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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 6

校長すら倒せないSランクボスを『粗大ゴミ』として塵取りへ

「ハァッ! 喰らえ、エクスプロージョン・フレア!!」

「ギャアアアァァァッ!」

 学園地下ダンジョンの第十階層。

 Aクラスのリーダー・神宮寺じんぐうじの放った上級魔法が、立ち塞がるBランク魔物『オークジェネラル』を黒焦げにして吹き飛ばした。

「フッ、脆いな。これで第十階層もクリアだ。タイムは……現在15分。驚異的なペースだぜ!」

 神宮寺が前髪をかき上げながらニヤリと笑うと、取り巻きの生徒たちが歓声を上げた。

「さすが神宮寺さん! このまま最深部まで一気に駆け抜けましょう!」

「あの清掃員の底辺、今頃入り口でスライム相手にホウキ振り回して泣いてるんじゃないですか? ギャハハハッ!」

 彼らは、自分たちの勝利と輝かしい未来を微塵も疑っていなかった。

 この学園ダンジョンは、生徒の安全を考慮して、最深部に出現するボスは最大でもAランクの『ミノタウロス』に設定されている。Aクラスの総力を結集すれば、30分以内のクリアは確実だ。

 ――しかし。

 最深部である第二十階層の巨大な扉を開け放ち、ボス部屋へと足を踏み入れた彼らを待っていたのは、絶望だった。

「な、なんだ……コイツは……!?」

 神宮寺が、ガクガクと膝を震わせて後ずさる。

 ボス部屋の中央に鎮座していたのは、本来出現するはずのミノタウロスではなかった。

 見上げるほどの巨体。漆黒の鱗。周囲の空気を焼き焦がすほどの灼熱の魔力。

 それは、Sランクダンジョンの最奥にのみ生息するとされる、規格外の災厄――『暴食の黒竜ブラック・ドラゴン』だった。

『グルルルォォォォォォ……!!』

「ヒィィィッ!! ド、ドラゴン!? なんで学園の地下にこんなバケモノが!?」

「設定エラーだ! 逃げろォォォッ!!」

 Aクラスの生徒たちが悲鳴を上げて扉へ向かって駆け出す。しかし、黒竜が巨大な尻尾を薙ぎ払うと、轟音と共に退路の扉が完全に崩落してしまった。

 閉じ込められた。

「あ、ああ……終わった……。こんなの、学園長でも勝てないぞ……」

 神宮寺がへたり込み、絶望の涙を流す。

 黒竜が、彼らを『エサ』として認識し、その巨大なあぎとを開いて灼熱のブレスを吐き出そうとした、まさにその時だった。

「あー、やっぱりな。最近の若いのは、ゴミの分別が全然なってない」

 緊迫したボス部屋に、全く空気を読まないのんきな足音が響き渡った。

「え……?」

 神宮寺たちが振り返ると、崩落したはずの扉の瓦礫の山を乗り越えて、しまむらのポロシャツを着た男が歩いてくるではないか。

 手には、使い古された『竹ホウキ』。

 もう片方の手には、プラスチック製の『特大チリトリ』。

「く、九条!? お前、なんでここに……!?」

「なんでって、ゴミ拾い競争だろ? ほら見ろ、お前らが倒したオークの死骸とか、ポーションの空き瓶とか、通路に散らかしっぱなしじゃないか。燃えるゴミと不燃ゴミは分けろって、いつも言ってるだろ」

 俺はチリトリの中に回収したオークの牙やら空き缶やらをカチャカチャと鳴らしながら、呆れたようにため息をついた。

「バカッ! ゴミ拾いなんかしてる場合か! 見ろ、あのアリエナイ巨大なバケモノを! 俺たちはもう終わりだァァァッ!」

 神宮寺が鼻水を垂らしながら黒竜を指差す。

 俺は、ボス部屋の中央でブレスを吐きかけようとして硬直している黒竜を見上げた。

『…………?』

 黒竜も、突然現れた『ホウキを持った清掃員』に戸惑っているようだった。

 だが、俺の目には、その漆黒のドラゴンはこう映っていた。

「……なんだこの、デカくて薄汚れた『粗大ゴミ』は」

「「「は?」」」

「通路のど真ん中をこんなデカいゴミで塞いだら、通行の邪魔だろうが。しかもホコリ(魔力粉塵)撒き散らして……これだから最近の不法投棄は!」

 俺の頭の中で、オカンの堪忍袋の緒が完全にブチ切れた。

 俺は、竹ホウキを両手で構え、特大チリトリを黒竜の足元にスッと差し出した。

 対象:ダンジョンの通行を妨げる『超大型の粗大ゴミ(Sランク竜)』。

 処理:空間ごと圧縮し、チリトリの容量サイズへ強制収容(掃き掃除)する。

「粗大ゴミは! 自治体のシール貼って、指定の曜日に出せって言ってるだろォォォッ!!」

 俺は、渾身の力を込めて竹ホウキを大上段から振り下ろした。

「――『解体ダスト・スイープ・ストライク』!!」

 シュバァァァァァァァァァンッ!!!!!

 ホウキの穂先が、虚空を撫でた。

 その瞬間。

 世界で最も恐ろしい災厄の一角であるはずの『暴食の黒竜』の巨体が、ホウキが描いた軌跡に沿って、空間ごとシュルルルルッ!と掃除機に吸い込まれるように圧縮されていった。

『ギャ……ォォォォ……ッ!?(解せぬッ!?)』

 黒竜は抵抗する間もなく、文字通り『チリ』ほどのサイズに極小化され、そのまま俺が構えていたプラスチックのチリトリの中にポンッ!と収まった。

 チーン。

 ダンジョン内に、静かな電子音が鳴り響いた。

 ボス部屋の壁に設置された巨大な電光掲示板に、クリアタイムがデカデカと表示される。

【クリアタイム:00分00秒50】

 ボス接敵から討伐(掃き掃除)まで、わずか0.5秒。

 人類の歴史上、最も理不尽で、最も最速のダンジョン攻略記録が刻まれた瞬間だった。

「……ふぅ。これでスッキリしたな。あとはこの粗大ゴミを、学園の裏のゴミ捨て場に持っていけば終わりだ」

 俺は額の汗を拭い、チリトリの中に転がっている「黒竜だったビー玉サイズの何か」を満足げに見下ろした。

「「「…………」」」

 神宮寺たちAクラスの生徒たちは、立ったまま完全に白目を剥き、口から泡を吹いて気絶していた。

 彼らの足元には、生温かい液体おもらしが広がっている。

「おいおい、なんで気絶してんだ? ……あ、もしかして俺が全部ゴミ拾い(クリア)しちゃったから、勝負に負けてショック受けたのか?」

 俺は首を傾げながら、気絶したエリートたちをホウキの柄でツンツンと突いた。

「まあ、ドンマイ。次はもっと早くゴミ拾いできるようにな」

 俺は彼らに優しい言葉(強烈な煽り)をかけ、ホウキとチリトリを持って、意気揚々と出口の転送陣へと向かった。

 外の広場の巨大モニターでこの一部始終を見ていた学園中の生徒、保護者、そして各国のVIPたちが、恐怖と絶望のあまり『集団失神』を引き起こしていることなど、俺は全く気づいていなかった。

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