表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/64

EP 4

嫌味なエリート親子、一口食べてオーラを吹き出し昇天(圧倒的ざまぁ)

「い、いらっしゃいませー! 特製ミネストローネ、一杯500円です!」

「パンもつきますよー!」

 第一探索者学園の広場。

 1年C組のテントの前には、先ほどまでの閑古鳥が嘘のように、何百人もの長蛇の列ができていた。

 神殺しトマトとクラーケンのゲソ、そして俺の『解体(アク取り)』が生み出した究極の芳醇な香りは、学園中の胃袋をブラックホールのように惹きつけてしまったらしい。

「すげえ美味い! なんだこれ、ミシュラン三ツ星より美味いぞ!?」

「それに、なんだか体の底から力が湧いてくる……! 古傷の痛みが消えた!?」

「魔力値が限界突破してるわ! 私、今なら一人でAランクダンジョン潜れそう!」

 スープを一口飲んだ客たちは、一様に目を見開き、恍惚とした表情で涙を流していた。

 そりゃそうだ。ロシアが国家予算を投じて欲しがる『不老不死の果実』と、Sランクの『深海ボス肉』の煮込みだ。500円で売っていい代物ではない。

「お兄ちゃん、鍋の底が見えてきたよ! 追加お願い!」

「おう、任せとけ。ジャン、トマト追加! ジャックは火加減そのままで!」

「「ウィ(YES)!!」」

 俺たち厨房スタッフ(世界最強のエリートたち)は、汗を流しながら見事な連携でスープを量産していく。

 そんな大繁盛のテントの前に、顔を真っ赤にした集団が割り込んできた。

「おい! どういうことだこれは!!」

 先ほど正門で俺に絡んできた伊集院カケルと、その父親(社長)、そして嫌がらせを実行したAクラスの取り巻きたちだった。

「底辺クラスのゴミどもが、なぜこんなに客を集めている! 食材は全部腐らせてやったはずだろ!?」

「カ、カケルくん……! 声が大きいですわ!」

 取り巻きの一人が慌ててカケルを止めるが、カケルは怒りで周りが見えていないようだ。

 伊集院社長も、鼻をヒクつかせながら憎々しげに俺を睨みつけた。

「フン。どうせ怪しい薬物でも混ぜて、客をトランス状態にしているのだろう。この学校のスポンサーである私が、直々に食品衛生の『検査』をしてやる。その残飯を一杯寄越したまえ!」

 完全に因縁である。

 しかし、俺は営業スマイルを崩さなかった。

「はい、いらっしゃいませ。お客さんなら誰でも歓迎ですよ。一杯500円になります」

「ふざけるな、金を取る気か! まあいい、このスープを飲んで、すぐに保健所に通報してやる!」

 カケルが500円玉を投げつけ、俺が差し出した紙コップのスープを乱暴にひったくった。社長も同様にスープを受け取る。

「こんなドブ水みたいなもん、美味いわけが……」

 カケルと社長は、嘲笑いながらスープを口に含んだ。

 ゴクリ。

 …………。

 二人の動きが、ピタリと止まった。

「……ん?」

「おや、どうしました?」

 俺が首を傾げた、次の瞬間。

 ――ドゴォォォォォォンッ!!!

「「あ、アアアァァァァァァァァァッッッ!!!」」

 伊集院親子の体から、突如として『黄金のオーラ(過剰な生命エネルギー)』が間欠泉のように噴き出した。

 あまりのエネルギーの奔流に、彼らが着ていた最高級のブランドスーツや制服が、内側からパンッ!と弾け飛ぶ。

「な、なんだこの、溢れ出す美味さはァァァッ!!」

「細胞が! 私の老いた細胞が、10代の頃のように若返っていくゥゥゥッ!!」

 ビリビリビリッ!

 ワイシャツが破れ、ズボンが裂け、伊集院親子は一瞬にして『全裸ネクタイのみ』という変態的な姿になり、天を仰いで白目を剥いた。

「クラーケンの奥深いダシが、トマトの酸味と絶妙に絡み合い、それが完璧に濾過された圧倒的な清浄クリア感!! ああっ、母さん! 私は今、宇宙コスモを感じているよォォォッ!!」

 ガクッ。

 二人は立ったまま、口からキラキラとした光の粒子(余剰魔力)を吐き出し、完全に昇天(ヘブン状態)して気絶した。全裸で。

「……うわぁ」

「き、汚い……」

「お客さん、いくら美味いからって、公衆の面前で服を脱ぐのはマナー違反ですよ」

 俺はドン引きしながら、全裸で泡を吹いているエリート親子にブルーシートを被せた。

 周囲の客たちも「あーあ、美味すぎてキャパオーバーしちゃったんだな」と同情(?)の目を向けている。

「な、なんだあの光景は……!?」

 その時。

 騒ぎを聞きつけて、学園を視察中だった各国のギルドマスターや政府高官(VIP)たちが、SPを引き連れてぞろぞろとやってきた。

 彼らは全裸で倒れる伊集院親子を見て驚愕したが、その視線はすぐに、テントの奥の『厨房』へと吸い寄せられた。

「あ、ありえない……。見ろ、あの鍋の火加減を調整している男……アメリカの『雷帝』ジャック・サンダーボルトではないか!?」

「バカな! では、あそこでトマトを冷やしているのは、北欧の『氷の女帝』!? タマネギを刻んでいるのはフランスの国宝ジャン・ル・ブラン!?」

「ロシアの暗殺者アーニャまで、エプロン姿で盛り付けをしているぞ……!」

 世界の頂点に立つトップエリートたちが、ただの高校の模擬店で、汗だくになって下働きをしている。

 VIPたちの顔から、サーッと血の気が引いていく。

「ま、待て……! 彼らのような怪物を『アゴで使って』料理を仕切っている、あのポロシャツの男は……!」

「間違いない……。あの男こそ、日米露仏を完全に屈服させた、歩く世界最恐の災害(特異点)……『九条独立国』の王だッ!!」

 ドサッ!

 ドサドサドサッ!!

「「「ははぁーーーーッ!!!」」」

 VIPたちが、一斉に地面に膝をつき、テントに向けて深々と土下座を始めた。

 周囲の保護者や生徒たちは、何が起きているのか分からずポカンとしている。

「えっ? なんですか皆さん、いきなり土下座なんかして」

 俺はお玉を持ったまま、戸惑って首を傾げた。

「あの、スープならまだありますよ? もしかして、お金落としちゃいました?」

「い、いえ! 滅相もございません!! 我らのような下賎な者が、王の御前で立っているなど、恐れ多いことでございます!!」

「どうか、我々にもその神のスープを、おこぼれで構いませんのでお恵みください!!」

 各国のお偉いさんたちが、涙を流しながら500円玉を両手で掲げている。

「……お兄ちゃん。なんかもう、色々通り越してカオスだよ」

「……俺もそう思う」

 未緒の引きつったツッコミに、俺は深く頷いた。

 こうして、エリート学園のヒエラルキーは、一杯のミネストローネ(と俺の掃除術)によって、完全に、そして物理的に崩壊したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ