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1-3 面倒な人々

前回の続きになります。

主な主要人物との関係性が伝われば幸いです。

 翌日の放課後、廊下を歩く巧実の向こうから一人の女子生徒が歩いてくる。

 女子生徒の顔を見た瞬間、気まずくなった巧実は知らぬ顔で素通りを試みる。

(ヤバっ、生徒会長だっ! 知らぬが仏、知らぬが仏っ!)

 と心の中で何度も言い聞かせ、ポーカーフェイスで素通りする巧実。

 しかし、女子生徒が素通りしようとする巧実を見逃すことは無かった。

「本多君、目障りだからサッサと消えなさいっ!」

 と言って、嫌悪感MAXで巧実を目の敵のように睨み付ける生徒会長の女子生徒。

 当然、差別的な発言をする女子生徒にカチンと頭にきた巧実は反論する。

「いくら生徒会長でも、その言い方は人権を無視しているとしか思えませんね。こっちが平穏に納めようと黙っているのに、気に障ることを言うのは生徒会長失格ですよ」

 すると、女子生徒は反論する巧実に毅然とした態度で言い返す。

「あなたのようなヲタク、私の目には人種ではないと思ってますので。それに、私の公約の一つに電脳部の廃部とゲーム同好会の解散を掲げてますから」

 巧実を敵対視する女子生徒は結城ユウキ紬久美ツグミ、大手ゲーム会社の社長令嬢で現在は生徒会長を勤める高等部三年生。

 雑誌の読者モデルをしているだけに、巧実と同じくらいの長身でスタイルが良くお嬢様のオーラを醸し出している。

 髪も少し茶色が混ざった黒髪で腰の辺りまで長いストレートに、よく聞こえるようにハーフアップで耳を出している。

 均整取れた顔立ちは純粋な日本人にも拘わらず西洋人と疑われてしまいそうで、周囲からも美少女と評判でカリスマ性も高い。

 学年の成績もトップクラスで、才色兼備とは彼女のことを示しているようだ。

 巧実は毅然とした態度の紬久美に対して、

「もしかして、十年前の対戦ゲームで俺に負けたことを今でも根に持ってっ?」

 と問い掛け相手の神経を逆撫でするような挑発を仕掛けてきた。

 気に障ったのか、紬久美は鋭い目で挑発する巧実を見下すように睨み付ける。

 巧実も引き下がること無く、上級生で生徒会長の紬久美に対して睨み返す。

 そんな一瞬触発の巧実と紬久美の睨み合いの中、

『生徒会長、生徒会長、まもなく生徒会が開かれますので生徒会室に来て下さい』

 とピリピリした雰囲気に割り込むように校内放送が流れる。

 校内放送が聞こえた瞬間、獲物を逃した猛獣のような悔しい顔をする紬久美は、

「今日は、運が良かったわね」

 と言い残し何事も無かったように立ち去る。

 まるで、目の前にいる巧実を無視するように。

 紬久美が立ち去ったが、その場を後にする巧実は機嫌を悪くして教室に戻った。

 教室に戻った巧実は、イライラしているのか無言で帰り支度を始める。

 そこへ、長身の男子生徒が親友みたく馴れ馴れしく近寄って話し掛けてくる。

「本多っ、頼むから加入してくれっ! ゲーム同好会にっ!」

 すると、不機嫌の巧実は近寄ってくる男子生徒に怒りを殺して淡々と辞退する。

「何度も言ったけど、お前達とは絶対に関わりを持ちたくない。それに、今の俺は一番嫌な生徒会長に遭遇した後だから余計に機嫌が悪い」

 それでも、諦めきれない男子生徒は説得するように勧誘してくる。

「今、eスポーツは注目の的だ。本多のような強者が加入すれば、全国大会レベルの強豪校と呼ばれるようになり学校側も部に昇格することを認めてくれるはず」

「悪いが諦めろ、今の生徒会長の方針がお前の理想とは真逆だから絶対無理。それに、同好会の雑魚レベルでは話にならん」

 と淡々と言って断る巧実は、必死に勧誘する吉良と呼ぶ男子生徒の顔や容姿を見て残念と疑問に思うことがある。

(吉良のヤツ、黙っていれば女にもてそうなイイ男なのに勿体ねぇーっ。でも、ゲームのプレイセンスないのにゲーム同好会のリーダーを……? 分からん、全然わからん)

 必死に勧誘する男子生徒の名は吉良キラ宗明ムネアキ、巧実と同じ中間一貫校に通う高等部二年生。

 巧実と同じクラスで、外見では女の子に人気が出そうな容姿をしている。

 クラスの中では一番の長身、メンズ系のファッション雑誌に出てきそうな細身のモデル体型、顔立ちもイケメン要素が満載と三拍子揃っている。

 しかし、学年の成績は中の下で下手すれば赤点ギリギリ。

 その上、ゲームのプレイセンスはゼロに等しく残念なほど上達する見込みがないのに何故かゲーム同好会のリーダーを務めている。

 断られているというのに宗明は、帰り支度をする巧実に必要以上に勧誘してくる。

 巧実は冷ややかな目で帰り支度を終えると、

「悪い、出直してくれ。再度、誘うのであったら対戦で俺に勝ってからだ」

 と言い残し宗明の勧誘を無視するように教室を後にする。

 巧実の残した条件に、絶望する宗明は黙って見送るしか出来なかった。

 帰宅途中の巧実が廊下を歩くとき、偶然にも学校の校庭で彩が女子陸上部の部員達と共に練習に励む姿を目撃する。

 練習着姿の彩は、周囲の目を気にすること無く走り込みの練習に没頭する。

 練習する彩の姿を見て、不思議な神々しさを感じ思わず立ち止まり静観する巧実。

静観する巧実の耳に、他の男子生徒達の世間話が入ってくる。

「榊原のヤツ、最近になって可愛くなったよなー。すっかり、女っぽくなったし」

「でも、残念なのがメンズ系。もっと、女の子っぽい格好すればもっとカワイイのに」

 巧実は、男子生徒達の会話を聞いて同感しながら彩の練習風景を静観する。

 そこへ、巧実の後ろから女子生徒の声が聞こえてくる。

「おやっ、そこにいるのは巧実っち。さては、陸上部女の子達の練習風景を熱心に見ているのは欲求不満が溜まっているのかなーっ」

「チョット待て、俺は知り合いの練習風景を見守っているだけだ。多賀谷タガヤっ!」

 と言って巧実は声が聞こえた方へと振り向くと、栗毛色のサイドポニーの髪型をした猫口でニコニコしている明るい白ギャルの女子生徒が押し迫ってくる。

「それより、体操部の練習はっ? 足を怪我しているとは故、練習中の仲間にアドバイスとか出来るだろう?」

 と巧実は困った表情で小言のように問い掛けると、女子生徒は気にする素振りを見せること無く生意気な口調で言い返す。

「だあって、練習する仲間の見学だけって正直つまんなーいっ! それに、この世に生を貰ったのなら楽しまなきゃ損よ。損っ」

 生意気に話し掛ける白ギャルの女子の名は多賀谷タガヤ早希サキ、巧実と同じクラスで体操部に所属している。

 女子の体操部の中ではエース級の実力だが、不運なことに去年の夏合宿中に右膝に重度の怪我で病院へ直行しリハビリを余儀なくされた。

 現在は生活に支障が無い程度まで回復したが、過度な練習の後遺症が右膝に残っており復帰は不可能と医者から宣告を受け現在は部活をサボって友達と遊び回っている。

(昔は部活命って女の子だったのに、何故か人が変わったように……)

 と思う巧実は、猫口の笑顔を見せる早希の顔を見ている。

 そんな中、早希は何かを企んでいるような笑顔で巧実に頼み事をしてきた。

「ところで、今度のゴールデンウイークの休みお願いがあるの。どっおせ、暇でしょう?」

「オイオイっ、勝手に暇人扱いすなよ。こっちは、遊び回ってはいないっ!」

「また、助っ人のバイトでしょう。だから、助っ人屋の巧実っちにお願いしているの」

「以前、引き受けた相手はネカマじゃねーかっ! 残念だが断る、多賀谷っ!」

 早希の依頼に対して、身の危険を感じて必要以上に断り続ける巧実は不機嫌な顔をする。

(※ネカマ:ゲーム上、女性キャラをプレイする男性プレーヤーを示す。因みに、その反対で女性プレーヤーが男性キャラを扱うことをネナベという)

 それでも、早希は門前払いをする巧実に対して猫なで声で必要以上に頼み込む。

「巧実っち、可愛くてか弱い初心者の女の子達のボディーガードお願い。大丈夫っ、今度は間違いなく正真正銘モノホンのカワイイ女の子よっ。中身はっ」

「だったら、他を当たってくれ。腕のいい女子がいると思うのだが」

 と言い残し立ち去ろうとする巧実に、何を考えたのか早希は大声で叫び噂を広める。

「みなさーん、陸上部の女子達を欲求不満で見ている変態さんがー。ムゴ……っ!」

 気まずくなった巧実は、条件反射で早稀の口を手で必死に塞いで強引に黙らせる。

 口を塞がれた早希は、巧実の拘束から振り解こうとジタバタして暴れる。

 当然、強引に巧実と早希の行動に気づいた周囲の生徒達が野次馬のように集まろうとしてきた。

 余計に気まずいと感じた巧実は、仕方ないと思い早稀の依頼を引き受けることにした。

「分かった、引き受けたから変なホラは勘弁してくれっ! 但し、今回だけだぞっ!」

 その一言に反応した早希は目で本当か確認すると、巧実は何度も頷いて引き受けると態度で示す。

 その後、巧実が塞いだ手をゆっくり離すと早希は猫口の笑顔で手を振って言い伝える。

「では、詳しい内容と日時はスマホで連絡するからっ」

 巧実は、身の危険を察して脱兎の如く立ち去って行く。

 巧実が去った後、大声に反応した女子陸上部員が早希のいるところに集合する。

 早希は、集まって来た生徒達や女子陸上部員達に笑ってウソだと説明して場を沈静化させる。

 その様子を遠くから見届ける巧実は、沈静化して安堵した心境と面倒事に巻き込まれた嫌気の入り交じった複雑な気分である。

 まさか、早希の依頼が都市伝説みたいな怪事件の始まりとは知る由もなく……。

ご覧いただき有り難うございます。

次回は今週の土曜日を予定しています。

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