4-5 悪夢……
お持たせしました、前回の続きになります。
暴走OS討伐で一致団結する中で眠りに就く主人公が悪夢にうなされる回です。
「……やっ、やっと、山一つ分は消し去った……」
と言って疲れる巧実と、疲れ切って言葉を失う紬久美と仲間達。
採掘の傍ら、ランダムで出現する敵MOBを戦闘経験が豊富な巧実と未琴と重信が対処し他は採掘作業に全力。
当然、採掘した鉱石の類いは宗明が重機に変身して建造途中の巨大戦艦を隠している地下渓谷へ運搬を繰り返す。
ゲームの時間で夜明けだが、現実世界の時刻は深夜をすっかり回っている。
当然、プレイ中の巧実は誰にも聞こえるくらいの大きな欠伸をする。
眠気に襲われている巧実だが、前の地下拠点を勝手にレイアウト変更された一件があり行動の監視を兼ねてプレイを続行する。
そのとき、明日のことを考えて紬久美が眠気と戦う巧実に命じる。
「巧実、明日のことを考えてログアウトしなさい。後は、私達に任せて」
それでも、巧実は徹夜覚悟でプレイを続行しようとする。
そんな巧実の行動を制止したのは祖父である重信が、
「巧実、お嬢様の言うとおりじゃ。心配なら、ワシが見張っておくから今日は寝なさい」
と言って就寝を促す。
紬久美と重信の言葉を聞いて、甘える形でログアウトする巧実。
「明朝、紬久美さんの家に向かう。後は任せる……」
と言い残してログアウトした巧実は、今日一日の疲れに勝てず自室のベッドに雪崩れ込む形で深い眠りに就いた。
その夜、深い眠りに就いた巧実は不思議な夢を見る。
巧実はゲームをプレイ中、紬久美が笑顔で手を振って去って行く姿が目に入る。
次に彩が笑顔で手を振って去って行く姿が目に入れば、早希と宗明が後からついて行く形で立ち去って行く。
さらに、他の人達が去って行けば知り合ったばかりの未琴や三年ぶりに再会した重信が去って行く。
巧実は追い掛けようとするが、何故か体が自由に動かせない。
そんな中、背後から言葉では言い表せない異様な悪寒を感じた巧実は振り向くと、目に入ったのか暗雲が漂う廃墟と化した都会の街並み。
いつ崩落してもおかしくないくらい立ち並ぶ朽ち果てた高層ビルなどの建物、ひび割れや欠落が目立つ舗装された路面には瓦礫が散乱。
そして、草木が枯れ人の気配が消えた不気味なほど静かで薄暗い雰囲気。
当然、荒廃した街に電気なんて通っているはずもなく、人の気配はおろか小動物の存在すら感じられない不気味な静けさしかない。
その異様な光景を目の当たりにした巧実は、この廃墟の街並みを見渡すと見慣れた建物を発見する。
「……こっ、これ……、俺の家……。まさか、ここって自分達の住んでいる下町っ?」
と言って驚く巧実は、荒れ果てた巧実の家に立ち尽くす。
まさか、暴走OSメシアの野望が実現した世界なのかっ?
それとも、広大な仮想現実の空間なのか?
現状を理解することが出来ず、頭の中が困惑して何度も見渡すことしか出来ない巧実。
そんな目を疑うように探索する巧実は、荒れ立てた家の中に古びた一台のノートPCが一回店舗のカウンター席中央に置かれているのを発見する。
一台のノートPCは、電気が通っていないはずなのに何故か稼働中である。
しかも、画面は砂嵐のような映像が映し出されている。
外見をよく見ると、望月先生の部屋の机の上に置いてあるノートPCと全く同じ。
「……ない筈の物が何故……?」
と言って目を疑う巧実は、ノートPC置かれているカウンター席に恐る恐る足を運ぶ。
そして、ノートPCの画面をよく見ると砂嵐の画像の正体が無数の数字とアルゴリズムで構成された画像が動き出している。
間違いなく、ノートPCが望月先生の部屋に置かれている物と同一。
電気がないのにノートPCが稼働しているは何故か、家にあるはずのない物が置かれているのが何故か。
疑問が浮かぶ中、ノートPCの画面に望月先生が映し出される。
その映像見た瞬間、言葉では言い表せない体全体に悪寒が駆け巡る。
なんと、普段から表情を変えることのない望月先生が不敵な笑みを浮かべている。
不敵な笑みが目に入った瞬間、恐怖の余りに両手でブロックしようとする。
そのとき、巧実の目に入ったのが機械の手。
最初は精巧に出来た動くオモチャかと思ったが、目を疑うほど自分の思い通りに動く。
恐る恐る出入口のガラス窓を見た瞬間、B級映画に出てきそうな配線や電子部品が剥き出しの機械人間が巧実の目に映る。
目を疑う変わり果てた姿を見た瞬間、思わず叫び声を上げてしまう……。
「うっ、うわぁぁぁっ!」
と叫んで巧実は突然ベッドから起き上がると、周囲を見渡し普段から見慣れた自室の光景が広がる。
隙間から光が差し込むカーテンを開けると、荒廃すらしていない朝日に照らされる住み慣れた街並みが見える。
その街並みを見た瞬間、夢である事に確信した巧実は額から流れ出る寝汗を指で拭き取り深呼吸をして息を整える。
「ゆっ、夢……っ? 変に、リアルのような……」
と呟く巧実は、悪夢だと一安心すると同時に不吉な予感が脳裏を駆け巡る。
気になってゲーム機を手にしてログインすると、仲間達が巨大戦艦の建造作業に取り組んでいる光景を目にして安堵する巧実。
「タク兄っ、どうしたの? まるで、誰かが亡くなったような目で見ているけど?」
と彩が不思議そうな目で声を掛けてきたので、
「ちょ、ちょっと、悪い夢にうなされただけだ……」
と言って心の内で夢だと確信した巧実。
そこへ、紬久美と未琴の二人が巧実のいるところへ駆け寄ってくる。
「巧実君、建造中の艦名は聞いていないけど? そう言えば、前の地下拠点の名称すら聞いてなかったわね」
と紬久美が相談を持ち掛けてきたので、呼吸を整えたばかりの巧実は地下拠点に名付けた名称を思い出す。
「メタトロン、「天の書記」の異名がある大天使の一柱」
と巧実の話を聞いて、未琴は提案を持ち掛けてくる。
「それなら、メタトロンの双子の弟であるサンダルフォンは?」
「サンダルフォンって、天界を守る巨大な天使だったことを聞いたことが……」
と自分の知っている記憶の範囲で豆知識を話す巧実を聞いて、
「決定っ、この艦を「サンダルフォン」と呼びましょうっ! この世界を守る番人の名に相応しい艦名と思わないっ!」
と言って勝手に艦名を決めてしまう紬久美。
仲間達が勝手に決める紬久美にツッコミをいれるが、巧実本人は建造中の巨大戦艦を見ながら満更でもない表情を見せる。
その表情を見た重信は、
「巧実のあの表情を見たら、これは決定ようじゃな。何せ、設計を手掛けている艦長の特権だから横槍を入れる隙はなさそうだ」
と言って納得した表情を見せ受け入れる。
そんな中、巧実が珍しく早起きに気がついた彩は話を戻すように巧実に問い掛ける。
「タク兄っ、珍しく早起きだけど……? 普段、寝坊助のはずなのに?」
すると、就寝中に見た悪夢を正直に話す巧実。
普段、秘密主義で自分から話すことのない巧実が自ら正直に話すなんて知る者にとって驚き以外に言葉では言い表せないくらいの驚愕。
しかも、その内容を聞いて不思議な活力がみなぎる仲間達。
「暴走OSが支配する世界っ? 冗談じゃないっ! あーし達をバカにしないでっ!」
と言って怒る早希を皮切りに、紬久美や仲間の誰もが怒りに満ち溢れ巨大戦艦の建造のペースが速まる。
そんな中、祖父の重信は意外と冷静で巧実を送り出す。
「それより、今日は智晴の家に行く予定じゃなかったか? お前の見た悪夢が、夢物語に終わらせるためにも」
「そっ、そうだったっ! ジッチャン、行ってくるよっ!」
と言い残しログアウトした巧実は、着替えを済ませて香苗に紬久美の父である智晴の家に出掛けることを言い伝え出発する。
すっかり日は昇り、電動自転車に乗って自宅の後にする巧実。
向かう先はゲーム会社の社長である智晴の家、目的は会社が運用しているゲーム用サーバーのネット隔離。
神妙な面持ちで出発する巧実だが、意外なトラップが仕掛けられていることを今は知る由もなかった……。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は来週の土曜日になります。




