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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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3/13

EP 3

行き止まりの壁? いいえ、それは『最高純度ミスリル』の鉱脈です

「あー……テステス。聞こえてますか? こちらはアビス第十階層。Fランク探索者の九条です」

 俺は震える手でスマホを構え、カメラに向かって語りかけた。

 画面の向こうには、今や1000人を超える視聴者がいるらしい。

 どういうバグかわからないが、トップページのおすすめに表示されているようだ。

「俺は今、パーティに見捨てられて遭難中です。装備も奪われました。もしこの配信を見ている人がいたら、ギルドに通報をお願いします……」

 必死に訴えるが、コメント欄の流れが速すぎて読めない。

 それに、なんだか様子がおかしい。

『なにこれ? 公式放送のジャック?』

『画質ヤバすぎだろ。8Kかよ』

『え、後ろにあるのキラーマンティスの死体? 10体くらいない?』

『CG乙。Fランクが深層で生きてるわけない』

『ネタ動画かよ解散』

 信じてもらえてない。

 そりゃそうだ。Fランクが深層で自撮りなんて、普通に考えれば合成かセットだろう。

「くそっ、これじゃ助けが来ない!」

 その時、遠くから新たな魔物の咆哮が聞こえた。

 ヤバい。血の匂いを嗅ぎつけて、他の魔物が寄ってきている。

 ここに留まるのは自殺行為だ。

「と、とにかく移動します! 隠れられる場所を探さないと」

 俺はスマホを握りしめ、反対側の通路へ走り出した。

 だが、運命は残酷だ。

 曲がり角を抜けた先は――行き止まりだった。

「嘘だろ……袋小路!?」

 背後からは、重い足音が近づいてくる。

 戻れば鉢合わせだ。

 前方には、黒曜石のように硬く、冷たいダンジョンの壁が立ちはだかっている。

 絶体絶命。

(終わった……いや、待てよ)

 俺は壁を見つめた。

 ダンジョンの壁は「破壊不可オブジェクト」だと言われている。

 ダイナマイトを使っても傷一つ付かない、世界で最も硬い物質の一つ。

 だからこそ、迷宮は迷宮として成立している。

 ――でも、俺の『解体』なら?

「……構造があるなら、壊せるはずだ」

 俺は壁に手を当てた。

 硬度、密度、魔力結合。すべてが「素材」の情報として脳内に流れ込んでくる。

 さっきの空間(結界)よりも、ずっと単純で物理的だ。

「邪魔なんだよ、どいてくれ!」

 魔力を込める。

 イメージするのは、壁という概念の「解体」。

 構成要素への還元。

「――『解体』ッ!」

 ズズズッ……ボガンッ!!

 轟音と共に、目の前の壁が崩れ去った。

 いや、崩れたのではない。

 壁を構成していた「成分」が分離し、その場に降り注いだのだ。

 カランカランッ、と高い音を立てて積み上がったのは、銀色に輝く金属のインゴットと、美しい宝石のような結晶体。

「えっ……穴が開いた?」

 壁の向こう側に、別の通路が見える。

 ショートカット成功だ。

 俺は安堵しつつ、足元に散らばった「元・壁」の残骸を拾い上げた。

「なんだこれ。銀? いや、プラチナか?」

 ずしりと重い。

 キラキラしていて綺麗だ。

 これなら、屑鉄屋に持っていけば数千円にはなるかもしれない。

「ラッキー。帰りの電車賃くらいにはなるかな」

 俺は奪われたリュックがないので、ズボンのポケットにそれを詰め込んだ。

 ポケットがパンパンに膨らむ。重くてズボンがずり落ちそうだ。

「よし、この穴から逃げよう」

 俺は穴をくぐり、安全そうな場所へと移動した。

 その背後で、スマホのコメント欄が発狂状態になっていることにも気づかずに。

『は?』

『え?』

『ちょ、ま、待って待って』

『今、壁壊した? 素手で?』

『いやいやいや、あの輝き見ろよ!』

『あれ、ミスリルだろ!? しかも純度100%の「天銀」クラスじゃん!』

『壁の中からミスリルが出たぞおおお!』

『深層の壁ってミスリル含有してたのかよ! 初耳だぞ!』

『電車賃って言った? あれ1個で家建つぞwww』

『国家予算持ち歩いてて草』

 視聴者数:50,000人突破。

 画面の隅で、拡散されたURLから野次馬が雪崩れ込んでくる。

 タイトルは『【悲報】Fランク探索者、ダンジョンの壁を物理的に解体してミスリル鉱山を発見する』へと、勝手に書き換えられて拡散され始めていた。

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