表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/64

EP 9

ダンジョンを『地下100階建て』に増築(解体)しました

「よし、資材はいっぱいあるな。それじゃ、サクッと間取りを作っていくか」

 俺は、さっきまで『古代ゴーレム』だった砂利の山を前に、腕まくりをした。

 この地下空間は無駄にだだっ広いが、居住用としては仕切りがない。いわゆるワンルーム(推定ドーム球場3個分)だ。

 これじゃプライバシーがないし、何より暖房効率が悪い。

「Boss……。一応言っておくが、その砂利、ただの石じゃねえぞ。神話の金属『オリハルコン』と『ヒヒイロカネ』が混ざってる。城が建つどころか、国が買えるレベルの超高級素材だ」

 ジャックが、足元のキラキラ光る砂利を震える手で掬い上げながら言った。

「ヒヒイロカネ? ああ、なんか赤っぽい石だな。レンガ代わりにちょうどいい」

「……Oh、My God。価値観の崩壊ブレイクダウンだ」

 ジャックは頭を抱え、カレンは「さすが師匠! 素材の真価を見抜く慧眼!」と的外れな拍手をしている。

 俺はデッキブラシを指揮棒のように構え、広大な地下空間の「壁」と「床」を睨んだ。

 イメージするのは、快適なマンション。

 いや、どうせタダの土地ダンジョンだ。もっとデカくてもいい。

 俺は脳内で、このダンジョン全体の構造をスキャンした。

 地下深くへと続く、何層にも重なった巨大な迷宮構造。

「……よし、床をぶち抜いて、下まで繋げるか」

 俺は、足元の分厚い岩盤(迷宮の床)に向けて、ブラシを突き立てた。

「――『構造解体・再構築フル・リノベーション』!」

 ドゴォォォォォォンッ!!

 凄まじい轟音が地下空間に響き渡った。

 破壊ではない。再編だ。

 何万トンという岩盤が、まるでテトリスのブロックのように綺麗に分離し、空中で形を変えていく。

 同時に、集めておいた「オリハルコンの砂利」が溶け出し、新たな柱や壁として組み上がっていく。

「な、なんだ!? 地面が沈んで……いや、空間が広がっている!?」

 ジャックが悲鳴を上げた。

 俺たちが立っていた床の中央が、巨大な吹き抜けとなって遥か下層まで貫通したのだ。

 その吹き抜けに沿って、螺旋状の階段と、各階層への広大なフロアが形成されていく。

 1層、10層、50層……。

 迷宮の「壁」や「罠」として存在していた無駄な構造物を全て『解体』し、快適な居住空間(フローリング張り)へと再構築していく。

 照明の代わりに、倒したモンスターから取れた「特級魔石」を天井に埋め込むと、シャンデリアのように優しく発光した。

 キュイイイイン……!

 数分後。

 光と轟音が収まった時、そこには――。

「……できた」

 俺は額の汗を拭った。

 見下ろせば、地底の底まで続く、煌びやかな『地下100階建ての超高層(深層)マンション』が完成していた。

 各階には、オリハルコン製の頑丈な防音ドアが完備されている。

「……Crazy……。たった数分で、神の迷宮を、巨大なビルディングに変えちまった……」

 ジャックが膝から崩れ落ちた。

 カレンも「ああっ、師匠の創られたこの神殿……ここに住めるなんて、私は果報者です!」と床に頬ずりしている。

「よし、間取りの割り当てだ。ジャック、お前は騒がしいから地下99階な」

「Yeah! サンキューBoss! 一番広いペントハウス(最下層)だな!」

「カレンは地下98階だ。勝手に上の階(俺の部屋)に上がってくるなよ」

「そんな! 毎朝のお世話はどうすれば!」

 文句を言い合う二人を尻目に、俺は満足げにうなずいた。

 これで、六畳一間の酸欠アパートから解放される。

「お兄ちゃーん? 下からすごい音したけど、何やって……えっ?」

 そこへ、上のアパート(押し入れ)から、ハシゴを伝って未緒が降りてきた。

 彼女は、眼下に広がる「地下100階建ての超豪華マンション(シャンデリア付き)」を見て、完全にフリーズした。

「……お兄ちゃん。これ、何?」

「俺たちの新居だ。広いだろ? 未緒の部屋は地下1階な。防音完璧だから、推しのライブ映像も大音量で流せるぞ」

 俺はドヤ顔で言った。

 だが、未緒の顔は引きつっていた。

「そういう問題じゃない!!」

 未緒が俺の胸ぐらを掴んで揺さぶった。

「これ、建築基準法とか大丈夫なの!? 勝手に地下100階も掘って、地盤沈下とかしないの!? てか、これ絶対、固定資産税ヤバいよ!」

「あ……」

 俺は盲点を突かれて固まった。

 固定資産税。

 こんなオリハルコンだらけの100LDK(地下)、もし役所にバレたら、一体いくら請求されるんだ?

「だ、大丈夫だろ。地下室は容積率の緩和措置があるって、ネットの受け売りで聞いたことあるし……。それに、外からは見えない隠し部屋ダンジョンだし」

「誤魔化せる規模じゃないでしょバカ! こんなの、人工衛星とか魔力探知機から見たら一発でバレるわよ!」

 未緒の言う通りだった。

 俺はただ「部屋を広くしたかっただけ」なのだが、特級ダンジョンを丸ごと「俺色」に書き換えたことによる魔力波紋は、すでに地上へと漏れ出していたのである。

 ◇

 同時刻。

 ワシントンD.C.、ホワイトハウス地下の戦略司令室。

 そして、東京の首相官邸。

 世界中の「魔力観測所」で、異常を知らせるレッドアラートが鳴り響いていた。

『大統領! 日本の東京にて、史上最大クラスの魔力変動を観測!』

『特級ダンジョンが……消滅しました! いえ、構造そのものが書き換えられ、全く未知の「何か」に変貌しています!』

『震源地は……あの九条湊の居住アパートです!』

 報告を受けた各国首脳たちは、戦慄と共に立ち上がった。

「また、あの清掃員(九条)か……!」

「彼はいったい、自分のアパートの地下で何を造り出したというのだ……大量破壊兵器の工場か!? それとも独立国家か!?」

 世界中がパニックに陥る中。

 張本人である俺は、地下1階のリビング(元ボス部屋)で、快適になった特大ソファに寝転がり、鼻歌交じりにテレビを見ていた。

「いやぁ、やっぱ広い部屋は最高だなー」

 世界を巻き込む大騒動が、アパートの玄関先まで迫っているとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ