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1-9 振り回される日常と自室のゲーム機

前回の続きです。

現実世界では母親に振り回される主人公が抜け出すチャンスを利用する場面です

 母である香苗の強引に連れて行かれた巧実は、買い出した食材やビールなどを倉庫に入れる仕事に追われている。

「巧実っ、倉庫からウーロン茶を厨房の冷蔵庫に入れてっ! 今、稼ぎ時だからっ!」

 と言って香苗は、働き詰めで疲れ切っている巧実を容赦なく扱き使う。

 仕方なく香苗に従う巧実は、激しい肉体労働でヘトヘトになりふらついている。

 ふらつく巧実に、情け容赦なく喝を入れてくる香苗。

「まだ一時間も経っていないのにだらしない。彩ちゃん、フロント係までして元気いっぱいだというのに。気合いよ、気合いっ!」

 彩の場合は陸上部で鍛えられているが、巧実の場合は普段から長時間の力仕事に関してはヘトヘト状態になりやすく心の中で不満が募る。

(彩と比べんなっ! 俺、脳筋じゃねえってっ!)

 その上、香苗は家事だけでなく店の仕事を熟すほどの有り余る体力と気丈なメンタルを併せ持つ陽キャモンスター。

 陰キャな巧実にとっては、必要以上にスタミナを消耗するので苦手な相手である。

「終わったら、ビール樽をサーバーに繋げてっ! 後、一時間で開店だから急いでっ!」

 と言って指示を出す香苗に、疲れた体でアルミ製のビール樽を倉庫から一樽持ち出す巧実は苦悶の表情を見せる。

(重いって、こんな大きな樽っ! でも、これって未成年が酒類を扱っていいのかっ?)

 と疑問に思う巧実だが、香苗の容赦ない怒号が飛ぶ。

「巧実っ、何ボーとしているのっ! 開店時間に間に合わないから急いでっ!」

 香苗の怒号に驚いた巧実は、必要以上に怒らせないようキビキビ動くしかない。

 巧実の部屋には、電源の入れっぱなしの携帯ゲーム機から聞こえてくる女子三人組の悲鳴のような騒がしい声が聞こえてくる。

 異世界ゲームで巻き起こる事件に知る由もなく、一階店舗の手伝いを強いられ巧実は何とかして逃げるチャンスを伺うことしか出来ない。

 開店してから一時間後、ゴールデンウイークだけに店内は賑わいを見せている。

「あれっ、彩ちゃんいないのっ? すこし、寂しいねー」

 と客人の一人が言うと、店長である香苗は笑顔で接客する。

「今日、彩ちゃん急にこれなくなって。でも、サービスするから盛り上がっちゃって」

 一応、近所の女友達の数人が手伝いでフロント係をやっている。

 巧実はと言うと、相変わらず体力勝負のバックヤードの仕事を強いられる。

 店長である香苗に振り回される巧実は、配達で届いた食材や飲み物などを倉庫に搬入したり頼まれた食材などを厨房に運んだりしている状態が続いている。

 慣れない仕事に疲れている巧実は、足下がふらついて今にも倒れそうな状態。

 そんな中、店の外でケンカが勃発する想定外のトラブルが起きてしまう。

「おそらく、順番待ちの列にマナーの悪い人が割り込んできたようね」

 と言いながら店を出る香苗を見た瞬間、チャンスを逃さない巧実はフロントの女性の一人に一言告げて三階に逃げ込む。

「ゴメンっ、お腹壊したからトイレっ!」

 ようやく、店の仕事から逃げ出すことが出来た巧実は三階の自室に戻ってゲームを再開すると異変に気づく。

 なんと、拠点の段々畑が無情にも荒らされている。

 しかも、機械のような体付きをした鈍い金属色の巨大なゴーレム三体が豪快に掘り起こしながら暴れ回る光景を目の当たりにする。

 何事かと思って女子三人組を探すと、指示を守ったのが幸いして拠点内の地下工房で身を寄せ震えながら身を寄せている。

「いっ、一体っ、何が起きてっ?」

 と言って状況を把握しようとする巧実に、女子三人組は恐怖に震えた表情で各々の見解で状況を伝える。

「本多君っ、これって何のイベントなのっ! それに、あの巨大な機械生命体は何っ?」

 と言って困惑する紬久美は身を寄せ合って守るのみ。

「あーし達っ、巧実っちに言われたとおり拠点から一歩も出ていないから大丈夫っ!」

 と言って危ない状況だというのに至って楽天的な早希。

「それより、巨大バケモノ達を退治してよっ! ボクっ、機械を見ただけで鳥肌がっ!」

 と言ってメカ音痴の彩は巨大ゴーレムを見ただけで体の震えが止まらない。

 女子三人組から聞き出した情報から巧実は、

(運営側からの情報も無ければ、襲撃イベントが発生する条件は何一つ満たしていない筈なのに……。まさか、見ず知らずの誰かが暴れているとでも……?)

 と交錯しながら状況を把握することに徹する。

 間違いなく言えることは、知らない誰かに拠点を荒らされている事実。

 このままでは危険と判断した巧実は、自分のアバターをゲーム内の拠点に送り込む。

「取り敢えず、みんなは拠点から一歩も出るなっ! 絶対っ、拠点から出るなっ!」

 と念を押すように言い残して、怒りに満ちた表情で拠点の外に出る巧実。

 そして、暴れ回る三体の巨大ゴーレムに怒鳴り散らすように警告する。

「おいっ、ここで好き勝手に暴れ回るなーっ!」

 すると、三体のゴーレムの一体が邪険な返事をする。

『うるせぇーっ! こっちは、救世主メシア様に導かれた者を探し出している最中だっ!』

 声を聞いた瞬間、先日に蹴散らしたギルドの勧誘してきた不良三人組の一人だと確信した巧実は怒りのスイッチが完全に入り容赦する気は全くない。

「黙って失せてくれたら見逃したが、どうやら貴様らは徹底的に叩きのめされないと分からないようだなっ!」

 と言って巧実は、懐から一つのメモリデバイスを取り出すと主装備の特徴的な大薙刀の鍔に差し込む。

 すると、巧実の背後から巨大なゴーレムが突然姿を現す。

 出現したゴーレムは、巧実の装備と同様に和と西洋が混じった装甲に覆われ額に装着された二本の真っ直ぐなアンテナは鹿の角を連想させる。

 巧実は、険しい表情を崩すことなく巨大ゴーレムに乗り込む。

 その姿は、如何にも主役機登場を連想させる。

 だが、敵である三体の巨大ゴーレムは無視して掘り起こす作業を止めようとしない。

 一体の敵ゴーレムが硬い素材に当たる手応えを感じた瞬間、背後から強烈な一撃で糸の切れた人形のように吹っ飛ばされる。

 二体の敵ゴーレムは、仲間のゴーレムが飛ばされて初めて作業を中断して周囲を見渡す。

 すると、巧実が乗り込む巨大ゴーレムが巨大な薙刀を構えて攻撃態勢を整えている。

「てめーらっ、俺を無視するとはいい度胸してるなっ! 救世主様か誰様かは知らねーが、拠点の畑を荒らしたことを後悔して貰うぞっ!」

 と言って自分の操る巨大ゴーレムで敵三体の巨大ゴーレムを倒す気満々の巧実。

 倒す気満々な巧実の操る巨大ゴーレムを見て、三体の敵ゴーレムが本気を出したのか各々の武器を構えて戦闘態勢を整えると取り囲むように動き出す。

 囲まれそうな状況だというのに、武器を構えて戦闘態勢だというのに余裕を感じる巧実の操る巨大ゴーレム。

「やっと、本気を出したようだな。お前達にタダカツを出すのは少し勿体ねーが、二度と荒らし回らないように叩き潰すとしますか」

 と言う巧実は、誰が相手になるか周囲を確認する。

 まるで、時代劇の殺陣でよく見る主人公のようにも見える。

 その頃、地下空間で巧実に言われたとおり避難する女子三人組。

 そんな中、彩が何かのスイッチを偶然に触れてしまい別のモニターが起動してしまう。

 当然、巧実の操る巨大ゴーレムが敵三体を相手にする様子が映し出される。

「あっ、あわわっ、ゴメンナサイっ! ボク、また変なスイッチを押しちゃったっ!」

 と言って、頭の中はパニック状態の彩。

 だが、紬久美と早希にとって外の現状を知ったことが好都合と捉える。

「いやっ、彩ナイスよっ! このまま、ヤドカリは私のプライドが許さないわっ!」

 と言って、何とかして仕返したい気持ちが込み上げる紬久美。

 紬久美と同様、何かが閃く早希は二人に提案を持ち掛ける。

「クズ明のヤツっ、まだ変身解除していなかったわよね。そうだ、あの装甲車の大砲で一矢報いましょ。たしか、あの装甲車の名前ってチェンタウロだった筈っ!」

 早稀の提案を聞いた瞬間、怖かったのか彩が反対意見を主張する。

「でも、タク兄から「出るな」と言われているからダメだよ」

 早稀の提案に賛同した紬久美は、

「やりましょうっ! いくら強くても、相手が三人は分が悪いわっ!」

 と言って丘の向こう側にいる戦闘偵察車の宗明の所へ駆け足で向かう。

 早希も「そうこなくっちゃ」と言わんばかりで同行すれば、後輩の立場である彩は先輩達に渋々従う形で同行する。

 同じ頃、背後の敵ゴーレムを一刀両断で破壊する巧実の操るゴーレムは目の前の二体に標準を合わせ攻撃は整っている。

 まさか、女子三人組が攻撃に加わる事を巧実は知るはずも無く。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は今週の土曜日の予定にしています。

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