表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/64

第五章 妹のエリート学園文化祭で、オカンの掃除術が炸裂する

妹の文化祭に行きたい兄と、SPとして同行したがる世界最強の居候たち

「……ねえ、お兄ちゃん。本当に来るの?」

 土曜日の朝。

 アパート『ひまわり荘』の地下1階リビングにて、制服姿の未緒が、ため息まじりに尋ねてきた。

「当たり前だろ。唯一の保護者なんだから」

 俺は、昨日ホームセンターで買ってきた新品のデジタルビデオカメラのバッテリーを確認しながら、胸を張って答えた。

 今日は未緒が通う高校――『国立・第一探索者学園』の文化祭だ。

 国が莫大な予算を投じて設立した、将来のSランク探索者を育成するための超エリート校。生徒の9割が大企業の御曹司や有名探索者の血縁者という、バリバリの特権階級の集まりである。

 万年Fランク(清掃員)の俺の妹がそんな学校に通えているのは、未緒が奇跡的な確率で優秀な後衛支援スキルを発現させたからだ。

「お兄ちゃんが来てくれるのは嬉しいけど……うちの学校、性格悪いお金持ちばっかりだから、お兄ちゃんがバカにされないか心配で……」

 未緒が申し訳なさそうにうつむく。

 なるほど、Fランクの冴えない兄貴が来たら、肩身の狭い思いをするんじゃないかという、妹なりの気遣いだな。

 泣ける。いい子に育ったものだ。

「気にするな。誰に何を言われようと、俺は未緒の晴れ舞台(模擬店)を見に行くぞ。……よし、カメラの準備OK! スリッパも持った!」

 俺が意気揚々と立ち上がった、その時だった。

「Wait!! Bossが外の世界(外界)に出るだと!?」

 キッチンで生卵をジョッキ飲みしていたジャックが、目玉を飛び出させて叫んだ。

シェフのお出ましとあらば、我ら眷属が同行しないわけにはいかない!!」

「ええ! 師匠の尊き御身に、下界の薄汚れた塵が触れることなどあってはなりませんわ!」

 ジャガイモを剥いていたジャンと、紅茶を淹れていたカレンが、血相を変えて飛んできた。

 さらに、農作業着ジャージ姿のアーニャまでが、スパイ用のインカムを装着して現れる。

「……現在、九条国周辺に不審な気配なし。ですが、学園という不特定多数が集まる閉鎖空間は、テロリストの絶好の標的です。最高レベルの警護体制エスコートが必要です!」

「「「我らも同行(護衛)するぞ、湊(Boss/師匠/王)!!」」」

 四人の世界最強エリートたちが、俺の前にズラリと並んで直立不動の姿勢をとった。

「え、いや、ただの高校の文化祭なんだけど……」

 俺はドン引きした。

 保護者同伴の文化祭に、金髪のマッチョ、氷の女帝、フランスの聖騎士、ロシアの元暗殺者がゾロゾロついてきたら、完全に浮く。というか不審者だ。

「ダメだ! お前ら目立つから留守番してろ! 特にジャン、そのフルプレートアーマーで学校に行ったら一発で通報されるぞ!」

「なんと……! この栄光の鎧が、通報対象(不審物)だと……!?」

 ジャンがショックで膝から崩れ落ちる。

「Bossの言う通りだぜ。俺たちはあくまで『裏方(清掃員)』。悪目立ちして、九条国の威信に傷をつけるわけにはいかない」

 ジャックが腕を組み、深刻な顔で頷いた。

 おっ、珍しくジャックがまともなことを言っている。

「そういうことだ。だからお前らは家で……」

「ゆえに! 全員『シークレット・サービス(SP)』の正装に着替えるぞ!!」

「「「了解(ウィ/ダー)!!」」」

「……は?」

 数分後。

 俺の目の前には、絵に描いたような『超大物マフィアの護衛軍団』が完成していた。

 ジャックは、はち切れんばかりの黒スーツに真っ黒なサングラス。耳にはカールコードのイヤホン。完全にハリウッド映画のターミネーターだ。

 カレンは、スリットの入ったタイトな黒のスーツ姿。冷酷な美人秘書(怒らせたら氷漬けにされる)のオーラが漂っている。

 アーニャは、黒のパンツスーツに身を包み、鋭い眼光で周囲の『死角』を警戒し続けている。元・暗殺者の本領発揮だ。

 ジャンに至っては、白馬の騎士から一転、黒のロングコートを着こなす伊達男になっていた。懐にはセラミック包丁(元・聖剣)が忍ばせてある。

「……Boss、準備完了だ。アリ一匹、アンタに近づけさせねえぜ」

 ジャックが低い声で(無駄に良い発音で)言った。

「……お兄ちゃん。これ、絶対違う意味で浮くよ」

「俺もそう思う……」

 俺は、自分の服装を見下ろした。

 しまむらで買った1980円のポロシャツに、履き慣れたチノパン。

 どう見ても「休日のお父さん」である。

 そんな冴えない一般人の後ろに、ハリウッドスター顔負けの美男美女のSPが四人も控えているのだ。

 アンバランスすぎる。どこの弱小国の亡命王子だ。

「まあ、でも……アーマー着ていかれるよりはマシか」

 俺は諦めてため息をついた。

 せっかくの文化祭だ。こいつらも、毎日地下で農作業や掃除ばかりで息が詰まっていたのだろう。たまには外の空気を吸わせてやるのも、家主(王)の務めかもしれない。

「わかった。連れてってやるけど、絶対騒ぎは起こすなよ? あくまで『俺の知り合い』として大人しくしてろよ」

「ハッ! 御意のままに!」

 四人のSPたちが、一糸乱れぬ動きで深く頭を下げた。

「じゃあ、未緒。先に行ってるから、あとで学校でな!」

「う、うん……お兄ちゃん、気をつけてね(いろんな意味で)」

 未緒の引きつった笑顔に見送られながら、俺はアパートを出た。

 外の路地に一歩出た瞬間。

「対象(Boss)、外界へ移動! クリア!」

「右翼警戒! カレン、上空の魔力探知を怠るな!」

「了解しましたわ! 半径3キロ圏内の敵対存在は、即座に凍結します!」

「我は王の背後バックを死守する! 近づく者はみじん切りだ!」

 ……大人しくしろって言ったそばから、これである。

 近所の主婦たちが「あら、九条さんち、今日はお葬式かしら」「外国の借金取りじゃないの」とヒソヒソ噂している。

(……先が思いやられるな)

 俺はビデオカメラの入ったバッグを握りしめながら、超絶エリート校『第一探索者学園』へと向けて、重い足取りで歩き出した。

 このあと、自分たちが学園を根底から震撼させる特大の『嵐』になることなど、俺は知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ