4.魔法の応用力。
更新は7時、18時の二回予定で。
変更時は都度、ご報告します。
「どういう、こと……?」
「さぁ、それは自分で考えてみれば?」
「………………」
私の全力の魔法に対して、ニケは平然と受けて立ってみせた。
回避したわけじゃない。それだったら、この直線上のように地面が抉れていないとおかしい。彼女が立っている場所は先ほどとまるで変化がなくて、抉った傷が二手に分かれていた。
頭を悩ませている私を見て、赤髪の少女はどこか楽しげに笑っている。
いったい、どういうことなのだろうか。
きっと、なにか絡繰りがあるはず。
「さて、そろそろ答えを聞こうか」
「え……?」
唇を噛んでいると、ニケが声を弾ませて言った。
答えを聞く、とはいったい――。
「いまからアタシの全力を撃ち込む。たぶん、答えが分からないと……死ぬよ?」
「な……!?」
直後、また彼女の周囲の魔力が動き始めた。
先ほどの比ではない。ニケは、本気だ。
私も防御魔法を習得してるけど、アレを防ぐのは不可能だと思う。
だってニケには、ロッドがあるのだから。元々の潜在魔力量もさることながら、あのような強力な魔道具があれば、才能の差異なんて容易く埋めることができるはず。
つまり、いまから放たれるのは――。
「(私の魔法か、それ以上の……!)」
だったら、どうするのか。
決まっていた。ニケの言うところの『答え』を見つけるしかない。
そうでなければ、私の夢はここで終わってしまうのだ。考えろ、考えろ考えろ……。
「…………ん、もしかして――」
そこで、ふと思いついたことがある。
二手に分かれた地面の傷。もしかしたら、それがヒントかもしれない。
「さあ、久々の本気! しっかりと堪能してよね!?」
「やってみるしか、ない……!!」
ニケは練り上げた魔力弾を真っすぐに、容赦なく撃ち出した。
超高速のそれを目の当たりにしつつ、私は一か八か防御魔法を展開し――。
「面ではなく、鋭角に……!!」
受け止め切るのは不可能。
だったら、その一撃をいなすしかない。
私はぶっつけ本番で、防御魔法の壁を鋭角に形状変更する。そして――。
「ああ、あああああ、あああああああああああああああああ!?」
腕が痺れる。膝が笑う。
それでも必死に、私は攻撃を受け流し続けて。
「は……は、はぁ!? ふ、防ぎ切った!!」
あまりに長く感じた時間。
私は、ニケの放った魔法を防ぎ切ったのだった。
「へぇ……やるじゃん。お見事、正解だよ」
ボロボロになった私を見て、赤髪の少女は嬉しそうに拍手をしている。
先ほどまで殺す気で魔法を放っていたとは、とても思えない。そんな彼女はぐったりしている私を見て、顎に手を当てつつこのように語った。
「潜在魔力量は世界屈指。だけど、それを制御できるかは修行の質次第。……きっとアンタの師匠さんは、恐ろしく優秀な人なんだろうね」
その上で、ニケはこちらに歩み寄って言う。
「だけどアタシから言わせれば、まだまだ未完成だね。魔法の制御を教えられる奴を数人知ってるけど、応用を教えられる、ってなったら世界中に一人しか知らない」
「世界に、一人だけ……?」
「あぁ、そうさ」
彼女は膝をつく私に、笑顔で手を差し出した。
そして、自信満々にこう宣言するのだ。
「アンタには最高の才能がある。その才能をアタシが、唯一無二にしてやるよ!」
それは、あまりに眩しくて。
あまりにも屈託がなくて、だからこそ――。
「……うん、そうだね」
驚くほど素直に、受け入れることができた。
◆
「らからぁ!? あんらのさいのーは、みがけばひかりゅのぉ!!」
「そ、そうなんだ……」
――前言撤回したい。
互いを認め合った後に酒場へ向かい、あろうことかニケはべろべろに泥酔してしまった。先ほどから何を言っているのか、おおよそでしか聞き取れない。
ただ、それよりも気になるのは未成年の飲酒は大丈夫なのか、ということ。
「まーた、飲んでるのか。こいつ」
「ダスクさん? いいんですか、放っておいて」
「あぁ、問題ねぇよ」
「え、でも未成年――」
そう悩んでいると、仕事終わりのダスクさんがやってきた。
そして呆れつつ、狼狽える私にこう言うのだ。
「こいつ、ハーフエルフだからな。見た目以上に歳食ってんだ」――と。
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