナス)という奇跡的な解決をみたのであった。




