第1話―帰り道
どうにかなると思っていた
この子ならいい友達に―親友になれるなんて
自惚れてたんだ、きっと。
あの後、何事もなく教室へ戻り、そして今入学式を終えた。
そして面倒な説明を終え、授業と言えるような授業はほとんど行わないまま気づくと帰ることになっていた。
まぁ、初日だからしょうがないのだろう。
わかったことは、あのぶつかった子が、同じクラスだったことくらいだ。
8クラスある中で、愛香は3組だ。
残念なことに、同じ小学校出身の友達は3組には愛香を含め3人しかいない。
「(新しい友達、見つけないとなぁ....)」
愛香は、どちらかというと友達を作るのがあまり得意ではない。
人見知り、というわけではないが、愛香の性格上、友達ができにくいのだ。
小学校の頃の友達も、それを理解したうえでは極少ない友達しかいなかった。
そのほかは、適当に話していただけなように思う。
それに、愛香は友達が少ないというのも事実だが、それに伴い愛香を嫌う人物もかなりいた。
それも、愛香を嫌うのはクラスの中心にいる人物ばかり―
悪い噂を流しやすい、タチの悪い連中ばかりだった。
直球でなんでも言ってしまう愛香の性格が気に喰わないのだろう。
そして、多分最大の理由がノリだ。
愛香は、あまりノれなかった。
仲のいい友達なら何でも言い合えるのだが、中心の人、となるとどんな噂を流されるかと思い、逆に振る舞いがおかしくなってしまっていた。
天然で、無意識で毒舌、のれない、芸能人のこと、最新の曲をよく知らない、勉強は中の上なのに対し、運動は下―…
話題がなく、そして何かとつつかれる、ガリ勉―…
話題がないというのはさておき、そのほかは決してそんなつもりは愛香にはなかった。
他人には気をつかって接しているつもりだし、特に他の人よりも勉強時間が長いわけでもない。
「ハァ.....」
クラスには、小学校の頃の友達はいない。
仲のよかった友達は、皆バラバラになってしまっていた。
中学校入学早々気を重くしてしまった愛香は、一気にソレを吐き出すように長くため息をついた。
「愛香ちゃんっ!!」
「!?」
聞きなれない声だった。
でも、これは―
「えとっ...沙代ちゃん!?」
曖原 沙代―…一風変わった名前の彼女は、朝ぶつかってしまった子だ。
「愛香ちゃん、同じ学校の子、クラスに何人いたぁ??」
「えっ…3人いたけど……」
相変わらず、口下手な自分に嫌気がさした。
「そっかー。あたし、1人もいないんだよね…引っ越してきたから」
「そうなんだ?どこから?」
「隣の市から」
「へぇー…大変だねっ」
「うん...じゃあねー」
そう言うと沙代は、またどこかへ駆けていった。
そしてそこでも、また同じような会話を繰り返している。
「(いるんだよね...意味のない質問とかしてくる子・・・)」
それでも、引っ越してきた、というのは少し興味がわいた。
(…あの子なら、
私の噂も聞いていないはず―
私に、先入観を持たずに話してくれる…)
愛香の噂が広まっているかどうかは定かではなかったが、元気に誰とでも話している彼女なら、友達にできるだろう、そう思った。
見ると、今から彼女が帰ろうとしているその道は、愛香と同じ道だった。
「あっ、ねぇ、沙代ちゃん!!」
「え?何?」
「一緒に帰ろ!」
苦手な愛想笑いを浮かべ、愛香は言った。
「いいよ」
沙代も笑みを浮かべて、新品の自転車にまたがる。
愛香は距離の関係で歩きだったが、沙代が遅めに走ってくれたのでさほど疲れはしなかった。
「こ....これから、よろしく…」
改めて言うと、恥ずかしい、と思いながら、分かれ道のあたりで云う。
「うん、よろしく!」
沙代は恥ずかしがるような素振りは向けず、自転車から振り向いてこちらに手を振った。
愛香も小さく手を振る。
(明日も一緒に話せたらいいな)
淡い希望を持って、愛香は残り少ない帰り道を歩いていった。
無駄に愛香の性格解説が長くなりました
こんな性格の愛香ですが、よろしくお願いします!((何が




