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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

傷ついた君と傷つけた自分

作者: 猫山 鈴

物騒なワード…自◯とか出てくるので苦手な方はご注意を全体的に暗いかもです。

 ヒュオォ…

 「此処から飛び降りたのか…"柚葉"」


 "都立桜ヶ丘高校"…通称サク高には昔事件があった。

 

 昔…大体20年前くらいにこの高校の屋上から二人の生徒が連続で飛び降りたらしい。

 

 一人目は"三山 樹"という男子生徒。当時高校2年生。そして二人目は…"夏目 柚葉"という女子生徒。一人目の自殺者と同じクラスである。

 そしてこの事件は学校や文部省の方で闇に葬られた。


 それなのに…何故俺がそれを知ってるか?それは約20年前に遡る。



 ◇



 20年前当時…まだ自殺したこの二人の生徒が生きてた頃の話。

 

 一人目の自殺者である三山は何処にでもいる普通の男子高校生である。本人自体は目立って秀でてるとこはなくて目立たない存在だ。だけどそんな彼には一つだけ大きな注目ポイントがあった。


 それが二人目の自殺者である柚葉である。柚葉は三山と幼馴染の関係だった。

 そんな柚葉は成績優秀であり文武両道の優等生。性格も明るくて頼りがいがあり、たくさんの生徒から人気があった。


 そして何と言っても彼女は美しかった。

 艶々に靡くストレートの黒いロングヘアに涼しげな紫の瞳は大きく、理知的に輝いていた。

 肌も雪の様に白くて顔も小さい。体つきもモデルかと疑われるぐらいに良くてまさに黄金比。

 皆んなが彼女に釘付けであった。


 しかしそんな彼女は幼馴染である三山には厳しかった。

 『アンタ何でこんなこともできないの!?』

 『いい?アンタには私が付いてないと!そうしないとアンタは何もできないんだから!』

 『あのさ?少しは明るく振る舞おうとか、オシャレしようとか思わないの?今のアンタすっごいダサい!横歩くの恥ずかしい』


 と中学に入学した辺りから、沢山毎日の様に言われていた。それだけでなくクラスメイトからも…

 『お前ばかり夏目さんを独り占めすんな!』

 『夏目さん可哀想でしょ?解放してあげてよ!』

 『ていうか身の程弁えろ』


 と沢山の誹謗中傷を受けた。


 彼はそんな悪意や柚葉の毎日の暴言や注意にとうとう我慢できず…自ら命を絶ったのである。

 

 

 ◇



 と此処までが三山が死んだ流れだ。え?なんで知ってるかって?う〜ん。教えても良いけど信じられるかな?


 俺はその三山 樹の生まれ変わりだからだ。


 まぁ信じられないと思うけど…でも俺には昔から前世の記憶があった。

 そしてこの死ぬまでの流れも全て記憶されている。


 だから三山が死んだ理由は当人である俺が1番知ってるわけ。

 ちなみに今の俺の名前は"東 利人"って名前。しかも以前通ってたサク高に通ってる。


 「何で…俺此処受験しちゃったんだろ…」

 と屋上のフェンスから空を眺めてつぶやいた。


 正直何故柚葉まで飛び降りたのか分からない。新聞に載ってた自殺事件の記事を読んだり…ネットで実名を出して面白おかしく掲示板に書き込む奴がいたみたいでそれで柚葉の死を知る事ができた。

 唯噂だと柚葉が最初の自殺者を虐めてたことで罪悪感で死んだとされている。

 でも…


 「俺はあいつに…一言でもやめてと言ったのか?」

 俺はいつも柚葉の言う事に従ってきた。本当は嫌なのに…。

 俺はいつしか口五月蝿い柚葉を疎ましくそして憎たらしく思う様になった。


 けれど本来の柚葉は他の生徒には優しいし気立がいい。もしかしたらと話せば分かってくれたのかもしれない。

 だから思うのだ。柚葉に何も言わないで被害者ぶった俺が


 柚葉を死に追いやったんだって…。



 ◇



 「…ふう…そろそろ帰るか…いや…そろそろ…」

 俺は時計を確認する。そうだ。俺が何で此処にいるのかって言うと、別に物思いにふけたかったわけではない。


 屋上と三階を繋ぐ階段からどたどたと走る音がする。俺はため息を吐いた。

 階段のドアが開いてそこから一人の女子生徒が不機嫌そうに登場した。


 彼女の名は"西山 桃"。可愛らしい小柄な少女だ。髪の毛は赤毛であり長いツインテールにしている。その瞳はキツく吊り上がっているが猫のような愛らしさがある。

 

 西山は俺に指を刺して、

 「ちょっと利人!教室の前で待ってなさいよ!」

 と怒鳴り声をあげる。何を隠そう。彼女は今世の俺の幼馴染なのである。

 そしてその性格は柚葉と似ているのだ。


 俺はため息を吐き

 「あのさ?待ってただけ有難いだろうが!俺言っただろ?そこらへんで暇つぶししてから行くって!」

 「ハァ?!何よその言い方!大体アンタはいつもいつも!」


 と喧嘩が始まる。俺は柚葉の様な惨劇を繰り返さない様に相手には嫌な事は嫌と伝えるようにしてる。残念ながら西山はそんなの伝わらないタイプみたいだけど…。


 この前だって…

 『アンタ本当何やってもダメね…。一回死んだ方がいいんじゃない?』

 あまりにも酷い事を言う西山に


 『人に死ねとか簡単に言ってんじゃねーよ!』

 と怒鳴った。すると西山は驚き

 『な…何キレてんの?冗談じゃ…』

 『冗談?冗談でも言って良いことと悪いことぐらいわかんだろ!…ハァ…お前いつも俺に突っかかってくるけどさ…これ以上ひどかったら絶交だからな!』

 『う…嘘でしょ…?それだけは嫌!ごめんなさい!もう言わないから!』


 と謝ってきたが…しばらく経つとまた元通りである。…良い加減にしてほしいしどうしてそこまでして俺に構うのか分からない。

 「ちょっと聞いてんの!?アンタなんか本当!死ねば良いのに!」


 と西山がまたしても同じことを言ってきた。さすがの俺も堪忍袋の尾が切れた。

 もうこいつには絶交宣言するしかないと口をひらこうとすると


 「そう言うこというの…よくないよ?」

 キーっと静かに屋上のドアを開けて一人の女子生徒が屋上にやってきて割って入ってきた。


 「…白雪さん…」

 入ってきたのは"白雪 天音"さんだ。白雪さんは西山と同じくこの学校では指折りの美少女である。


 短いショートカットの銀髪にまん丸の青い瞳。外国の血が入ってるらしい。スタイルは華奢で、制服に水色のカーディガンを合わせている。

 顔は真剣な顔で口を真一文字にしている。


 「何?白雪さん。これは私達の問題よ?口挟まないでよ」

 「そう…でもあなた…今彼に死ねって言ったわよね?それってもういじめじゃないの?」

 「ハァ?!冗談で言ったのよ?そんなことぐらい私達の間では普通のことよ!」


 と白雪さんの注意に西山はふんずりがえっている。

 「そんな訳ないでしょ?あのね?貴女にとっては冗談でも相手にとっては深く傷つく言動になり得るの。

 貴女…それを分かった上で言ってるの?もしそんな事ばかり言って大切な人が目の前から消えたら…耐えられるの!?」


 と白雪さんがぼろぼろと涙を流して語る。その姿に俺はついぼーっと見惚れてしまったが西山はギョッとして

 「な…何よ…気持ち悪いわね…。利人?こんな子放ってさっさと帰ろう?」

 と西山が俺の腕を掴むが白雪さんが


 「…ねぇ西山さん?知ってるこの屋上の噂…」

 「え?」

 「この屋上ね?昔自殺が連続したんですって…。最初の子は酷い幼馴染の言動に傷ついて…限界が来て自殺したの。

 そして二人目。二人目はその酷い事ばかり言ってた幼馴染。


 その子はね?沢山沢山相手を傷つけた。だけどそれに気づかずに素直になれなくて沢山酷い事を言ったの。それが相手の命を奪うなんて知らないで…


 ねえ?この状況って…貴女達に似てない?」


 と白雪さんは無表情で凍りつく様な目で西山を見つめる。すると西山はヒッ…と声をあげて逃げていった。

 「あーあ…所詮その程度…自分だけ逃げるのか…」


 と呆れた顔をしている白雪さん。…何でこの子…柚葉のことを知ってるんだ?

 そう思いながらも俺は白雪さんにお礼をいった。

 「ありがとう白雪さん。助かったよ…」

 「いいのいいの!あんな事ばかり言われちゃいやだよね?

 幼馴染って長い時間一緒にいると…接し方とか分かんなくなるよね…特に男女なんか、仲を揶揄われたりさ」


 白雪さんは苦笑している。なんだろう…この子のこの感じ何処か…懐かしいような…。


 「そうだ!ねぇ東くん。私と友達にならない?」

 「え!?どうしたの急に…」

 そりゃあそれは是非ともお願いしたいけど…何故急に?

 俺が驚いてると白雪さんはにこにこと微笑み


 「…私の自己満足だよ…。…私が傷つけたあの子はもう二度と戻らないから…」

 と少し暗い表情になる。二度と戻らない?どういう事だ?


 白雪さんには謎が多い。



 ◇



 …夏目 柚葉。当時は優等生にして友達が沢山いた。

 しかしその実態は…自分の幼馴染を傷つける殺人犯と変わらないクソみたいな女だ。


 彼女は昔から自身の幼馴染である三山 樹が好きだった。将来は樹くんのお嫁さんになるーなんて軽々しく言ってたものだ。


 けれど小学校に上がるとそんな樹との仲は冷やかされる様になった。彼女はそんな空気感が嫌いで彼と距離を置く様になった。


 …けれどそれがいけなかった。そんなことをしているといざ彼に話しかけると思ってないことを言ってしまう。

 『アンタなんかと幼馴染なんて…人生最大の汚点だわ…』

 違うのだ。本当はこんな事言いたくなんてなかった。


 次第に樹本来の優しさだとか器の大きさだとかに惹かれる女子が現れ、柚葉は焦った。彼が取られると…散々冷たくあしらった癖にだ。


 柚葉はどうにか彼といようと暴言でも何でも吐きながら彼に纏わりつく様になった。柚葉は変に人気があったから、周りは柚葉に気に掛けられる彼を疎ましく思うようになり、彼の友人はいなくなった。


 彼の周りにはいつしか柚葉しかいなくなった。柚葉はその事実に歓喜していた。…彼がどんな思いをしていたのかなんて知らずに…。


 そしてとうとう彼女は言ってはいけない一言を発してしまった。

 『はぁ…アンタマジでトロイわよね?折角私が待っててあげたのに…』

 『ご…ごめ…』

 『うざいから謝罪とかいらないし…。ハァ何でアンタみたいなのが私の幼馴染な訳?本当死ねば良いのに…』


 と


 その翌日に好きだった彼は死んだ。そして柚葉は初めて知ったのだ。自分の行いが彼を傷つけたと…。周りの人間は今みで柚葉を正義。樹を悪と捉えていたのに、手のひらを返して柚葉をいじめる様になった。殺人犯とも言われた。


 その通りだと我ながら思った。そして彼女は罪悪感と周りの状況に限界を迎え…そして



 自ら命を絶った。


 もし生まれ変われるなら…もう二度と傷つけないから…今度は優しくするから…だから


 もう一度彼に…三山 樹に会いたいと願いながら彼女の体は地面の激突した。



 ◇



 そして目の前にいる彼…東 利人君は…そんな彼と雰囲気がとても似ていて…懐かしい感じがする。見ていると涙が溢れそうになる。


 もしかしたら彼の生まれ変わりなのか?

 そう思いながらも…きっと自分の正体を明かせば彼は二度と…今の夏目…白雪 天音に関わってなんてくれないだろう。


 何より西山 桃は昔の夏目ととてもよく似ていた。きっと彼女も恋心を歪ませてしまったのかもしれない。けれどだからといって傷つけて良い理由にはならないのだ。

 それは白雪がよく知っている。


 今回は偶々白雪が教師に屋上の鍵閉めを頼まれたから良かったが…この場所とあの二人の組み合わせは心臓に悪すぎる。


 「今度は…二度と傷つけないから…」

 「?」


 白雪 天音は誓った。もしも目の前の彼が三山 樹だとしたら…いやそうでなかったとしても東 利人を守ってやる。もう傷つけないと…。


 傷ついた君と傷つけた自分の関係は此処からスタートを切るのである。

ここまでお読みいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
前世の周りひでえな 2人も自◯したら流石に俺たちは悪くないとは言えないんだろうが でも隠蔽されちゃったならそう開き直れるかもね さて次と次に誰か飛び降りることはあるのかな? 幼馴染が奪われたり、あま…
幼馴染ざまぁの主人公はざまぁされる幼馴染を甘やかすことで、幼馴染の成長を妨げていると思います。主人公はそのことに気が付かず幼馴染を甘やかし続け、その結果、増長してパワハラやモラハラ、束縛したり、裏切っ…
[気になる点] 桃は、利人にきつく注意されたのに反省せず、暴言を言ってましたね。ああいう人を成長しない人というのでしょう。そういう成長しない人とは、絶縁して関わらないようにするのが一番です。本当に優し…
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