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4-13 その後

前回の続きになります。

事件解決した後日談となっています。

 五月五日(こどもの日)、都市伝説のような失踪事件に巻き込まれた人々がゲーム会社前で発見された後日談。

 事件の被害者は、健康状態を確認すべく病院へ直行。

 当然、その中に紬久美や彩を始め暴走OS討伐作戦に協力した仲間達も同様である。

 記憶の欠落がなければ、健康状態は至って健康その物。

 だが、早希の右膝の古傷が残っているのは変わらず。

 医師の診断が終われば、次に待ち受けるのは病院に派遣された警察関係者の事情聴取。

 警察の事情聴取もしっかり対応して、解放されたのは昼下がり。

 同じ頃、最初から現実世界で事件解決に動いていた巧実も警察へ出頭し事情聴取へ。

 巧実は、これまで経験した出来事や出向いて知ったことを担当する警察官に包み隠さず話す。

 彩がゲームの世界に転送された当時のこと、ゲームの世界に転送された仲間達をサポートしながら現実世界で色々と動き回ったこと。

 そして、香苗から聞いた昔の出来事や出向いて知ることになった望月先生が二十七年前の事故が原因で暴走OSメシアに寄生された誰もが信じられない事実。

 事情聴取が終わったのは正午前、近くのそば屋で昼食を取った巧実は昨日までの疲れが急に出てきたのか自室に戻ると夕方まで眠りに就くのであった。

 証拠として押収された古いノートパソコンは、想像以上の負荷によってSSDやハードディスクなどの記憶媒体を中心とした部品が損傷し起動すら出来ない状態。

 なんとかして抽出したデータも、修復は不可能なくらいに酷く欠落している。

 会社のサーバの膨大なデータも押収したが、未だに重大な謎を残している。

 何故、人間がゲームの世界へ転送されたのか?

 そして、ゲームの世界に転送された人間が現実世界に戻ることが出来たのか?

 鍵を握っている暴走OSメシアが消滅した今、原理すら分からず未解明で再現すら出来ない状態。

 その手掛かりを握っている望月先生も、二十七年間の記憶は完全に失い心だけは時が止まった中学生から動き出したばかり。

 それもそのはず、二十七年間の間は寄生された暴走OSの元となったメサイアの端末として操られ本人の記憶や人格は完全に隔離されていた身。

 当然、尋問しても望月先生は「分からない」とか「思い出せない」と首を横に振って返答するのみで証言は得られず。

 その後、望月先生も被害者の一人と判断されお咎めナシで釈放。

 だが、二十七年の記憶を消失した今は教師を務めることは不可能。

 望月洋子、教員生活に終止符ピリオドを打ち学校を去ることに。

 当面は、両親の元でリハビリに励みながら社会復帰を目指すが教員への復職は無理だろう。

 それより、一番の被害者は暴走OSメシアの手によって完全に記憶を奪われた人達。

 ネトゲ廃人も同然の状態で発見された後、要介護認定レベルで今も病院に入院している。

 もちろん、記憶を失い幼児退行した不良三人組も同様。

 信じられない話、失った記憶は会社のサーバに発見されて会社の誰もが騒動となる。

 恐らく、暴走OSメシアが消滅したことで奪った記憶が解放されたようだ。

 発見した記憶を被害者に戻す手段はなく、技術が確立するまで警察の関係機関が厳重に保管することが決まった。

 ところが、今までも悪事を知った不良三人組の親族は更正のため好都合と判断し拒否。

 後に中退することになった不良三人組は、知らない間に両親の故郷へ引っ越すことに。

 YouKユーキエンタープライズも動きがあり、緊急ヒアリングと内部調査で宇喜多の様々な悪行が公となる。

 なんと、スパイウェアを使用して他の社員が制作したゲーム関連のデータを盗んでいたのだ。

 当然、巧実の祖父である重信の企画書や制作途中のデータを同じ手口。

 さらに、十年前に大ヒットしたRPGゲームの続編として昨年のゲームショウで発表したゲームは若手社員が制作したゲームを盗用と発覚。

 しかも、大ヒットしたRPGゲームと世界観は無関係と判明。

 証拠となる映像もあるため、宇喜多と腹心二人に逃れる手立ては残されていない。

 その結果、宇喜多は副社長の座は降ろされただけでなく懲戒解雇。

 解雇は免れた腹心二人は、平社員に降格されただけでなく窓際部署へ左遷。

 その一方、久晴の祖父である重信は智晴の依頼を引き受ける形でシニアアドバイザーとして会社に復帰。

 重信が復帰した頃には、気まずくなったのか腹心二人は自主退職して行方知れず。

 後進の指導や相談役がメインとなるが、今は重信が制作したRPGゲームの続編を若手と共に企画から取り組んでいる。

 昨年、ゲームショウで発表したゲームなどは多くの意見や重信と制作者との共同監修により別タイトルとして販売することが決まった。

 今回、事件解決の立役者となった巧実だが何故か周囲からチヤホヤされないどころか不思議なことに普段通りの生活が送れている。

 彼が高校生である事に加え、都市伝説のような事件を信用する人が少なく多くの関係者の手によって上手く情報操作されたようだ。

 面倒事に巻き込まれるのが嫌な巧実にとっては、意外にも好都合で波音立てることなく事件について自ら話すことはなかった。

 例え、気づいた誰かが話し掛けたとしても巧実本人は自慢しないどころか見知らぬ素振りで去って行くだろう。

 こうして、都市伝説のような事件は静かに幕引きすることとなった。

 ゴールデンウィーク最終日の夕方、一階から巧実の母である香苗の声が聞こえてくる。

「巧実っ、お義父さんっ、ご飯よーっ!」

 香苗の声に反応した巧実は、寝ぼけ眼で一階の店舗へと降りてくる。

「巧実、この時間まで眠っていたのか」

 と言って呆れ顔の重信は、既に一階に降りてきていた。

「ジッチャン、一昨日まで散々振り回されて疲れが残っているというのに……」

 と言って反論する巧実は、目を擦って眠気が残っている。

 そんな寝ぼけ眼が覚めるような香りが巧実の鼻を擽り、

「晩飯、天丼っ?」

 と思わず言い当ててしまう。

 すると、香苗は笑顔を見せて献立を発表する。

「大正解っ、巧実のリクエストで出前を取りました。 晩ご飯、お蕎麦も用意したから沢山食べて」

 香苗の献立を聞いた瞬間、眠気が急に吹っ飛んだ巧実は席に座ると手を合わせた後にどんぶりの蓋を開ける。

 蓋を開けると、タレに染みたエビ天やかき揚げなどご飯が見えないくらいに天ぷらがぎっしり詰まっている。

 それを横目に重信は期待に胸を膨らませながら、

「ほおっ、巧実が好きそうなモノばかりだな。そうなると、ワシのも期待できそうだ」

 と言って笑みを浮かべどんぶりの蓋を開ける。

 ところが、重信の天丼にはタレの染みたご飯の上にアスパラの天ぷらが一本のみ。

 香苗の笑顔と自分の天丼を不思議そうな顔で何度も交互に見比べる重信は、ご飯の上に乗っかっている一本のアスパラの天ぷらを箸で摘まみ出して香苗に文句を言う。

「香苗、巧実の天丼は豪勢なのにワシの天丼はアスパラ一本っ? まるで、めざしご飯か猫まんまと変わんねーじゃねーかっ!」

 すると、香苗は当然のような態度で重信に反論する。

「三年間も行方を眩ませて私や巧実を心配させた分、お義父さんの天丼はアスパラ一本で十分っ! 本当なら、お蕎麦も抜きにしようと思ったくらいよっ!」

 当然、香苗の言い分が生意気に聞こえたのか猛反論する重信。

「香苗っ! ワシは、三年間も事件に巻き込まれた身じゃぞっ! せっかくの再会、この差はおかしいと言ってるのだろうがっ!」

「あらっ、誰のおかげで現実世界に戻れたのっ? 巧実は事件解決に貢献したご褒美っ! お義父さんはこれまで心配させた迷惑料の天引きっ! これでも文句あるっ!」

「こんなの食えるかっ! このっ、バカ嫁っ!」

「散々迷惑掛けてその言い草は何よっ! ボケ老人っ!」

 と重信と香苗の二人は、下手すれば今にも取っ組み合いに発展しそうなほどの口ゲンカを繰り広げる。

 それを尻目に巧実は、口ゲンカを続ける重信と香苗の二人を見ながらエビ天を一口食べた後にタレの染みたご飯を掻き込み、

(やっと、普段通りの日常に戻った。ジッチャンが行方不明になってから、母さん何処か張り合いがなかったからな。俺にとって、二人の口ゲンカは最高のご馳走だよっ!)

 と思って高みの見物をするのであった。

 まさに、漁夫の利を絵に描いたような食卓の光景。

 こうして、ゴールデンウィークは終わりを迎えるのであった。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は今週の土曜日の予定です。

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