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プロローグ 病弱な少女は、幸せな異世界転生を。

新作です(*'▽')応援よろしくお願いいたします。







 みなさん、初めまして。

 私の名前はアリス・オリビエラ。王都から少し離れた山の中にある村――コノエに住んでいる、今年で十二歳になる村娘です。日課はお父さんとお母さんが生業としている農業、そのお手伝い。自給自足の生活は大変なこともあるけれど、みんな親切なので楽しいです。


 お父さんは黒髪に黒い瞳で、一見して頼りないです。でも脱いだら凄い身体をしていて、村のみんなからいつも期待されています。お母さんは柔らかな笑顔そのままの、優しい性格をした金髪に青い瞳の美人さん。村の女の子の憧れの的。


 美男美女、ということを除けば普通の夫婦。

 ただ私の両親には、他の人と少し違うことがあって――。



「いやー……何度も言ってますが、俺たちは宮仕えするつもりないんですよ」

「わたしたち、悠々自適なのんびりスローライフに憧れてたものね」

「そのように言われましても、国王陛下の命令でして――」



 王城からの使者という、白金の鎧を身に着けた兵士さんが困ったように言う。



「救国の英雄と、聖女の二人を呼び戻せと……」



 そう、二人は先の魔族との大戦時に世界を救った英雄と聖女。

 私はそんな両親の間に産まれたのでした。







 そして、私にはもう一つ秘密のようなものがある。

 それというのも、私自身がいわゆる異世界転生をしてきた、ということ。

 以前の私は有栖レナ、という名前だった。物心ついた頃から病院がお家のような感じで、外に出ても車椅子で中庭に連れて行ってもらうだけ。結局、最期まで自分の足で歩くことさえなかった。



『いいなぁ~……私も、こんな風に冒険してみたい!』



 そんな退屈な毎日の中で、唯一の楽しみだったのはお兄ちゃんの買ってきてくれたライトノベルを読むこと。『アウェイク・ワールド』というタイトルで、内容はよくある英雄たちと魔王軍の戦争を描いていた。もしかしたら、世間的にはありきたり、だったかもしれない。

 だけど私にとって、それはどんな物語よりも愛おしかった。


 そしていま、私はその物語の世界で生きている。

 自分の足で歩いて、息をしている。



「さあ、夕ご飯ができたわよ~」

「今日の献立はなんだい?」

「アリスが大好きな、ミルクたっぷり特製シチューよ!」

「わぁ、ありがとう! お母さん大好き!」



 夜になると、こうやって家族で食事を摂る。

 そんな当たり前が、とにかく嬉しかった。



「むー……」

「あれ、お父さんどうしたの?」

「いーや? 決して、お母さんが羨ましいわけじゃないぞ?」

「あはは! 大丈夫だよ、お父さんも大好き!」



 少しばかり膨れっ面になったお父さんに、私は笑いを堪え切れずに言う。

 すると、お父さんは途端に蕩けたような表情になって……。



「うおおお! ったく、アリスは本当に可愛いなぁ!?」

「それはそうですよ。わたしと貴方の娘ですもの」

「くすぐったいよー!」



 まるで猫を撫で回すように、私の頭をくしゃくしゃにするのだった。

 お母さんも、そんなこちらを嬉しそうに見つめている。


 本当に、幸せだった。

 ただ少しだけ、ワガママがあるとすれば――。




「(二人みたいに、冒険をしてみたいな……)」




 平穏な暮らしに、ちょっとだけ刺激が欲しかった。







 ――そんな私に転機が訪れたのは、数ヶ月後のこと。

 私とお母さんはちょっとした用事があって、村の外にある泉へと向かった。その帰り道に、思いもよろない事態に巻き込まれたのだ。



「ど、どうしてこんな場所にデイモンが!?」



 お母さんは、悪魔のような魔物を見てそう叫ぶ。

 真っ黒な身体をしたそいつは、こちらを見て舌なめずり。一歩ずつ確実に距離を詰めて、大きな鉤爪で私たちを切り裂こうとしていた。

 お母さんは必死に抵抗しようとするけど、専門分野は治癒術。

 だから、デイモンに対して効果的な攻撃手段を持っていなかった。



「アリス、貴女は逃げなさい!」

「そ、そんな……!」



 そのような状況を考えて、お母さんは私だけでも逃がそうとする。

 だけど、このままではお母さんは死んでしまう。


 それは嫌だった。

 せっかくの幸せな毎日が終わるなんて、考えたくもない。

 絶対に守りたい。守ってみせる。私だって――。



「……アリス?」



 そう、考えた瞬間だった。

 私の胸の奥から、熱い何かが溢れ出したのは。

 知らないはずなのに知っている。全身を伝っていくような力の流れに身を任せて、私はデイモンに向かって手のひらを向けた。そして――。




【ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?】




 眩い光が視界を覆う。

 凄い反動に腕が痺れたけど、どうにか堪える。

 そうやって、次第に目の前の景色が見えるようになって気付くのだ。



「あ、れ……?」




 そこにあったのは、魔物を倒すと出現する魔素の結晶。

 デイモンの姿は消え去って、ただそれだけが残っていたのだった。



 


今日は20時に第1話、22時に第2話を投稿します。



面白かった

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更新がんばれ!




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