第六章 SNSダイエット企画に挑戦!
フォロワー一万人突破を機に、美咲は「公開ダイエット企画」を始める。だがスクワットで酸欠、腹筋で腰を痛め、ついにはケーキを食べて寝落ち。失敗続きの配信は逆にバズり、フォロワーはさらに急増。美咲は「完璧じゃなくても、笑ってくれる人がいる幸せ」に気づいていく。
夏休みの真ん中。ある朝、美咲はベッドでごろごろしながらスマホを見て、思わず声を上げた。
「えっ……フォロワー一万人いってる!?うそでしょ!」
寝ぼけた頭が一気に覚めた。
プロフィールの数字は確かに「10,000」を超えている。
(ちょっと待って……私、今まで何したっけ……? 食べ過ぎて失敗して、それを投稿して笑われただけじゃない……?)
だが冷静になる暇もなく、通知欄は「おめでとう!」「失敗の女王ばんざい!」というコメントで埋まっていた。
(……これはチャンスかもしれない!)
胸に火がついた美咲は、勢いのままツイートを打ち込んだ。
> 「【重大発表】フォロワー1万人ありがとう!
明日から1週間、毎晩20時にライブ配信で“公開ダイエット”します!
一緒に運動してくれる人募集!! #公開ダイエット #絶対成功」
投稿した瞬間、通知が爆発した。
「草」
「絶対無理」
「三日坊主予告編ありがとう」
「でも見に行くわ」
「お前が成功したら課金する!」
冷やかしと応援が入り混じるコメントの嵐を見ながら、美咲はにやりと笑った。
「ふふん……今度こそ本気を見せる!」
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翌日の夜八時。
部屋の片隅にヨガマットを敷き、スマホを三脚に固定する。
「よし……緊張するけど、やるしかない!」
配信開始。
「みなさーん、こんばんは!ダイエット女子大生の美咲です!今日から毎日、一緒に頑張りましょう!」
コメント欄が一気に流れる。
「きたーーー!」
「背景がカオスw」
「机にポテチの袋見えてるけど」
「えっ!?あ、これは昨日食べたやつ!今は関係ないから!」
慌てて画面の外にポテチをどけるが、もうスクショされて拡散済み。
「証拠隠滅w」
「初日から敗北」
笑いの渦に飲まれながらも、美咲はスクワットを始めた。
「いーち、にーい、さーん……」
最初の十回は笑顔。しかし二十回目で膝がガクガク。
「じゅっ、じゅうはち……はぁ……にじゅ……あ、無理かも……」
汗が額を流れ、声は震え、姿は必死すぎてシュールだった。
コメント欄は爆笑の雨。
「実況より呼吸がやばい」
「音声が喘ぎ声になってるぞ」
「でもがんばれw」
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二日目。
「はぁ……筋肉痛で階段降りるのもしんどかった……でもやる!」
今日は腹筋配信。
仰向けに倒れ、両手を頭の後ろに組む。
「いちっ!」
「にっ!」
三回目。
「ぐっ……腰がっ……いたぁぁぁ!」
思わず悲鳴。
「ちょwww」
「まさかの負傷」
「救急車スタンバイ案件」
「い、いや、これはちょっと力が入っただけだから!」と必死に取り繕い、ストレッチ配信に切り替える美咲。
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三日目。
「今日は……軽めに有酸素やろっかなー」
そう言いながら画面に映ったのは、ショートケーキ。
「は???」
「運動じゃなくて補給www」
「この人ほんと期待を裏切らない」
フォークを手に誇らしげに微笑む美咲。
「糖分は大事だから!これは科学的に必要!」
パクッ。
「んん~~~~幸せ……!」
視聴者は大爆笑。タグ「#公開飯テロ」が勝手に生まれ、トレンド入りした。
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四日目。
「今日はストレッチから始めます!」
意気込んだはずが、開始五分であくびが連発。
「ふぁ~~あ……」
「寝るなw」
「睡眠配信は草」
結局ストレッチをしながらベッドに転がり、そのままゴロゴロ。
「これ……ちょっと横になると……楽……」
次の瞬間、すやすやと寝息が響き始めた。
「えwww」
「マジで寝たぞw」
「奇跡の寝落ち生配信」
枕元にはポッキーの箱。画面には無防備に寝顔を晒す美咲。
コメント欄は一晩中「かわいい」「ポッキー主役」と盛り上がり続けた。
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翌朝、美咲はスマホを見て飛び起きた。
「ちょ、なにこれ!?再生回数十万超えてるんだけど!?」
通知欄はフォロワー増加報告で埋まっていた。
数は一万五千を超えている。
「なんで!? 私、失敗しただけなのに……」
しかしコメント欄を読み進めるうち、胸の奥に何かが広がっていった。
「完璧じゃなくていい、失敗してる姿が面白い」
「努力してなくても正直で好き」
「ダメなとこが共感できる」
「……そうか。私、失敗してても……笑ってくれる人がいるんだ」
呟きながら、美咲は新しい投稿をした。
> 「【結果報告】一週間チャレンジは寝落ちで終了しました!
でもフォロワーが増えて、みんなが笑ってくれて幸せです。
#失敗女子 #それでも幸せ」
通知音がまた鳴り止まない。美咲は枕に顔を埋め、笑った。
第六章は、美咲の“失敗が魅力に変わる瞬間”を描きました。彼女の配信はダイエットとしては失敗だらけ。でも、その正直さ、飾らない姿に人が惹かれていく。美咲が少しずつ「自分を受け入れる」第一歩でもあります。