表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/64

EP 6

全米No.1、泣きながらイカを焼く(報酬は金塊10トンです)

 東京湾の沖合。

 ピカピカにリフォームされた元・幽霊船の甲板には、香ばしい醤油の香りが漂っていた。

「……うまい」

 俺は、割り箸に刺した「クラーケンの姿焼き」を頬張り、海風に吹かれていた。

 新鮮なイカだ。身がプリプリで、噛むほどに甘みが出る。

 最高だ。これぞ仕事終わりの一杯コーラに合う。

「Hey, Jack……。火加減が弱いぞ。そこ、もう少し強火(10万ボルト)で頼む」

「Yes……Boss……」

 俺の目の前では、全米No.1ヒーロー、ジャック・サンダーボルトが涙目でイカを焼いていた。

 指先から微弱な電撃を放ち、網の上に乗ったイカを絶妙に加熱している。

 これがSSSランクの雷魔法の無駄遣いだ。

「ちくしょう……! 悔しい……! 悔しいけど……!」

 ジャックは焼けたイカを口に運び、声を震わせた。

Deliciousうまいだ!!」

「だろ? 鮮度が違うからな」

「Why!? なぜ俺の雷撃ギガ・ボルトは通用しなかったのに、Youの包丁デッキブラシは通じたんだ!?」

 ジャックが俺に詰め寄る。

 その目には、もはや侮蔑の色はない。あるのは、理解できない未知の強者への、純粋な好奇心と敬意だ。

「相性だよ、相性」

 俺は適当に答えた。

「ジャックさんの雷は『破壊』だろ? でも、汚れ(スライムや幽霊)ってのは、壊すと飛び散るんだよ。だから『分解』して『浄化』する。それが掃除の基本だ」

「Cleaning……Is……Power……?」

 ジャックがブツブツと呟き、何かを悟ったように天を仰いだ。

「Oh my god……。俺は間違っていた。力こそパワーだと思っていたが、真の強さは『綺麗にする心』にあったのか……!」

 なんか勝手に深い解釈をしてくれたらしい。

 ジャックは突然、その場に土下座(DOGEZA)した。

「頼む、Boss! 俺にも教えてくれ! その『解体クリーニング』の極意を!」

「え、嫌だよ。暑苦しい」

「Noと言わないでくれ! 俺は生まれ変わる! 今日から俺の名前は『ジャック・クリーナーボルト』だ!」

 名前変わってるし。

 横でカレンが「あら、新入り? 私の後輩になるんだから、まずは雑巾がけからね」と先輩風を吹かせている。

 ……どうしよう。アパートに筋肉ダルマまで増えたら、床が抜ける。

 ◇

「あ、そうだ。最後に仕上げやっとくか」

 俺はジャックを放置して、船縁に立った。

 海面を見る。

 幽霊船団のヘドロは消えたが、海底にはまだ「沈殿物」が溜まっているはずだ。

 長年、この船団が撒き散らしていたゴミや、沈没した船の残骸だ。

「海の底も掃除しないとな。魚が住めない」

 俺はデッキブラシを海に向けた。

 イメージするのは「底引き網」。

 海底の泥の中に埋もれた「固形物」だけを吸い上げる。

「――『海底清掃サルベージ』」

 ゴゴゴゴゴ……!

 海面が盛り上がった。

 俺の魔力に引かれ、海底から大量の「ゴミ」が浮上してくる。

 錆びた鉄くず、腐った木材、そして――

 ジャララララッ!!

 夕日に照らされ、黄金色の輝きが甲板に降り注いだ。

「……ん?」

 俺は目をぱちくりさせた。

 甲板に山積みになったのは、ゴミではない。

 金貨。宝石。金の延べ棒。そして王冠や宝剣などの装飾品。

「What!?」

「こ、これは……!!」

 ジャックが飛び退き、駆けつけた佐久間(政府役人)が眼鏡を落とした。

「海賊の財宝……!? それに、かつて沈没した御用船の積荷か!?」

 佐久間が震える手で金塊を拾い上げる。

「く、九条先生! これ、歴史的発見ですよ! ざっと見積もっても数百億……いや、歴史的価値を含めれば数千億円になります!」

「へぇ。すごいゴミですね」

 俺は興味なさそうに言った。

 俺にとっては、これもただの「海底の不法投棄物」だ。

「これ、俺が貰っていいんですか? ゴミ処理代として」

「も、もちろんです! 法律上、発見者の所有物になりますから! ……というか、これだけの国家予算レベルの財源があれば、消費税廃止も夢じゃないかも……」

 佐久間がブツブツと計算を始めている。

「Boss! あんた、金まで『掃除』しちまうのか!?」

「師匠……素敵です。黄金にまみれても、その瞳は少しも濁っていない……!」

 ジャックとカレンが、また勝手に感動している。

「はぁ……。重いから換金しといてください。あと、このイカも持って帰ります」

 俺は大量の金塊ゴミとイカ(食材)を前に、大きなため息をついた。

 これでまた、口座の残高がバグるな。

 未緒になんて説明しよう。

 ◇

 数日後。

 アパートに帰った俺を待っていたのは、未緒の説教と、さらにカオスになった日常だった。

「お兄ちゃん! 通帳の桁がおかしいんだけど! 『¥50,000,000,000』って何!?」

「ゴミ拾いのお駄賃だよ」

「お駄賃のレベルじゃない!」

 そして。

「Boss! 風呂掃除完了したぜ! 俺の雷でカビを焼き尽くしてやった!」

「師匠! 夕食の支度ができました! 今日はイカ尽くしです!」

 狭い6畳間に、エプロン姿のSランク美女と、割烹着を着たSSSランクのマッチョがひしめき合っている。

 むさ苦しい。狭い。

 でもまあ、洗濯機は新品になったし(ジャックが弁償した)、部屋はピカピカだ。

「……ま、悪くないか」

 俺はイカの唐揚げを口に放り込み、苦笑した。

 東京湾を救い、世界最強を舎弟にし、大金持ちになった俺。

 でも、やることは変わらない。

 明日もまた、世界のどこかを「掃除」しに行くだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ