表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

1-1 始まりは現実世界から

プロローグになります。

 本多ホンダ巧実タクミ、都内の下町にある中高一貫校に通う高等部二年生。

 学校の成績は可もなく不可もなく、特に目立つことのない普通な高校生。

 外見的に目立つと言えば、他の高校生と比べて少し高めの身長と長めの後ろ髪を丁髷ちょんまげのようにヘアゴムで結っていることぐらい。

 将来のことは深く考えることなく、今の自分が良ければ十分と考えている。

 そんな、ゴールデンウィーク初日の昼下がりに普通の高校生の巧実は自分の部屋でゲームのプレイ中に事件に遭遇してしまう。

「まっ、まさか、ウソのような都市伝説が本当だったとは……。しかも、SF映画のような現象を間近で見てしまうなんて……」

 と言って丸くして疑う巧実の目の前には、自分の手持ちのゲーム機とは別のゲーム機が何故か床に落ちている。

 さらに、手持ちのゲーム機には三人の女の子の声が聞こえてくる。

「だから、私達の言っていることは本当だって言っているでしょうっ!」

 と言って怒りを露わにする女の子の声に聞き覚えのある巧実は疑問に思い、

「たしか、ゲーム嫌いじゃ……? 会長、ゲーム機は持ってなかったはずじゃ?」

 と言い返して怒っている女の子に思わず問い返す。

 怒っている女の子のアバターを見ると、耳が特徴的に長く背丈の高い種族で手には弓を携え背中には矢筒を背負っている。

(おそらく、女性のエルフのアーチャーで間違いない筈だ……。でも、何で絶対に関わりたくない相手に……? しかも、ゴールデンウィークの初日に……)

 と思い溜息を吐いて頭をかかえる巧実に、怒りを爆発した女エルフのアバターが強要してくる。

「それより、どうやって現実離れしたゲームの世界から出る方が先でしょう? 知っているのでしょう、ここから脱出する方法をっ!」

 その一言を聞いた巧実は、思わず「えーっ」と言いそうなほど目を丸くして驚くことしか出来ない。

 そんな中、もう一人のアバターが仲裁するように割り込んでくる。

紬久美ツグミ、少しは頭を冷やしてっ! 怒りに任せたら、巧実っちの驚き振りからして何も知らなそうだし」

 その女の子のアバターは、褐色の肌をした普通の人型種族の盗賊シーフのような姿をしており腰にショートソードを帯刀している。

 すると、女エルフのアバターは女盗賊のアバターの説得で少し冷静になる。

「たしかに、何も知らない本多君に必要以上に問い質しても答えられないのは当然ね」

 と言って女エルフのアバターは怒りを収めると、一安心する巧実は胸を撫で下ろし言上を確認することに徹する。

 そんな中、女盗賊のアバターは隣で反省する女格闘家のアバターに目を向けて困った表情を見せ説教する。

「それにしても、あれだけ注意したのに「YES」のアイコン無意識に触って……。アヤちゃんが、あーし達の希望だったのに……」

 女格闘家のアバターの背丈は他のアバターと比べて低く細身で、どうやら小柄な人型種族であろうと推測する巧実。

 女格闘家のアバターは反省しながらも、

「だって、タク兄が中々信じて貰えなかったから指さしただけなのに……。 ボクだって、早希サキさんや会長を助けたくって……」

 と言って「自分は悪くない」ような自己主張をする。

 しかし、女格闘家のアバターの主張が言い訳のようにも聞こえてくる。

「彩って、スマホの機能を十分使えないくらいのメカ音痴が何故ゲーム機を……? しかも、高性能な最新タイプを何処で……?」

 と言って疑問に思った巧実は、画面に映る女格闘家のアバターに問い質す。

 どうやら、名前を呼ぶ辺り女格闘家のアバターとは面識のある巧実。

「深く聞かないで、ボクだって一応女の子だから……」

 と言って誤魔化そうとする女格闘家のアバターだが、巧実は状況を確認するためには聞き出す必要があると判断して自分のアバターを画面内に出す。

 巧実のアバターは和と西洋が混ざり合った丈夫な鎧を装備した普通の人型の種族で、背中には盾になりそうな程の大型の剣のような大薙刀を背負い装備が充実している。

「さっすがー、巧実っちのアバターって装備充実してるーっ! やっぱ、助っ人の依頼をしといて大正解っ!」

 と言って自慢気な女盗賊のアバターを見た瞬間、何か確信を得た巧実は驚いて思わず口に出して再度問い質す。

「たしか、「可愛くてか弱い初心者の女の子達のボディーガードお願い」って多賀谷タガヤから必要以上に頼まれたけど……。初心者って、お前達だったんかいっ!」

 すると、三人の女性アバターは揃って図星のように苦笑いをして頷き巧実の質問に間違いないと主張する。

 三人のアバターの返答を見た巧実は、面倒事に巻き込まれたと今にも言いたそうな困り顔を見せる。

 巧実の困り顔を見た女盗賊のアバターは、

「何、その浮かない顔はっ! せっかく、あーし達のようなカワイイ女の子達と一緒だというのにっ! 役得よ、役得っ!」

 と文句を言って必要以上に迫ってくる。

 だが、余計に困り顔の巧実は思わず後退りして三人の女性アバターとの距離を取る。

 そんな中、困り顔な巧実の机の上に置かれたスマホからメールの着信音が聞こえる。

 気になった巧実は、机の上に置かれたスマホを手に取って画面を見る。

 スマホの画面には、送信者不明のチャットが着信している。

 気になる巧実は、届いたチャットを開き三人の女性アバターと共に閲覧する。

 届いたチャットは、三人の女性アバターと同じ謎のチャットの内容だった。


 自分を変えたい者よ、世の中に不満をいだく者よ、このチャットは悩める者達を救済する新世界の玄関である。

 興味があればチャットの最後に現れる「YES」のアイコンをクリックせよ。

 不安や悩みのない世界を保障する。

 我が名は救世主メシア、新世界の創造主でもあり神同然の者である。

 皆よ、我の元に集え。

我は悩める者達を導くことを約束する。


 チャットの最後に「YES」と「NO」のアイコンが巧実の目に入る。

 チャットを見た瞬間、心の中に潜む現実から逃げ出したい欲望が支配されたように「YES」のアイコンに指を触れようとする。

(もしかしたら、嫌な日常から解放されるかも……)

 と心の中で自分の声が聞こえたに違いない巧実。

 ところが、巧実の行動を止めたのは女エルフのアバターである。

「ダメ、絶対にクリックしちゃダメっ! 私達の姿になりたくないのっ!」

 と女エルフのアバターの叫び声が聞こえた瞬間、我に戻った巧実は開いていた送信者不明の謎めいたチャットを閉じる。

「こうなったら協力しなさい、本多君っ! 私達が現実世界に戻れる手助けをっ!」

 と言ってくる女エルフのアバターは、抑えきれない怒りの感情を爆発して巧実の操るアバターに迫ってくる。

 再び怒りに満ちた女エルフのアバターの迫力に押される巧実は、身の危険を感じた猫のように恐怖で思わず後退りをして逃れようとする。

 女盗賊のアバターは、怒りに我を忘れた女エルフのアバターを宥める。

「ちょっと、少しは冷静になってよ! あーし達の唯一の希望、怒りに任せて押し付けたら誰だって怖いって!」

 女盗賊のアバターの言葉で冷静になる女エルフのアバターは、

「……ゴメン、少し感情的になっていたわ……」

 と言って深呼吸して冷静になる。

 女エルフのアバターが冷静なったことを見計らった巧実は、

「改めて聞くけど、三人は何でゲームを始めたのか? そして、都市伝説みたいな怪事件に巻き込まれたのかを」

 と言って事故現場の状況を把握する刑事のように状況を聞き出す。

 すると、三人の女性アバターは巧実に状況を渋々話すことにした。

 なぜ、ゲームをすることない三人が始める切っ掛けとなったのか?

 そして、都市伝説みたいな件に巻き込まれたのか?

 事情を話す三人の女性アバターに、耳を傾ける巧実はこれまでの出来事を振り返った。


ご覧いただき有り難うございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ