2-2 拠点がメチャクチャ!
前回の続きです。
拠点内で主人公と仲間達の考え方の食い違いの場面です。
巧実が案内した地下拠点の最深部は、モンスター達の習性を利用したトラップ部屋。
中央のガラスで囲まれた狭い空間に落ち来たのは、大小様々の異なる種類のモンスターがすし詰め状態でひしめき合っている。
ひしめき合うモンスターの群れに、言わなくても知っているモンスターが存在している。
「取り敢えず、この中にいるモンスターを倒せば経験値を稼ぐことが出来るはず。一応、落下である程度ダメージを与えているから一撃で倒せるよう設計している」
と言って説明する巧実に、これまで培った経験スキルと情報力に加え類い希なる想像力が彼の強さの秘密と知る女子三人組と宗明。
巧実のことを「チートレベルの強さ」と呼ばれることがあるが、決して姑息な手段で強くなったわけではないと改めて思い知らされている。
そんな中、彩が心配そうな表情で気になったことを巧実に質問する。
「タク兄っ、このトラップ部屋の使用方法はっ? ボクっ、難しいこと出来ないけど」
彩の質問を聞いた巧実は、気にする素振りを見せず使用方法を説明する。
「簡単っ、ガラスの小部屋の周辺を囲んで攻撃するだけ。注意事項は、主装備ではなく木箱に収めている短剣や石斧を使うことくらいだな」
注意事項を聞いた四人は、各々の主装備を使っていけないのか疑問に思ったが先程の巧実の説明を思い出し納得する仲間達。
巧実はゲーム世界の仲間達に、
「一応、灯りや様々手段を使って徹底的に湧き潰しを施しているからMOBモンスターが拠点内に出現することは全くない筈だ」
と言って拠点内の説明に付け加え安心させる。
それでも、少し不安が残る仲間達四人。
そんな中、巧実はゲーム世界の仲間達に宿題を与えてログアウトする。
「まずは、強化するために各自トラップのMOBモンスターを倒しまくりレベルアップすること。以上っ!」
ログアウトと同時に、アバターの巧実が霧のように消えて行くのを見届ける仲間達四人。
ログアウト後、現実世界の巧実は手持ちの携帯ゲーム機の充電量が残り少ないことに気づき充電器に繋げ充電をする。
その間、夜景が見える窓のカーテンを閉め就寝する巧実であった。
まさか、地下拠点内のレイアウトが想定外の事態に遭遇することを知る由もなく……。
翌朝、目を覚ました巧実はカーテンを開け自室に朝日の光を取り込むと、
(おそらく、店の手伝いは午後になりそうだと思うからログインして様子を……)
と思い充電が完了した自分の携帯ゲーム機に手を伸ばす。
そのとき、割り込むように母である香苗の声が二階から、
「巧実―っ、早く起きなさいっ! ご飯よーっ!」
と聞こえてきたので、仕方なく二階のリビングに降りる巧実であった。
それから、朝食を早々と済ませて自室に戻ってきた巧実は携帯ゲーム機を手に取り早々とログインしてゲームを再開する。
ところが、自分が時間を掛けて構築した地下拠点内のレイアウトが女子三人組の手により勝手に改造された後だった。
自分の描いたコンセプトとは遠くかけ離れ、自分達が快適に過ごせるような部屋と考えたら不必要な施設を彼女達の手で建築している。
「俺がログアウトする前、言ったはずだよな……。なんで、脱線したの……?」
と言って呆然とする巧実に、女子三人組は不満そうな顔で訴える。
「だって、MOBばっかり倒すの詰まんないっ! それに、快適にしたいだけっ!」
と言って不満を爆発する早希に、彩も続けて内に秘めた不満を巧実に主張する。
「タク兄っ、ボクだって女の子だよっ! ボク、陸上部員だからトレーニングルームぐらい欲しいっ!」
さらに、早希と彩の主張を後押しするようにリーダの紬久美が主張する。
「巧実君、二人の気持ち少しは分かってあげて。私だって地下に籠もってばかりは精神的に辛いわ。やはり、息抜きのために娯楽施設は必要よっ!」
女子三人組の主張を無言で聞く巧実は、複雑な表情で受け入れるべきか自分の拠点だからコンセプトを貫き通し拒絶すればいいのか悩んでいる状態。
そんな中、拠点の照明が突然消えて停電するアクシデントが発生。
パニック状態の女子三人組だが、地下拠点の主である巧実だけは意外に冷静だった。
「そう言えば、あの下僕は何処にいるっ?」
と言って怒りに満ち溢れる巧実は、主装備の大薙刀を右手に出現させる。
当然、巧実の言う下僕とは宗明のことである。
殺気に満ちた巧実を見た瞬間、恐怖に震える女子三人組は地下最深部の中心に宗明がいることを思い出す。
「クズ明のヤツ、「自分だけのプライベート空間を作る」って言って最深部に」
と早希が証言すると、何かを察知した巧実は縄張り荒らしの外敵を察知した番犬のような怖い目で怒りを露わにして地下最深部の中心に急いで向かう。
女子三人組も巧実の行動に反応して同行する形で後を追う。
地下最深部の中央に辿り着くと、パニック状態の宗明が動揺を隠せない状況でオロオロしているのを発見する巧実と女子三人組。
「なっ、何っ……? 何が、どうなって……? 本多っ!」
と言って突然の停電に困惑する宗明が、鬼の形相の巧実に聞いてくる。
巧実は職人のような険しい目で部屋を見渡すと、宗明が剥がした床から光るラインの一本が寸断されているのを発見する。
「てめぇ、メイン動力に繋がるラインをスパッと切りやがって」
と低い声で言う巧実は、大薙刀を振り上げ怒りを露わにする。
自分の拠点を勝手に改装した巧実の怒りに満ちた上段の構えを見た瞬間、慌てふためく女子三人組が宗明の盾となり必死に制止する。
「ちょ、ちょっと、危ないから大剣を下ろしてっ! タク兄っ!」
「気持ちは分かるけど、ここでクズ明を殺ったらヤバいってっ! あーしからのお願い、危なくて大きな武器下ろしてっ!」
「巧実君っ、勝手に地下拠点のレイアウトをイジったの謝るからっ! お願いだから、武器を納めて冷静にっ!」
女子三人組の必死な説得、恐怖で腰を抜かし床に座り込みながらも命乞いをする宗明。
冷静になったのか、それとも怒りを通り越して呆れてしまったのか、何故か振り上げた大薙刀を下ろし職人のような真剣な眼差しで隣の大部屋に急いで向かう巧実。
隣の大部屋の鉄扉を開くと、ガラスで囲まれた超巨大な光の球体が中央に鎮座するSFの映画かアニメのような動力炉。
無傷の動力炉を見て一安心する巧実、安堵する様子に女子三人組と宗明は命拾いをしたと胸を撫で下ろす。
しかし、巧実の怒りは収まる様子はなく仁王立ちの状態で怨念が混じった口調で、
「悪いけど、この拠点の最深部は絶対にイジらないでくれ。もし、少しでも手を加えたら廃人にして人生終わらせるから。分かった」
と言って振り向き背中から威圧的なオーラを発して警告する。
異様な巧実の怒りを見た四人は、恐怖を感じたのか何も言わず何度も首を縦に振って警告に従うことを約束する。
四人の承諾を見て怒りを収める巧実だが、
「たしかに、仲間がいれば各々のプライベート空間や娯楽施設は必要だ。こればかりは、何も考えていなかった。俺っ、少し感情的になっていた」
と言って四人の言い分を理解する。
冷静になる巧実を見て安堵する女子三人組だが、停電の元凶を作った宗明は別である。
「魔改造しようとした部屋、今すぐ元通りにしろっ! 下僕っ!」
と言って再び怒りを露わにする巧実を見た瞬間、恐怖に震える宗明は自分の持ち合わせている知識と手持ちのアイテムをフル活用して早急に地下最深部を元通りにする。
その後、女子三人組と同じ階に戻ってきた四人。
ところが、宗明だけはベッド三つ分の牢屋に閉じ込められ泣き喚く。
「なっ、なんで、僕だけ牢屋のような部屋なんだよーっ!」
すると、巧実は怒りを込めて言い返す。
「下僕のお前にはこれで十分っ! 勝手に最深部をイジった罰だーっ!」
巧実の逆鱗に見て泣きながら許しを請う宗明と、その様子を見て下手すれば明日は我が身と思いながらもクスクスと笑う女子三人組。
当然、拠点の主でもある巧実は泣いて許しを請う宗明を許すはずもなく無言で睨み付けるだけであった。
ご覧いただき有り難うございます。
次回は今週の土曜日の予定です。




