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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 1

俺を囮にして逃げたパーティへ。装備まで奪うのは酷くないですか?

「悪いな、九条。ここでお別れだ」

 ダンジョンの薄暗い通路に、冷酷な声が響いた。

 Cランクパーティ『銀の牙』のリーダー、剛田ごうだが、ニヤニヤと歪んだ笑みを浮かべて俺を見下ろしている。

「……え? 剛田さん、何を言って」

「だから、おとりになれっつってんだよ!」

 ドカッ、と腹を蹴り上げられた。

 肺から空気が漏れ、俺――九条湊くじょうみなとは、冷たい石畳の上を無様に転がる。

 ここは『大迷宮アビス』の第十階層。

 推奨レベルはCランク以上。俺のような魔力なし、身体能力なしのFランク探索者が足を踏み入れていい場所じゃない。

 それでも俺がここにいるのは、彼らの「荷持ち(ポーター)」として雇われたからだ。

「おい、起きろよゴミ。ボス部屋の『守護獣』がもうすぐ起きるんだ」

 剛田が指差した先には、巨大な扉がある。

 その隙間から、禍々しい魔力が漏れ出していた。

 本来なら、前衛が盾を構え、後衛が魔法を準備して挑む場所だ。

「お前が突っ込んで注意を引け。その隙に俺たちが横をすり抜けて、奥にある宝箱だけ回収する」

「そ、そんな……死にますよ! 俺には戦う力なんて!」

「知るかよ。それがFランクの仕事だろ?」

 剛田の後ろでは、魔法使いの女とヒーラーの男もクスクスと笑っている。

 あぁ、こいつら最初からこのつもりだったのか。

 報酬を払う気なんてなくて、最初から俺を使い捨ての生贄にするつもりで……。

「嫌です! 契約違反だ! ギルドに訴えてやる!」

 俺は必死に立ち上がり、出口の方へ逃げようとした。

 だが。

「あ、そうだ。忘れてたわ」

 剛田が俺の襟首を掴み、背負っていたリュックサックを乱暴に剥ぎ取った。

「これ、置いてけよ」

「あっ、返してください! それがないと!」

「ポーションに食料、それに魔石か。結構入ってるじゃねえか。お前が持ってても豚に真珠だろ?」

 それだけじゃない。

 俺が着ていた『革の胸当て』――安物だが、必死に貯めた金で買った唯一の防具――のベルトまで切断され、剥ぎ取られた。

「装備、返して……! それがないと、俺……」

 妹の治療費……じゃない、あいつの借金返済のために、今日どうしても金が必要なんだ。

 この装備を奪われたら、明日からの探索もできない。

「うっせえな!」

 剛田の拳が、俺の頬にめり込む。

 視界が明滅し、俺は再び地面に倒れ込んだ。

 意識が遠のく中、彼らが扉の横の安全地帯セーフティゾーンへ走り去っていくのが見えた。

「じゃあな、Fランク! せいぜい派手に食われてくれよ!」

「動画撮っとけばよかったな~、アハハ!」

 嘲笑が遠ざかる。

 そして。

 ゴゴゴゴゴ……。

 重い地響きと共に、ボス部屋の扉がひとりでに開いた。

 暗闇の奥から、赤い光が二つ、また二つと浮かび上がる。

 鼻を突く腐臭。

 『守護獣』キラーマンティスの群れだ。

「……はは」

 乾いた笑いが出た。

 武器なし。防具なし。アイテムなし。

 あるのは、借金まみれの人生と、何の役にも立たないゴミスキルだけ。

 俺のユニークスキルは『解体』。

 倒した魔物の死体を、肉や皮に切り分けるだけの生活魔法だ。

 戦闘には1ミリも役に立たない。だから俺は、万年Fランクの荷持ち止まりだった。

(死ぬのか、俺)

 鎌を振り上げた巨大なカマキリが、目の前に迫る。

 恐怖で足が動かない。

(嫌だ)

 脳裏に、妹の顔が浮かんだ。

 『お兄ちゃん、今月のクレカの引き落としヤバいんだけどー』

 あいつ、俺が死んだら誰に金をせびるんだよ。

 俺がいなきゃ、あいつは路頭に迷う。

(死ねない。こんな、クズみたいな奴らに殺されてたまるか!)

 怒りが、恐怖を塗りつぶした。

 俺は無意識に、迫りくる死の鎌に向かって右手を突き出していた。

 武器はない。

 魔法も撃てない。

 使えるのは、このゴミスキルだけ。

「……『解体』ッ!!」

 ヤケクソで叫んだ、その瞬間。

 バキンッ!!

 世界が、ノイズのように歪んだ。

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